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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 今回、リンダが怒ったのも、分からないこともない。
 竜国商会はまだ立ち上がったばかりであり、やることも多い。

 すべて手探りの状態で、最終的な手綱は、竜国が握っている。
 たとえば、竜国商会の幹部だからと、地位を利用して商売で儲けようと思っても難しい。

 商会の事業はあくまで個人の力量で行うものであり、竜国商会の運営とは関係ない。
 では、竜国商会は何をしている組織かといえば、加入している商会の保護だったりする。

 商会を保護するには、ある程度採算度外視の団体が必要であり、それが今まで竜国になかった。

 そのため、急遽作ったものであるから、役員になったところで、通常の商会業務に有利なことはほとんどない。
 信用度が増す程度であろうか。

 そんな感じであるから、役員のなり手がいないのである。
 だれもがこの激変の時代に、自分の商会を存続させることに躍起になっている。
 他人の面倒など、みたくないのだ。

 ヨシュアさんは体よく役員を押しつけられたところがある。

 僕のパトロンをしているからだ。
 まあ、本人もがんばろうという意志を持っていたので、リンダも許容できたんだと思う。

 総長という代表のトップにならなければだが。

 竜国商会はそれなりに大きな組織である。
 業務は各部署に分かれて行われる。

 それぞれがほぼ独立して活動しており、ゆるく繋がっている感じだ。
 いくつかある部署の代表が集まって会議を開き、全体の運営を決めていく。

 ヨシュアさんは今回、ルビン総長とその取り巻きを追い出したことで、その代表が集まる会議で総長になることが決まってしまった。
 本人の意志とは関係なく。

 つまりヨシュアさんはいま、竜国商会全体の面倒を見る立場になったのである。
 すぐにリギス元総長の業務を引き継いだものの、人材は不足気味。

 にっちもさっちもいかなくなる前に、リンダを呼び寄せたらしい。
 その決断は正しいと思う。

 とばっちりが僕にこなければだが……。



 セレモニーは粛々と進み、各部隊の紹介となった。

 志願した竜操者の中から選抜されたのは当初の予定通り、五百名。
 これが通常の巡回任務から回せるギリギリの数だったようだ。

 主攻しゅこう部隊は、属性竜の竜操者とベテラン竜操者が担当する。
 僕とソウラン操者、アンネラ以外に三十人ほどの実力派が名を連ねている。

 この構成で支配種を倒しに行く。
 僕らが負ければ、人類は敗北するという分かりやすい構図だ。

 掃討部隊は、一般の竜操者で構成されている。
 飛竜と走竜が中心となっている。

 支配種以外の月魔獣をなるべく橋頭堡に寄せ付けないように周囲に散って、延々と月魔獣を狩るのが仕事だ。

 ハッキリ言って根気のいる大変な作業となるだろう。

 警備部隊は、アンさん率いる駆動歩兵や竜国の守備兵、そして地竜を中心とした竜操者で構成される。

 橋頭堡を守る最後の要である。
 陣地の外には出て行かないものの、陣地を頼りに月魔獣を排除することになる。

 陣地の中には非戦闘員もいるため、責任は重大。
 ここが落とされると僕らが帰る場所がなくなってしまい、作戦そのものも暗礁に乗り上げる。

 工作部隊は、築陣に特化した竜国の工兵を中心とした多くの労働者たちである。

 実際に戦うことはないものの、常に危険なところへ身を置くことになる。
 素早い築陣が求められ、破壊された側から修復する責務を負っている。

 最後の補給部隊は、戦場には赴かない非戦闘員だが、重要な役割を持つ各種商会である。

 金や物資を出す存在であるが、これがなければ作戦が途中で瓦解してしまう。
 文字通り、僕らの生命線を握っている。

 これらの布陣で、約一ヶ月から二ヶ月かけて支配種までたどり着き、そこで雌雄を決することになる。

 すでに物資の輸送も行われ、着々と準備は整っている旨が発表された。

 今回の作戦、総指揮を執るのは、ビルドラード王子である。
 補佐に副操竜長をつけて、竜国の本気度を見せつけた。

 もっとも、竜操者ではない王子は、前線に向かうことはない。

 僕も壇上に立って大喝采を浴びたが、首元にクッキリついた手形は隠しようもなかった。
 まあ、前の方の人しか見えなかっただろうし、問題ないと思う。

 ……と思ったら、サーラーヌ王女がこっちを指差して笑っていた。うーむ。



「よし、シャラザード。いくか」
『うむ。狩り三昧だな』

「……まあね。じゃあ、ゆっくりと上がってくれ」
 セレモニーの一環として、僕はシャラザードに乗って、橋頭堡のひとつに向かうことになった。

 演出というやつだ。
 そのうちこっそりと王都に戻ってくる。

 べつに行ったっきりになる必要はないのだ。
 適度に休みを取っていいことになっているし、今回の作戦は長期戦。

 そして僕やソウラン操者は、作戦の要である。
 本当に必要なのは、最後のときなのだから。

「方角は分かっているよな」
『うむ』

「じゃ、行ってくれ」


 ――しゃげごーーーーん(心得たぁー)!


 天地を揺るがす大声をあげて、シャラザードは咆哮を王都中に響かせながら雲の上に出て行った。

 こいつ、わざとやりやがった。


 こうして、発表された月戦隊のメンバーとともに、支配種討伐の作戦が決行されたのである。



追伸:あとで王子にめちゃくちゃ怒られた

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