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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 僕らは月魔獣の支配地域へ、侵攻をはじめた。
 少しずつ確実に支配種へ近づくため、周辺の月魔獣を掃討しつつ奥へと進んでいく。

 橋頭堡にある地図に、掃討し終えた場所を塗っていく。

 ここ数日の侵攻で、見事支配種のいる旧魔国首都に向かう道が出来上がっていた。

 このような掃討済みの道――安全地帯を作りつつ進まないと、走竜や地竜だけでなく、一般の兵や駆動歩兵が安心して進めない。

 思わぬ襲撃で数を減らすことがないよう、まず安全路の確保をしているのだ。

 それにもっとも貢献しているのはシャラザードである。
 もし月戦隊の中にシャラザードに対して含むものがあったとしても、それは変わらない。

 一番多くの月魔獣を倒し、一番安全確保に貢献している。

 ――だが

 副操竜長は、何も言わない。
 いろいろ思うことがあるのだろうが、何も言わない。

 他の竜操者はヒソヒソと話をするが、その程度は僕も想定していた。
 そのくらいのことはやっているので、しょうがないと受け入れている。

 シャラザードが属性技を解放してから五日目。
 アンネラが合流した。

「お久しぶりです、レオン先輩」
「やあ、アンネラもこっち? 楽園の方はいいの?」

「この前大量に物資を運んだので大丈夫みたいです。しばらくはこっちでやれと言われました」
「そうか。助かるよ。ソウラン操者の合流はもう少し先になりそうだし」

 いまソウラン操者は、七大都市を回って啓蒙活動の真っ最中である。
 見栄えのする人物にして、女王陛下の信頼も厚いソウラン操者は、国全体の士気を挙げてくれる。

 というわけで、各都市で行われる会に出席するので忙しいのだ。
 僕らが戦っている脇でそんな会に出席しているが、ソウラン操者だってこれも仕事。

 国民の生活が多少苦しくなっても、いま竜操者たちが頑張っているんだからと思えれば、耐えることができる。
 そのための顔見せである。

 ソウラン操者が合流するまで、まだあと四、五日はかかる。

「それよりレオン先輩、聞きましたよ。随分と派手にやってますね」
「属性技のこと?」

「そうです。わたしもここに来る前、女王陛下直々にお声を頂戴しました」
 アンネラは楽園関連を中心に活動していたので、偉い人と話すことが多かった。

 女王陛下と直接対面しても、それほど取り乱すことはなかったという。
 成長したものだと思う。

「女王陛下も属性技の解禁って、無茶なことを言うよな」
 属性技は、規模の制御がほとんどできない。

 簡単にいうと、巨大な爪で地面に字を書くようなものだ。
 僕らが書いた字とシャラザードが書いた字の大きさは違う。

 どんなにシャラザードが小さな字を書こうとしても限界があるように、属性技で月魔獣だけ倒すというのは無理がある。

「一般の竜操者に早くから属性技の恐ろしさを知って貰って、その範囲を目で覚えてもらうんですよね。属性技無しでは支配種は倒せないので、巻き込まれないよう、身体で覚えさせるって言っていましたよ」

「そんな理由があったのか」
「知らなかったんですか?」

「ああ……女王陛下はなんで無茶な命令を出すんだろうと思ったけど」
「だからみなさん怖がっているんですね。レオン先輩が説明もなしにバカスカ撃ったんですよね」

「僕だって、説明されてなかったんだけど」
「それは……レオン先輩なら分かると思ったんじゃないですか?」

 そうなのだろうか。
 女王陛下が伝え忘れたんじゃなかろうか。

 それでも言いたい。
 バカスカ撃ったのは僕じゃなくシャラザードだ。

 ボクはアンネラの話を聞いて、冷静に考えてみた。
 属性技を撃てば、近くにいる敵味方をすべて巻き込む。

 それは確定だ。
 器用に味方にだけ被害を受けないようにはできない。

 支配種を倒すときには通常技だけでなく、属性技は必要。
 なるほど……ならば事前に何度も見せて、効果範囲や威力を知ってもらった方がいいわけだ。理に適っている。

「というわけで、わたしもターヴェリさんにどんどん撃ってもらおうと思います」
「がんばれよ」

 そして僕同様、怖がられてくれ。



 ……と思っていた時期が僕にもあった。

 アンネラは竜操者を集めて、ターヴェリの属性技の種類や効果の大きさ、その範囲、危険と思われる距離や、もし範囲内に入った場合の対処法などを講義していた。

 なるほどと、参加した竜操者たちは納得している。

「あいつ……できる」

 なぜだろう。負けた気分だ。

 ちなみにアンネラは「最大でこのくらいまで影響がでます」と大きな円を描いたら、何人かの竜操者が「盛りすぎ」とせせら笑っていた。

 やつらは後悔するだろう。
 ターヴェリの暴風は、小型竜くらいならば木の葉のように舞い上がらせることができる。

 身をもって己のふがいなさを噛みしめるがよい。

 ……と何だか僕が悪人のような思考になってしまった。

 アンネラに連れられて月魔獣掃討に向かった竜操者の何人かは、身体中切り傷だらけのボロボロの姿になって戻ってきた。

 竜は回復するが、竜操者の回復は遅い。
 あの切り傷は痛い。しばらくは痛みに打ち震えるがよい。

 などと僕が満足げに彼らを見ていると、これまで以上に僕が避けられ始めた。
 なんでも、あれだけ制御して撃ったターヴェリでさえ、巻き込まれたら大怪我をする。

 シャラザードが撃ったのに巻き込まれたら、その場で人生が終わるとまことしやかに語られているのである。

 その理屈はおかしい。
 何しろ僕はシャラザードを完璧に制御……はしていないけど、属性技を撃つときくらい、言うことを……聞いてくれるときもある。

 シャラザードは好き勝手しているようにみえて……まあ、好き勝手しているのだが、それでも周辺の配慮は……しているときだってある。

 つまり恐れる要素は……なきゃろれられげふんげふん。

「レオン先輩、今日も先行殲滅、ご苦労さまです」
「ああ……なぜか僕だけいつも、先頭で暴れるだけなんだよね」

「信頼されているんですね! さすがレオン先輩です」
「そうかな」
「そうですよ!」

 という会話をアンネラとしていたら、他の竜操者のみなさまは、僕と目線を合わせなかった。

活動報告に書きましたが、拙作『竜操者は静かに暮らしたい』の書籍版について、出版社様と「解約合意書」を取り交わしました。
今後は未定ですが、また書籍についてお知らせできるようなことがありましたら、ここでご報告致します。

なお、連載中の本作品ですが、完結に向けて鋭意邁進中でございます。
引き続きよろしくお願いします。
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