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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 先日アンネラと、あと数日で橋頭堡までの月魔獣を排除しようと話し合った。

 橋頭堡を作るための資材は、道程の半ばまで運び終わっている。
 これも道ができるたびに少しずつ移動させている。

 僕やアンネラの活躍が求められている。

「アンさん、今日は少し気合いを入れて狩ります」
「分かりましたわ。わたくしは、邪魔をせずに見ておきますわね」
 アンさんはにっこりと笑ってくれた。

「よし、シャラザード。月魔獣を見つけ次第、狩るぞ」
『あい分かった!』

 シャラザードは目がいい。
 曇った空の下だろうが、月魔獣を的確に見つけてくれる。

『左手におるな。かなり広範囲にばらけているようだ』

 月魔獣は固まっているときもあれば、単独で徘徊しているときもある。
 単独ならば、後方からくる竜操者に任せてもいいが、範囲が広いと途中で集まられる可能性がある。

「シャラザード、行けるか?」
『もちろんだ!』

「ならば広範囲に効くタイプでいこう」
『任せるのだ!』

 シャラザードは小型の雷玉をいくつも作り、それを各方面へ放った。

 一つ一つは小型だが、それぞれが散らばり、一斉に破裂する。
 すると大地全体が爆発したかのような閃光と轟音が巻き起こり、周辺をすべて巻き込む威力となる。

「アンさん、目を瞑ってください」
「はっ、はい」

 一瞬後、閉じたまぶたを通して、強い光が感じられた。
 光の奔流はしばらく収まらず、爆音も尾を引いて耳に残っている。

「もう大丈夫ですよ。今のがシャラザードの属性技『雷玉乱らいぎょくらん』です。ひとつひとつは小さな雷玉なんですけど、数が揃うと、あんな感じですね」

「……レオンくん、左手の岩山が無くなっているのですが」

「雷玉は着弾すると、地上に衝撃波を発生させるんです。その影響で周辺の出っ張ったものはみな散り散りになってしまいます。もちろん月魔獣も例外ではありません」

 広範囲に散っていた月魔獣の姿はひとつもない。

「えっと……今のがシャラザードさんの最大攻撃ですか?」
「範囲攻撃用に開発したものですね。威力は周辺に散るので、比較的影響力が少ないと思います」
「…………」

『主よ、今日は奥までいくのではなかったのか?』
「そうだった……よし、どんどん行こう」

 この辺は魔国の町や村がない地域だ。人の手が入っていないので、山や崖などもある。
 木々も行く手をふさぐので、これらをならす(・・・)のも僕らの仕事だ。

 平らな地面にするのはターヴェリの方が得意なので、僕は邪魔なものを前もって破壊しておく。
 もちろん、月魔獣と一緒にだ。

『大型種がおるな』
「支配種の領域深くに入っているからかな」

『かもしれんな。子分を多数従えておるわ』
「じゃ、やっちゃった方がいいね」

 月魔獣の大型種はシャラザードよりは小さいが、小型竜が戦う場合は、多数で囲まないと勝てない。中型竜が五体でようやく互角という手強い相手なのだ。

 専用のフォーメーションで倒す方法が確立されてきたが、そんなことをしなくてもシャラザードならばすぐに倒せる。

「アンさん、あそこに見える大型種を倒します」
「はい……今度はしっかり見ますわ」

 さっきの目を瞑っていたからだろう。
 アンさんが気合いを入れていた。

「シャラザード、頼むぞ」
『心得た!!』

 今度は溜めをつくり、ひとつの巨大な雷玉を作りあげた。

 シャラザードの身体だけでなく、僕やアンさんの身体も帯電する。
 シャラザードの身体全体が光り輝いたので、準備完了だ。

「いけー!」

 ――がぁあああああ!

 気合いもろとも撃ち出された雷玉は、大型種に向かって飛んでいく。
 シャラザードは急上昇し、爆発の余波から逃げる。

 ――ドドーン!

 僕にとっては聞き慣れた音。
 アンさんにとっては大きすぎる音が地上から轟いてくる。

 すぐに結果を確認しにいかない。
 舞い上がった土砂がすごいからだ。それに土煙で見えない。

 だから大型種はどうなったか、確認していない。
 光の速さで動けないかぎり、あの大爆発で無事なはずがない。

 跡形も無く消え去った存在を探す愚は冒したくない。
 嵐が収まったあとに向かうと、そこには巨大なクレーターができていた。

 雨が降れば池か湖ができそうな感じである。

「レオンくん……今のが最大の攻撃ですよね」
「多少力を込めましたけど、通常の属性技ですね。基本技です」
「…………」

 地上にできたクレーターの大きさは、シャラザードの身体がすっぽり入るほど。
 まとまっていた月魔獣の場合、過剰攻撃になるが、あとからくる竜操者が「この範囲までが爆心地」と覚えてくれればそれでいい。

 口で言っても信じない人もいるので、こういった実際に目で見られる傷痕はとても貴重だと思っている。

 その後は、シャラザードも乗りに乗って、僕もアンさんが隣にいたことで浮かれていた。

 シャラザードの放つ属性技で、危険なものは目を閉じたり、耳を塞いだり、遠くに避難したりして、シャラザードに好き勝手撃たせた。

 多少、あとの整地が大変になったなと思う箇所もあったが、予定通り周辺の月魔獣は一掃できた。

「どうですか、アンさん」
「………………」

 一緒に喜んでもらえるのかと思ったが、アンさんはなにやら難しい顔をしている。
 どうしたのだろうと、しばらく待っていたが、思考から戻ってくる気配が無い。

 そして時々ブツブツと呟いている。
「えっと、アンさん……どうしたんです?」

 そこで急にハッとして僕の顔を見た。
「いいえ、なんでもないですわ!」

 何でもあるような口ぶりだった。
 しかも相当思い詰めている。

 結局、訳が分からないまま今日のノルマをこなし、僕とアンさんは帰還した。


 アンさんは最後まで難しい顔をしたままだった。

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