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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 ビルドラード王子は早々に王都へ戻っていった。
 いろいろ思うところがあっただろうが、一番よい選択ではなかろうか。

 平時はとびきり有能という話なので、王子が王位を継ぐ頃には、しっかりと平和にしておこう。
 あと、〈影〉は鍛え直しだ。

 王子ないなくなったので、指揮系統を見直すことになった。
 もちろんここのトップはリドルフ副操竜長だ。

 副操竜長以下、操竜会の序列に従って指揮系統が確立されていく。
 属性竜を狩る僕などは、半ば独立した部隊として扱われる。

 主攻部隊の中からひと月くらいかけて、シャラザードの部下を作っていくらしい。

 人事がようやく整理されたところで、副操竜長の最初の命令が下った。
「ここにいる竜操者の半分は月魔獣の排除。残りは橋頭堡きょうとうほ作りに参加だ」

 ベテランの竜操者が、器用に人材の振り分けを行っていく。
 ついに、月魔獣の支配地域内へ侵入していく。

 さてこれから生活をしていく橋頭堡だが、これはひとつで村くらいの広さがある。
 竜の運搬力を使っても、完成まで半月かかる。

 だいたい三百キロメートルにひとつずつ作っていく計算になっている。
 そう考えると、この一年で月魔獣の支配地域がかなり拡大したことが分かる。

 それはつまり、支配地域の中にいる月魔獣の数が増えたことを意味する。

『どれ、我らもいくかの』
 僕とシャラザードは当然月魔獣退治だ。

 一応……というか、なんというか。
 女王陛下から、アレのお墨付きを貰っている。

 僕としては非常にどうかと思うのだが、女王陛下がいいと言ったので、まあ、いいのだろう。

 本当にいいのか不安が残るが、それは僕のせいじゃない。僕のせいじゃ……ない。

「シャラザード!」

 僕らはすでに支配地域の中に入っている。

『なんだ?』

「今日から属性技は解禁だ」
『なんと。よいのか? よいのだな』
「…………ああ」

 シャラザードの声がうわずっている。
 あれを一度でも見たら、解禁していいなんて言うはずがないのだが、女王陛下は「自由に放っていいわよ」と宣った。

 僕もそれには「承知しました」と答える以外ないので、これから起こることは僕のせいじゃない。
 何度でも言う。僕のせいじゃない。

『ほほぅ、見つけた。見つけたぞ!』
 月魔獣の群れだ。大型種もいる。

 僕はもう口を出さない。これから何が起こるか、そして月魔獣がどうなるのか火を見るより明らかだからだ。

 シャラザードの身体が帯電し始めた。
 頭上に光が集まっていく。

 バチバチと今にも弾けそうな程それは大きく、さらに大きくなっていった。

「お、おい……」

 思った以上に大きくなった。
 これ、撃つのか?

 ――ひゅん

 軽い物体が風に飛ばされるような気軽さで、シャラザードの作った雷玉らいぎょくが月魔獣の方へ向かっていった。


 ――ずわぁーんぐががしゃーんどどどどどーん!


 大地が揺れた……どころの話ではなく、土砂が上空に舞い上がった。

「おまっ、今っ、何した!?」
『はて……ぐふふ』

「今の、ただの雷玉じゃないだろ! 新技か? 必殺技か?」

 爆心地は酷いあり様だった。
 月魔獣がいるとかいないとか、そういうレベルではない。

 かなり離れた場所にある大木が裂けている。
 大地を雷が走って、木で爆ぜたのだろうが、どれだけ離れていると思っているのだ。

 木も岩も何もかもが雷によって無残な姿をさらしていた。

『さあて、次へ行くぞ』
「ちょっと待て!」
『なんじゃ?』

「……おまえ、これを連発するつもりか?」
『久し振りであるし、勘を取り戻さねばならぬしな、適度に変えて撃つつもりだ』

「……女王陛下、本当にいいんですか?」
 聞こえないとは思いつつ、僕は問いかけた。

『向こうに気配があるぞ』

 ウキウキとシャラザードが向きを変えて飛んで行くが、向こうだろうがどこだろうが、ここは月魔獣の支配地域だ。

 月魔獣を見つけるのは容易い。
 だが、毎回アレをして、本当にいいものなのだろうか。

 支配地域から解放したらすべてが焼け野原だった……というのはありえる自体だ。
 美しかった森も湖も、整備された街道だって、なにもかも黒焦げになる。

「……まあ、シャラザードじゃなくてもターヴェリだって似たようなものか」
 あれは地上にあるものを全部吹っ飛ばす。

 ソウラン操者の場合は地中にあっても全て溶かすので、被害としては変わらない。

「そう考えると、女王陛下の一面氷の世界というのが優しくていいのかもしれないな」
 植物は全滅するけど。

『ではいくか……ぬぉおおおおおおおっ!!』


 ――どんがらかっしゃぁーんどどどんちゅどーんがっがーん!!


 シャラザードから飛んでいった特大の雷が上空で枝分かれして、数十条の雷となって地上に降り注いだ。

 もちろん地上でそれぞれが大爆発を起こす。

「…………」

 女王陛下はもしかしたら、旧魔国の領土を更地にしたいのだろうか。
 実は、魔国は大嫌いだったとか。



『ではそろそろ帰るかの』
「シャラザードは、近年稀に見る満足そうな声だった」

 まあ、あれだけ派手に好き放題ぶっ放したのだ。
 本人は大満足だろう。

 戻る途中、シャラザードが属性技を放った場所の上を通過した。

 そこには一面何もない不毛の大地ができあがっていた。

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