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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 女王陛下との謁見が終わり、僕は失意にまみれて王宮をあとにした。

 言われてみれば、僕が出張って怪我をした場合、支配種討伐の成功率が極端に下がってしまう。

 属性竜の中で一番老獪なのはターヴェリだろう。
 だが、それを操るのがアンネラである限り、過度な期待はできない。

 その分、ソウラン操者は経験も豊富で人望もある。
 月戦隊つきせんたいを率いるリーダーとしては申し分ない。

「だけど、竜の声は聞こえないんだよな」

 相性というより、魂の問題らしいが、ソウラン操者は青竜の声を聞くことができない。
 もしそれが可能だったら、この作戦の幅もかなり広がったところだろう。

 そして僕とシャラザード。
 それなりの経験を積んだことで、戦力としてはかなり安定した力を発揮できていると思う。

「あれが暴走しなきゃだけど」

 月魔獣に対する異様なまでの憎しみを持つシャラザードは、たまに枷が外れて暴走する。

 先日、勝手に支配種を倒しにいったときもそうだ。
 長距離からの射撃を受けて、身体に穴が開いていた。

 中型竜ですら撃ち落とされるのだ。よく無事だったと安堵したが、一歩間違えればと考えて肝が冷えた。

 それと白竜の主である女王陛下だが、正式に参戦しないことが決まった。
 白竜がいるといないとでは、戦力的に大きな隔たりがあるが、国民感情を慮ってのことらしい。

 もし女王陛下が死んで、他の者たちが生き残った場合を考えた末の決断だった。
 そのせいで月戦隊の発表が遅れて、作戦決行までの時間も余計にかかることになった。

 なにしろ、属性竜は四体ではなく三体で倒せるよう作戦を練るのだ。
 多少時間がかかっても万全を期すしかない。

 女王陛下が参戦しないで勝てる作戦立案が至上命令となったわけである。



 僕が女王陛下との謁見を終えた数日後。
 町の話題はいまだ月戦隊一色である。

 本日、月戦隊のメンバーの発表が行われた。

 いまだ多くの者は陰月の路に赴いているため、発表のみである。
 それでも発表と同時に少し大きめのセレモニーが開かれる。

 僕はそれに参加する。
 シャラザードのところへ向かうために操竜場の宿舎を出たら、僕を待っている人がいた。

「久し振りね」
「リ、リンダ……な、なんで怒っているの?」

 南方で商売の拠点を増やしているはずのリンダが操竜場にいた。
 リンダは僕のパトロンであるため、納入業者と同じくここまでならば入ってこられる。

 そんなリンダは、腕を組んで仁王立ちしていた。
 背の低いリンダが僕を見下ろすように立っていることから、すごく怒っているのが分かる。

「あらレオン。私が怒っているって、なんで分かるのかしら」
「そりゃ長いつきあいだし、その態度を見れば一目瞭然……」

 リンダの顔がよけい怖くなった。

「ということは、なぜ(・・)私が怒っているのかは、理解していないようね」
「そ、そうなるかな……ははは」

 マジでなんで怒っているんだ?

 リンダは僕の近くにやってきて、顔をぐいっと近づけた。

「父が竜国商会の代表になったんですってね」
「ああ、ヨシュアさん? そうなんだよ。僕も驚いた……んだ?」

「驚いたですって?」
 久し振りにリンダのマジ顔を見た。

「本当だって。だって会議に行ったらヨシュアさんがいたんだもの」

「私はあなたに言われたって聞いたけど?」

 リンダが優しく僕の首に手をかけた。
 両手で絞めるように……って、それ、優しくても怖いんだけど。

「いやだから、竜国商会代表のルビン総長って人がさ、自分の都合ばかり優先しちゃって、今回の月戦隊メンバーから外されそうになったんだ。そのことをヨシュアさんにそれとなく話したんだけど……」

「そう。それは良いことをしたわね。でも考えてちょうだ。竜国商会はまだできたばかり。役員の数も少ないし、下で働く人はもっと少ないの」

「そういえば前、リンダも被害の調査にかり出されたよね。動ける人がいなからって、ソールの町まで僕が送っていったっけ」

「そのくらい大変なのよ。商国商会は代表が東西合わせて五人ずつ。十人もいるのによ。竜国は最近大きくなって、人も物も増えて、いま大変で大変でしょうがないって時なのに、あなたに言われて、総長一派をみんな放出しちゃったのよ」

 リギス総長はなぜ威張ることができたのか。
 それは竜国商会の中では最大派閥だったからだ。
 当然、部下も大勢いる。

 つまり竜国商会のオピニオンリーダー……意志決定機関の役割を担っていたらしい。

 だが、操竜会と対立してしまった彼では将来がない。
 ヨシュアさんはリギス総長だけでなく、彼の一派全員を追い出したらしいのだ。

「もしかして今、ヨシュアさんはもの凄く忙しい?」
 リンダは無言で頷いた。

「それはもう寝る暇も無いほどにね。私も急遽呼び戻されたわけ。南方でこれからって事業もあったのに……それもこれも、あなたにそそのかされたからよね」

「いや、リンダ待て! 僕は違う。そそのかして……はいたかもしれないけど、何もヨシュアさんが代表になって欲しいなんて一言もいって……なんで首を絞めるの? ちょっ、リンダ。く、くるちい……」


 セレモニーに出席した僕の首には、リンダの手の跡がクッキリとついていたらしい。

599話目(実質600話)になりました。
連載している本作は完結に向けて動いているところですが、書籍については先日の活動報告に載せました。
気になる方は一度目を通していただけたらと思います。
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