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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 話を聞いただけで分かる。王都で何かが起きている。
 大量の行方不明者が出たなんて……。

「父さん、一体何をやっているんだ」

 王都で大量の死者と行方不明者……それは絶対父さんの仕業だ。

 おそらくこんな感じだ。
 父さんはソールの町で何かに感づいた。

 王都が危ない。もしくは王族が危ない。そんなところだろう。
 危険な計画が人知れず進行していたのは確かだろう。

 慎重に計画されたそれは根深く、そして実行者と不可分だった。
 だから片っ端から処理した。

 すでに敵の計画で被害も出たかもしれない。
 どんな計画があったのか知らないけど、父さんだって超人じゃない。

 超人かも……まあ、それに近いものではあるけど、全能じゃない。
 被害は出たかもしれない。それ以上の被害を防ぐためにも計画の根本は潰したい。

 そんなとき、父さんの取るべき手段はひとつ。

 ――関係者全員の抹殺

 ここに荷を運んでくる竜操者が噂話として持ってくるくらいだ。
 すでに相当な数の人が処理されているんだろう。

 死者がさっき出た数の数倍いたっておかしくない。

 気になるのは、敵の計画によって、僕の知人が被害にあっていないかだ。
 父さんがやり過ぎたのはこのさい目を瞑ろう。そうせざるを得ない理由があったんだろうし。

「……すごく気になるのに、王都に行けない」

 こっちの計画ももう最終段階に入っている。
 リンダやヨシュアさん、ロザーナさんたち……無事かな。

 それと『ふっくらフェナード』のみんなや、ガイスンさんをはじめとした竜導教会の人々。竜の学院の後輩たち。

「父さんがいれば、敵の計画なんて、敵ごと始末しちゃうだろうけど、それまででどれだけの被害があったかだな」

 予定では、もう一度だけ補給がやってくるくる。
 そのときに詳しい話を聞いてみよう。



 僕は気持ちを王都に残しつつ、支配種が住むイヴリール目指して、進撃を続けた。

 十分休養を取ったことで、僕もシャラザードも元気いっぱいだ。
 計画も前倒しで進められたし、今のところ不安要因は少ない。

 不安がゼロではないのが痛いところだけど、計画に支障を来す部分ではない。
 大丈夫なはずだ。

 そんなことを考えていたら、副操竜長に呼ばれた。

 橋頭堡の作戦本部に出向くと、僕だけではなく、アンネラとソウラン操者もいた。
 属性竜を駆る三人が呼ばれたことで、何の話か見当が付いた。

「忙しいところ、すまんな」
 リドルフ副操竜長は、窓から外を眺めていた。

「いえ……それで、お話とは?」
 代表してソウラン操者が尋ねる。

「予定より若干、竜操者の戦線離脱が増えている」
「聞いています。月魔獣と戦い、戦線を維持できなくなったと聞きました。本人たちも分かっていることでしょう」

「であってもだ。なるべく少ない犠牲で……というのは、無い物ねだりであろうか」
「時と場合による……かと思います」
 つい僕も口を出した。

 そもそもこの後に及んで、犠牲が多い、少ないと言っていられないだろう。

「それもそうだな。……忘れてくれ」
 こちらを向いた副操竜長の顔には、深いシワが刻まれていた。どれだけ悩んでいたのか。

 この月戦隊の実質的な責任者であるリドルフ副操竜長には、精神的な負担が大きいのだろう。
 名目上の責任者のことは、このさい置いておく。

「……それで、何かありましたか?」
 ソウラン操者がそう尋ねたが、正直僕も気になった。

 どうにも普段あれだけ自信満々の副操竜長に、弱気な虫が顔を覗かせていた。

 今回の支配種討伐が成功したら、副操竜長は出世して操竜会のトップである操竜長へと昇格する。

 現操竜長はもうかなりのお歳で、このような激務の作戦には携われない。
 王都で会議をするのがせいぜいらしい。ちょうどよい世代交代の理由になるはずだ。

 栄達はもうすぐと思えるのだが、その顔に刻まれた皺はなんであろうか。

「実は斥候に出していた飛竜からもたらされた情報だが、敵はどうやら防備を固めたらしい」

「……はっ?」
「えっ?」
「はうわっ」

 月魔獣は生きている者を見かけたら本能的に襲う怪物。知性はないと言われている。
 防備を固めたというのは、どういう意味だろうか。

「私も信じられないが、事実だ。複数の者に確認させた」

「防備って一体……何の話ですか?」

「理解できないのも分かる。だが、聞いてほしい。支配種のいる旧首都イヴリール付近に、大量の月魔獣が終結しているらしい」

「まさか」
「事実だ。これまでも月魔獣は徒党を組んでやってくることもあったし、大型種に至っては、配下を引き連れる例も確認された」

「それで支配種も……というわけですか」
「そうだ。しかも、支配種の遠距離攻撃の射程内にいる。つまり、属性竜で集まった月魔獣を蹴散らしていけば……」

「撃たれますね。シャラザードは離れていても回避できませんでした。そして威力は、身体を貫通するほど」

「うむ。つまり、作戦は変えられない。当初の予定通り、属性竜はまっすぐ支配種を目指してもらう」

「ですかそうすると、集まった月魔獣が俺たちに殺到します」
「僕らだけだと、一気に囲まれて終わりですけど」

「分かっている。支配種と戦いながら、他の月魔獣の相手はできない。よって、それらは私どもが相手をする」

「…………」
 月魔獣がどのくらい集まっているか分からないが、できるのだろうか。
 僕らが考えている事が分かったのか、副操竜長は教え諭すように告げた。

「竜操者の生存は二の次になる。支配種と属性竜の戦いに近づけさせないよう、厳命させる」

 三つ目の橋頭堡を作って、全体の移動が終われば、最終決戦はすぐにはじまる。
 その時は、呑気に会議などしている暇は無い。

 最後の橋頭堡作りから決戦までは、ひとつの流れのようにスムーズにいかせる必要がある。

 つまり、ここでの決断が今後の作戦を決めると言って良い。

「君らの戦いは、多くの犠牲の上に成り立つものであると理解してほしい。チャンスは一度。失敗は許されない」

「はい」
「はい」
「はい」

 副操竜長はそれが言いたかったらしい。


 決戦の時は近い。

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