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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 ラティの町を拠点として、僕らは進撃を続けた。
 八日間かけて二番目の橋頭堡きょうとうほであるログラ砦まで辿りついた。

 この砦はもともと月魔獣の襲撃でも破壊されないよう設計されたため、修復すべき箇所が少ない。
 外壁を直したら、すぐにでも使用可能である。

 ここが完成したら、準備のほとんどが終わったと考えていい。
 最後の橋頭堡は、魔国の旧王都近くになるのだ。

 戦うときはそこから出撃し、怪我をしたり、危なくなったら戻れる場所として機能させる。

 最初の計画では、三番目の橋頭堡を作らない予定だったが、怪我をした竜操者をどうするかという問題が解決できなかったのだ。

 ――怪我をしたらそこで死んでくれ

 そう言われた方は当惑するし、士気にもかかわる。
 戦場のギリギリ近くに、逃げ込める場所を用意することにしたのである。

 ログラ砦までの道程を確保した僕らは、そこを中心に周辺の月魔獣を掃討する作戦に切り替えた。

 その間に物資を運び込んで、砦を使えるように改造する。

 月魔獣はある程度の範囲を縄張りとして、たえず徘徊している。
 だが、例外も存在している。「はぐれ」と呼ばれる縄張りを持たないタイプは、どこに出没するか分からない。

 陰月の路から遠く離れた場所で月魔獣の被害が出るのは、だいたいこの「はぐれ」が原因だったりする。

 僕らは、ログラ砦を中心に同心円状に広がりながら月魔獣を狩りまくったので、当面は大丈夫だろう。

「……というわけで、久々の休暇になりました」
「それは良かったですわ、レオンくん。わたくしたちはここからが大変なのですけど」

 駆動歩兵を駆るアンさんたちは橋頭堡の維持で、休み無しだ。
 とくに人の十倍、数十倍の力が出せる駆動歩兵は、人がどかせられないような瓦礫も運んでくれる。

 徒党を組めば月魔獣すら倒し得るわけだから、そうそう遊ばせてくれるわけがない。

「僕も何か手伝いましょうか、アンさん」
「レオンくんたちは、休むのも仕事です。イザという時に万全な状態でなければならないのですから、こういう時こそしっかり休んでください」

「なるほど、そうですね。決戦の時は近いですし、そうします」
「はい。ここはわたくしたちがしっかり守りますから、たっぷり休養してください」
 アンさんは極上の笑みを浮かべた。

 ちなみにこの橋頭堡。
 周辺の月魔獣を片付けたとはいえ、数日に一度くらい襲撃がある。
 ほとんどが単独で、これは「はぐれ」の仕業である。

 集団で襲ってくる場合は大抵飛行種なので、地上から迎撃するよりも竜操者が向かった方が早い。

 そんな感じで、昼夜を問わずたまに騒がしくなるが、僕らは交代で束の間の休みを楽しんだ。

 といっても、酒を飲んだりダラダラしたりするだけで、できることは少ない。
 僕はお酒を飲まないので、シャラザードと一緒に過ごすだけだ。



 僕らに与えられたのは四日間で、これが決戦前の最後の休暇となる。
 シャラザードも多少の傷を負っていたので、食べて寝て治すらしい。

 僕が休暇が始まってから、二日目の夜。
 補給の物資が王都から届いた。

 各町からの援助金や物資は一旦王都に集められて、その後ここに運ばれてくる。
 資材や食糧、竜の餌など、ここには十分揃っているが、かなり余裕を持たせている。

 竜操者が運んでくれるのは、他にも嗜好品や娯楽品、家族からの手紙や、王都の情報などである。

 とくにここにいる人たちは最新の情報に飢えていた。
 そのため、僕を含めた手隙な何人かが竜操者を囲んで、最新情報を聞いていた。

「……えっ、不審死ですか?」
「そうですね。王都の民は、伝染病じゃないかと震え上がっていたんですが……」

「違うんですか?」

「伝染病説はすぐに収まりました。普通、ああいう病って貧民区から広がるものですけど、今回は場所はバラバラ。どちらかと言えば富裕層の被害が多かったので、なにか別の理由だろうと思われたようですね」

「なるほど。それでどのくらいの人が亡くなったのですか? 不審死というからには、数人ってことはないんですよね」

 王都でそんなことが起こっているなんて、やはり拠点にいると情報が入ってこなくて困る。

「実際の数は分からないんですよ。公表されているわけではないですし。それと行方不明の人も多いようなので、噂になっている人だけで百人はくだらないらしいですよ」

「百人ですか?」
「多いですよね。そういうわけで、いま王都全体がなんだかピリピリしている感じです」

「そうですよね。短期間で不審死と思われる人がそんなに出たなら……」

「ええ。知られていないケースや、行方不明で、まだ判明していない人もいそうだし、この倍くらいはいるのかもしれないですね」

「………………」
 驚いた。結構本気で驚いた。

 王都は〈影〉が守っているんじゃなかったのか?
 女王陛下の〈影〉がそんな事態になるまで放っておくなんて。

 竜操者は他の人にせがまれて、別の話を始めてしまった。
 僕はその輪を離れてひとりになる。

「……王都で一体何が起きているんだ?」
 任務もあり、さすがに確認しに戻ることはできない。

 王都には知り合いも多い。
 ロザーナさんやリンダもいま王都にいるだろう。

 さすがに王族は厳重に守られているだろうが、都市部はそうもいかない。

 みんな無事だろうか。
 竜操者の話を聞いて、僕は心配だけが募ってしまった。

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