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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 翌日の夜、僕は久しぶりに女王陛下のもとへ向かった。

 月戦隊つきせんたいの発表から今日まで、王宮はかなり忙しかったように思える。
 結界の刷新も行われておらず、護衛も手一杯だったようだ。

「……あっ、そうか。魔国があれしちゃったから、新しい魔道が研究されていないのかな」
 革新的な魔道の研究は、魔国の首都イヴリールで行われるのが通例だった。

 竜国に降りてくる結界魔道は、だいたいがその余録である。
 本当に優れた魔道は外に出さない。

 劣化版でも高額で取り引きされるのだから、竜国はいい商売相手であったと思う。

 支配種がやってきて、その研究がストップした。
 その影響で王宮内の結界が古いままなのかもしれない。

「なんとかしたいけど、僕は解除専門だからなぁ」

 魔国から買い入れた魔道は、竜国の魔道使いが修正を施して導入していた。
 僕も仕組みが分かるものは改変できるが、新しく開発する能力は持っていない。

「父さんならばやれるかな。できても、しないと思うけど」

 そんなことを考えつつ、女王陛下の前に到着した。

 王宮内を移動する時間は最短を記録した。
 やはり、結界の見直しをした方がいい時期かもしれない。

「久しぶりね、レオン」
「お久しぶりでございます、女王陛下」

「あなたが訪ねてくるなんて、珍しいわね。何があったのかしら」
「はい。少々長くなりますが、お話ししたいと思います」

 重複ちょうふくしていることもあるだろうが、僕は一連の話を女王陛下にすることにした。

 リギス教会長が感じた違和感。
 これについては女王陛下の元にも報告が行っていたらしく確認済みだった。

 僕が竜の聖地へ赴き、呪国人を捕まえて処理した話をすると、「簡単に入れることが問題と考える人が出そうね」と女王陛下は長い息を吐いていた。

「呪国人とニコライドの関係が分かりましたので、内々に捕まえて情報を吐き出させた上で処理したいと思うのですが、どうでしょうか」

「『鉄耕』のニコライドがレイヴォスの町から消えて王都に侵入していたとはね。ねえレオン。その話、少し待ってくれるかしら」

 王都の〈影〉を動かしている現状、いますべきか女王陛下は悩んでいるらしい。
 実際、ニコライドは潜伏先で他の商人たちに匿われていると思われる。

 いま王都の〈影〉は、商国商人たちの監視や、悪事の証拠集めをしているらしく、僕が潜入するとどこかでぶつかる可能性があるという。

 不意に当たれば、戦闘になることもある。
 僕だって任務を優先したいので、邪魔をするならば排除は厭わない。

「やはりこちらでやるわ。レオンには悪いけど」
 僕の顔を見て、女王陛下はそんなことを言った。

「分かりました。僕は手を引きます。それとハリムについてですが」

 ハリムの行方が分からない。
 これはシルルお姉さんに聞いても要領を得なかった。

 今どこまで捜索が進んでいるのか、女王陛下に聞きたかったのだ。

「ハリムはいまだ行方不明よ。ニコライドよりも見付けづらいでしょうね」
 計画をことごとく潰され、かなり警戒しているのではないかという。

 とくに竜国へ深い恨みを持っているため、機が熟すまで近寄ってこないことも考えられる。
 たしかに、あれだけ捜索してもその姿は杳として知れない。

 もう死んでいるんじゃないかと思わせるほど、どこかにいたという痕跡がないのである。

「分かりました。僕の方でもハリムは引き続き探してみます」
 そう伝えたら、女王陛下が変な顔をした。

 どういうことかと思っていると、女王陛下は目頭を押さえた。

「ねえ、レオン」
「はい。何でしょう」

「月戦隊が発表されたのは知っているわよね」
「もちろんです」

「あの計画の中心は何か分かる?」
「もちろんです。シャラザードを含めた属性竜が攻撃の柱になります」

「そうなのよ。つまりね、レオン。いまあなたの身体はとても重要なの。作戦の要。妾の堅物息子と奔放娘よりも大事な存在なのよ」

「…………」
 ここであえてふたりの名前を出さなかったのは、女王陛下の温情だろうと思った。

「大陸の命運はレオン、あなたにかかっているかもしれないのよ」
「はい、頑張ります」

「分かっているのかしら」
「もちろんです」

「ならば、〈影〉の仕事はしばらく休みにしなさい。もちろん〈影〉同士の戦闘も禁止。死んだり大怪我をしたりして、この大陸が絶望に包まれたら嫌でしょ」

 決戦に出られない身体になることを女王陛下は心配している。

「ですが、竜の聖地のこともあります。できれば……」
「他の〈影〉を回します。レオンは竜操者としての責務を全うするように。いいわね」

「…………はい」

 そういう訳で、僕は女王陛下に言い負かされて退出することになった。
〈影〉の報告に行って、〈影〉の活動を制限された。

「……理不尽だ」
 僕は夜空にむかって、そう呟いた。

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