挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

605/655

604

 掃討作戦は順調に進んでいる。
 僕とアンネラの二人で先行し、月魔獣と出会うそばから属性技で倒していく。

 他の竜操者はかなり後方から討ち漏らしを叩いている。

「属性技は効果あるけど、味方が視界内に入ると結構なダメージを受けるみたいだし。支配種と戦うときまでに、連携を考えた方がいいな」

 僕ら以外の竜操者は、属性技の危険性は理解できたようだ。
 シャラザードたちが戦い始めると近寄りもしない。

 女王陛下の考えは、半分成功といった感じだろうか。

 黒焦げの大地と、吹き飛ばされて何も残っていない大地。
 どちらがマシかという問題ではなく、ここは橋頭堡きょうとうほを作るための通路となる。

 あとから通る人たちが怯えた視線を向けてくると考えると、少しだけ切なくなる。

「ターヴェリさんも大満足です」
「それは良かったね」

 ターヴェリもまた、いままで属性技の使用は制限されていた。
 女王陛下のように海上に出てぶっ放しておけばよかったが、そこまで暇ではなかったらしい。

「予定よりも計画は進んでいるみたいですね」

「そうだね。これで次の予定の半分まで進んだかな。僕らが掃討したところを入れると、残り四分の一ってとこだ」

「いいペースですね」
「シャラザードとターヴェリがいるからね。ソウラン操者もそろそろ合流するんじゃなかったけ」

「はい。そろそろだと思います。今日帰ったら聞いてみましょう」

 支配地域内の最初の橋頭堡は、ラティの町の跡地だ。

 その町は魔国の中でも擁壁が高くて厚い。
 住んでいた人は当然待避して、いまは無人。

 月魔獣によってかなり破壊されているが、南側は比較的無事な壁が多いと調査で分かっている。

 町全体を修繕するわけにはいかないので、壁の一部を使わせてもらって、町の五分の一程度を次の橋頭堡にする。

 このような橋頭堡を支配地域の中に全部で三つ作る予定だ。
 最後は旧首都の近くで、決戦のための最終調整をする場所になる。

「最初の橋頭堡ができたら、そこに移れる。長い時間をかけて戻らなくて済むから楽でいいね」
「そうですね」

 三百キロメートルという距離を飛ぶには、シャラザードでも二、三時間かかる。
 本気を出せばもっと早く着くが、余力を残しておかないと、月魔獣の支配地域だと何があるか分からない。不安が残るのだ。

 通常の小型竜の場合は悲惨だ。四時間程度かかる。
 そのため、往復の移動が楽になるのはありがたいはずだ。

 そんなことを考えながら戻ってみると……。

「おかえりなさいませ、レオンくん」
「アンさん!? もう着いたんですか?」

「はい。計画が前倒しになっていると聞きましたので、長距離駆動でしたけど、そのまま来ちゃいました」

「そうだったのですか。駆動歩兵のメンテナンスは大丈夫なんですか?」

「これから行います。もう慣れたものですので、大丈夫ですよ」
 なんと、アンさんたち技国の一行が到着していた。

 一般兵と駆動歩兵は、ある程度目処が立ってから合流する手はずになっていた。
 計画の前倒しが決まったことで、少し早めにやってきたようだ。

 それは僕にとっては嬉しい誤算。
 計画の前倒しは、竜国にとっても負担減になって、いいことずくめだろう。

 だからもっとシャラザードたちが讃えられていいはずだ。

 ちなみに、最近はアンネラもまた僕と同じ目で見られている。
 本人は気付いていないのか、まったく動じていない。

「まあ……近寄ったら知らないうちに感電死していたとか、暴風でミンチになっていたら、嫌だろうしな」

 しかも狙われたのではなく、単なる余波でだ。
 避けたくもなるだろう。

 夕食後、アンさんと雑談をしていたら、整備の方々がやってきて、アンさんとなにやら話していた。

「レオンくん。どうやら、少し念入りにメンテナンスをした方がよいようです」
 駆動歩兵のことだ。

「そうなんですか。普段から整備は頻繁にやっているんですよね」
「このあとも長距離移動がありますので、万全を期したいと言っておりました」

 そういうわけで、アンさんは到着したばかりだが、三日間ほど休みになるらしかった。

「じゃあ、シャラザードに乗りますか?」

 駆動歩兵は竜国に来てから、月魔獣戦のデータ取りに忙しかった。

 ある程度のデータが集まったあとは、戦術の見直しと集団戦の訓練をやっていた。
 最近は小型竜とも連携しているらしい。

 駆動歩兵はまだ属性竜の恐ろしさ……いや、頼もしさを知らないはずだ。
 というわけで、今回の休暇を利用して、アンさんだけでも知って貰うのはどうだろうか。

 そう考えて誘ってみたわけだが、アンさんは乗り気だった。

「それはいいですわね。ひさしぶりにシャラザードさんに乗れますわ」
 アンさんがシャラザードに乗ったときは実家に帰るときと、緊急で移動したときくらいだった。

 まだ属性技を使って戦う姿を見たことないはずだ。

「では明日から参加ということで、リドルフ副操竜長に話をしておきますね」
「お願いしますわ」

 というわけで、早速話しに行くと、「そんな物好きな者がいるのか?」という顔をされたあと、あっさり許可が下りた。

 これで明日から三日間は、アンさんと一緒だ。
 シャラザードも連日の狩りで上機嫌だし、少しくらい僕も羽目を外していいだろう。

 副操竜長の許可が出たことをアンさんに伝えた。
 アンさんは仲間の駆動歩兵に同じことを伝える。

 それを漏れ聞いた竜操者たちが「なんて物好きな人なんだ」という顔をアンさんに向けた。
 まったく失礼な。

 なんにせよ、明日はデートだ。
 少し殺伐とするだろうけど。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ