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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 今日から三日間、僕はアンさんとデートだ。

 こんなゆったりとした時間は久し振り。


 ――しゃげごぉおおおん


 アンさんだって同じだ。
 駆動歩兵に騎乗する時間は少ないものの、それ以外は自身の訓練や、フォーメーションの確認にと、鍛錬と勉強にかなりの時間を割いている。

 この三日間は駆動歩兵乗りにとって、念願の休暇だろう。

「綺麗な空ですわね」
「地上が見られないのは残念だけど、こういった雲海もまた見事ですよね」


 ――あんぎゃぁああああああ


 僕ら月戦隊ががんばっているおかげで、月魔獣の支配地域を順調に浸食している。

 次なる橋頭堡の場所まであと百キロメートルを切っている。
 今日も今まで進んだ続きから、月魔獣を見つけ次第狩る作業を続ける。

 現地までは、雲の上から行くのが一番いい。
 今日は厚い雲が流れているので、地上の様子は分からない。

 下は小雨くらい降っているのかもしれない。

「レオンくんは凄いですね。こんな状態でよく進路と距離が分かりますね」

「もう慣れました。方角はシャラザードがしっかり理解してくれますし、距離は飛んでいる時間で計算しています。速度が一定なので、簡単ですよ」

「まあ、そうなんですか」
「狩り場に着くまでまだ時間がありますので、こうしてゆっくりとおしゃべりできるのがいいですね」


 ――ぎょぉえええええええ


「シャラザード、うるさい!」
 さっきから。

『うむ、我もテンションが上がってしまったのでのう』

 実はさっき、アンさんがシャラザードに乗るとき、いろいろ話しかけていた。

「シャラザードさん、今日から三日間よろしくおねがいします」
「相変わらず、格好良い姿ですわ。さすがシャラザードさん」
「とても強そうですので、安心して乗っていられますわ」

 とまあベタ褒めだったので、気を良くしていた。

「シャラザードさんが狩る姿を早く見たいですわ」
 などと言うものだから、シャラザードはやる気に満ちているのだ。

『なに、我にかかれば月魔獣など、ちょちょいのちょいよ』

 調子に乗っていた。
 まあ、この辺はいつもなのだけど。

 そういうわけで、飛行中も煩くてしょうがないのだ。

「やる気になっているシャラザードさんもステキですわね」
 とアンさんがこんな調子なので、シャラザードは益々血気盛んになる。

 僕が学院生時代のときは、「結婚は時期尚早」と言われていた。
 大転移が早まったあとは、「両国の友好が結ばれてから」と言われ、支配種が落下してからは「平和になってから」と言われている。

 ある意味、時代の流れに翻弄されているのだ。されているよな。

 実際、支配種が魔国の首都に出現したときは、あれを倒せるのは僕ら属性竜持ちの竜操者しかいないということで、国から「結婚の話はそれを倒してから」と言われた。

 戦いで死ぬ可能性が高いと判断したのだろう。
 結婚して数ヶ月で未亡人にさせるわけにいかないという配慮のようだ。

 僕も死ぬつもりはないけど、可能性はある。
 シャラザードも支配種の強さはよく分かっているようで、絶対に大丈夫という話はしてこない。

 そして僕は、アンさんと結婚したら公職は辞する予定だ。
 英雄はただ消え去るのみ。

 復興は一般の人たちが力を合わせてやるものだし、僕やシャラザードのような「戦いに特化した」人たちは必要ない。

 いやー、残念だ。
 僕は隠居して、片田舎でひっそりとするしかないな。

 この話はもうアンさんにはしてあって、「でしたらわたくしもお供しますわ」と言ってくれている。

 両国の友好は文字通り強固になっているわけで、アンさんは実家を継ぐこともない。

 そして僕を連れて技国には戻れない。というか、竜国がそれを許さないので、竜国の王宮でかごの鳥のような環境に置かれるのならば、田舎でひっそりというのも悪くないのだろう。

 かつて世界を救った英雄が焼くパン屋と併設して、技国の姫君が給仕する喫茶店というのもいいかもしれない。

 ふたりで慎ましく生きるのだ。

 ペットは半野良で飼っているシャラザード。
 パンを買いに来た客が、時折腹を出して寝ている属性竜の姿を見ることになるだろう。

 そして子供たちにせがまれるのだ。
「ねえ、世界を救った話をしてー」と。

 僕はパンを焼く手を止めて「じゃあ、少しだけだよ」と、この戦いの話を聞かせてあげる。

「……レオンくん、シャラザードさんが降下を始めましたわ」
「ん? ああ、月魔獣の気配を感じたかな。そろそろ掃討していない地域だし」

 僕が脳内で将来設計しているうちに、現場に着いたようだ。

 さあ、狩りの始まりだ。

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