挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

609/660

608

「レオンくんは、戦後についてどう考えていますか?」

「僕は、引退して地方でパン屋をしつつ、のんびりと暮らせたらいいなと考えています。その時はアンさんも一緒に」

「そうですわね、わたくしも賛成ですわ。ですが、周囲が放って置かないことも考えられます」

「考えすぎということはないですか?」
 たかが竜操者ひとりの動向だ。そう深刻に考える必要はないと思うのだけど。

「レオンくんについては、女王陛下がいつ退位するかが問題になるかもしれません。ビルドラード王子は、月戦隊の総大将です。この功績をもって王位を譲られることも考えられます。その場合、地盤が安定するのに早くて五年、すべてが安定するのに十年は必要でしょう」

 大転移が数年続けば、王都の政治と経済を掌握するだけで、五年はかかるだろう。
 王都の復興だけでもかなりの金が必要になる。

 その他の復興は各都市が行うとしても、国全体が余裕を持てるようになるのに十年。いい読みだ。

「ビルドラード王子は真面目で評判ですから、十年もあれば竜族全土を安定化させられそうですね」
 昼夜を問わず問題解決に向けて邁進しそうである。

「譲位の時期がもう少し後ろにずれるかもしれません。大転移が終わるまで待ってからとも考えられます。その場合、別の功績を立てて、人心を掌握してからになるでしょう。カイルダ王国との友好か、食糧難の解消か、なにか大きな功績をなし得てからになると思います」

「なるほど、それはありそうですね」

「大転移中は女王陛下が引っ張りますので、国内の安定はもう少し早まるかも知れません。その分、王子の功績が減りますが、なんとかなります」

「はい。地方領主の力が強いですが、女王陛下が健在ならば、速やかに移行できると思います」

「遅かれ早かれ、ビルドラード王子の治世が始まります。そしてレオンくんは旧世代、つまり今の女王陛下の御代みよで活躍した代表格になります」

 支配種以上の敵は現れないし、他国との戦乱も無い。
 ビルドラード王子は、僕をブレーンにするのはやりにくいとアンさんは言いたいのだ。

 僕の名声は限りなく高い。
 反面、側近が活躍するような機会はもう巡ってこない。

 ビルドラード王子としては、自分と同じ速度で経験を積み、ともに活躍していく者たちで、周囲を固めたいと思っているだろう。

「そうですね。そんな気がします。そもそも僕は王子とそれほど親しくないですし」

 いっそのこと、いまから王子に取り入ればとアンさんに言ってみたら、「他の方々が警戒するので止めた方がいいです」と言われてしまった。

 すでに次代の派閥争いが水面下で行われているらしい。

「問題は、レオンくんとシャラザードさんの力が知れ渡ったあとで、野に下ることだと思います。王子の周辺の方々がどう思うか。もしくは、主流から外された方々だって、何もしないわけではありません」

 僕が反主流派に担ぎ上げられることもあるし、何もしていないのに、王子の取り巻きに危険視されることもある。
 そうアンさんは言いたいらしい。

 すべては、ビルドラード王子ではなく、その周囲にはべる者たちがどう考えるかで変わってくるのだそうな。
 派閥争いか? ああ、面倒くさい。

「僕はどうすればいいのでしょう」
「軍部に入って竜国に忠誠を誓うなど、方法はいろいろあります。まだ時間はあります。一緒に考えましょう」

「そうですね。まずはこの支配主戦を生き残ることですから」
「はい。ともに頑張りましょう、レオンくん」

 最後は笑顔になったアンさんが見られた。

 ただ、戦後にやってくるビルドラード王体制だけは、心に留めて置いた方がよさそうだ。

 アンさん言葉を借りるなら、とりまきが僕やアンネラのような属性竜持ちを「どう思うか」にかかっているようだし。

(最悪、処理することになるのかな。でも側近を処理すると、王宮内が混乱するだろうな)

 もし権力によって、僕や僕の周辺の者たちに手を出したら、その時は命で贖ってもらう。
 だから本当にそうならないことを祈りたい。



 アンさんとのデートは、残り二日。
 僕は毎日シャラザードと月魔獣狩りに向かい、その間にアンさんと多くの話をした。

 また、シャラザードも多くの属性技を披露し、アンさんを驚かせたり、僕に殴られたり、たまたま近づいてきた竜操者が感電したりした。

 そんな微笑ましいエピソードを交えつつ、シャラザードが月魔獣を狩っていると、予定より大分早く、橋頭堡までの道が確保できた。

 現在、橋頭堡で、月魔獣の侵入を阻止する柵の設営中である。

 周辺の脅威は排除したので、僕らは新たな敵を求めて、旧魔国領の奥深くに進んでいく。

 旧首都までの道を直線で作りたいが、地形の影響がある。
 首都までの間に、山の連なりが行く手を阻んでいるのだ。

 ここだけは大きく迂回する必要があり、周辺の掃討に時間が取られると思う。
 僕とアンネラとソウラン操者の三人は、各方面に別れて独自に掃討作戦を始めることになった。

 二つ目の橋頭堡が出来上がれば、決戦の準備も始めることになる。
 部下を持って、突っ込む感じになるらしい。詳細は教えてもらっていない。

 僕は、ビルドラード王子の事は頭から追い払って、目の前の事に集中していた。

 そして同じ頃、王都では新たな問題が忍び寄っていた。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ