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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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○橋頭堡 駆動歩兵隊 アンネロッタ

「……行ってしまわれましたわね」
 支配種の遠距離攻撃が届かない場所に最後の橋頭堡を築き、アンネロッタたちは竜操者を送り出した。

 ここを守るのは、駆動歩兵と一般の兵たち。
 全員が戦士である。非戦闘員はここにいない。

 非戦闘員はひとつ前の橋頭堡から、竜に乗せられて撤退している。
 今頃は、安全な町中へと戻っていることだろう。

 アンネロッタは副官とともに、竜操者たちが向かった先をみた。
 もちろん、今はもう、その影すらみえない。

「まる一日経っても戻らなければ、ここを放棄するよう言われていますが」
「そうですわね……ですが、わたくしたちだけでは、ここから戻れないでしょう。無用な配慮でしたわね」

「ええ、まったくです」
 アンネロッタの副官が苦笑して頷く。

 竜操者たちが支配種の元までたどり着き、戦闘を行って戻ってくる。
 往復を入れても半日あれば十分。

 一日経過してだれも戻ってこないのならば、それはすなわち全滅を意味する。

「問題は我々がここを死守できるかですね。物見が多数の月魔獣を発見したようです。こちらへくるかまだ分かりませんが、油断はできません」

「そうですわね、みなには搭乗したままで待機するよう、通達してください」
「かしこまりました」

 この橋頭堡は、戦闘を終えて戻ってくる竜操者たちを迎え入れなければならない。
 最低でも半日、ここを守り抜く必要がある。

「駆動歩兵の整備は万全です。半日程度でしたら、連続稼働できますよ」
 副官が自信ありげに言う。

「でしたら、これを最後に使い潰すつもりでがんばりましょう」
「はい。無茶もできるというものです」

 日頃はメンテナンスを考えて、抑えながら使用している。
 これが最後ならばリミッターを外してでも、動かさねばならない。

「敵、来ました。多数です!」
 物見の絶叫が聞こえた。

「数は? もっと正確に報告しろ!」
 だれかの声が響く。

「分かりません。数は多いです。数百はいます。三百か、四百ちかく……大型種も二十体ほどみえます」
 物見の報告に、だれしもが絶句する。

「それって駆動歩兵の数より多いんじゃないか?」
「…………」

 ここに集まっている駆動歩兵は三百体。
「半日とはいえ、持たせられるでしょうか」

「やるしかないですわ。全軍で出撃します。出し惜しみする余裕はありません。みなを正門の外へ向かわせてください。そこで迎撃します」

「隊長、本当に我々だけで?」
「ええ、そうです」

「……分かりました。なあに、ここに集まっているのはわが国の精鋭ばかり。奴らなど、蹴散らしてやりましょう」

 こうして竜操者たちが出発してすぐ、駆動歩兵隊が月魔獣の侵攻を真正面から受け止めることになった。



○竜国 竜の渓谷

 二百名の暗殺者たちが、竜の渓谷に迫る。
 彼らは走り出してから一度も立ち止まらない。会話を交わさない。

 目は前を見据えて、ただただ走るのみ。

 ――ザッ!

 だれかが放った矢が、見張りの喉に突き刺さる。
「だれだ!?」

 別の見張りが目を凝らしても、闇夜の中は見通せない。

 ――シャ!

 もう一度矢が放たれた。
 見張りは勘でそれを避けながら、警笛を吹いた。

 ビィイイイイイイ。

 鋭い音が闇夜に響き渡る。
 すぐに各所で応えがあった。

 何度となく警笛が鳴らされ、竜の渓谷全体が目覚めた。

 警笛を聞いて、宿舎から兵が駆け出してきた。
「侵入者を殲滅しろ!」

 迎撃に向かった暗殺者と、守護兵が激突した。
 剣戟の音がそこかしこで鳴り響き、剣と剣がぶつかる衝撃で火花が散った。

 暗殺者の一部は、先に渓谷へ入った。
 中は入り乱れて、夜になると慣れた者でも道を見失う。

 一般には知らされていないが、奥にいくほど、足下に岩が落ちている。
 つまり、走り抜けられないのだ。

 ――ザッ!

 渓谷の中では、どうしても目印が必要になる。
 岩陰から月明かりを頼りにするには、明るい所へ出なければならない。

 そこに神官兵が潜んでいた。
 神官兵は侵入者がやってきそうな場所で待ち構え、自前の槍で突く。

 それでも暗殺者たちは一流であった。
 倒れ伏す者には一瞥することもなく、神官兵へと殺到する。

 暗殺者たちは渓谷の中へ中へと進んでいく。
 あと少しで竜の聖門といったところで、最後の障害――竜国の正規兵が姿を現した。

 だが、そこで待っていたのは、それだけではなかった。

「ここに侵入するくらいだ。彼ら正規兵を突破する目処は立っているのだろう? だけどね、それはこちらも同じ。キミたちが万全の準備をしてやってきてもいいように、強化しておいたのさ」

 現れたのは、リトワーン・ユーングラス。
 竜国七大都市のひとつ、ウルスの町を守る領主である。

「私がここにいるのが不思議かな。理由は明白なのだけどね。何しろもう、魔国は存在しない。私が国境を守る必要はないのだよ。……といっても持てる兵力はそう多くない。でもキミらをどうにかするには十分かな」

 リトワーン卿の後ろには、対暗殺者専用の集団が多数控えていた。

「これでも私は有名人でね。よく命を狙われる。そんなときの頼もしい味方だ。キミらにとっては厄災でしかないと思うが、ぜひ堪能してみてくれたまえ」

 渓谷を進み、最後の最後で現れたのは、ウルスの町が誇るアンチ暗殺者集団であった。

「さあ、ここを抜けられると思うのならば、抜けてみるがいい」

 形成は竜国側に傾いた。

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