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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 俺がシルルお姉さんと橋の下で密会(決してやましいことはない)した日から五日後。
 僕はいま、王都の外にいる。

 つい三日前、王城より正式に『月戦隊つきせんたい』の件が発表された。

 王都の民はみな知っていることであったので、驚きを持って迎えられることはなかったが、これで竜国は引くに引けない立場を表明したことになる。

 月戦隊とは、国、操竜会、竜導教会、各種商会の力を合わせて、月魔獣の支配種を倒す部隊の総称である。

 魔国はすでに竜国領となり、旧魔国首都であるイヴリールは竜国の一地方。
 つまり、竜国はそこへ進軍する大義名分を得ている。

 国民はこのために魔国を吸収したのかと思うかもしれないが、僕は副次的なものだと考えている。
 商国商会のちょっかいを無くさせたかったゆえに、嫌々魔国を吸収したのだ。

 それは置いといて、月戦隊が発表されたことで、作戦の一部も発表された。
 これは国民を安心させるためであろう。

 国民は現場の様子は知るよしもない。
 ここで発表されたことが真実となるはずである。

 作戦とはこうだ。

 イヴリールに向けていくつかの橋頭堡きょうとうほを作り、安全を確保しつつ支配種が持つ支配地域を削っていく。

 最終的には属性竜でもって、一気に倒しきる。

 とまあ、こんな大雑把なものだ。
 それでも国民は熱狂した。

 月戦隊の主要メンバーである竜操者たちは、いまだ選考中である。
 完全に決まるにはまだ日数がかかるが、作戦はすでに進行中である。

 そう、橋頭堡作りだ。
 資材の発注がはじまり、非戦闘員の訓練もスタートした。

 いかに早く安全に資材を届けるか。
 これには地竜がものをいう。

 荷馬車のように、巨大な荷台を引っ張る形になる。

 すでに商人たちが色々噂しあっていて、どうやらかなり大きな岩盤の削り出しが始まったようだ。

 これは何に使うのか僕は知らない。
 岩盤は厚くて重い。

 数頭の地竜が運ぶらしいが、本当に何に使うのだろうか。
 まだまだ知らないことは多い。

 月戦隊の発表に付随して、物資の発注が発生したことで、王都はにわかに特需景気に見舞われた。

 人や物の出入りが増え、乱雑になったが、人々の顔に明るさが戻ってきた感じだ。

 あまり知らされていないが、支配種が持つ能力――支配地域の増加が、最近著しいらしい。

 支配地域が増えると、その内部では月魔獣が永遠に活動できてしまう。
 つまりそれだけ決選時の危険が増えることを意味する。

 よくない兆候である。
 ゆえに計画を少し前倒しした感じらしい。

「それによって、王都が混沌として来たんだよな」
 月戦隊の発表によって、いまの王都がどうなったのか少し気になる。



『……遅かったの』
「起きて待っていてくれたのか、シャラザード」

『うむ。して首尾はどうであった?』
「問題ない……のかな」

『主らしくもない言葉だな』

「問題は片付いたけど、別の問題が発生したんだ。それと、片付いたと思っていた問題が実は片付いてないかもしれない」

『とんちか?』
「いいや、事実さ。それより王都に帰ろう。色々報告したいこともあるし……なにより寝たい」

『うむ。では戻るとするか』
 シャラザードは僕を乗せて飛び立った。

 行き先はもちろん王都。
 すぐそこだ。

 何しろ僕はいま、竜の聖門がある谷にいたのだから。



 実は先日の会議で、リギス教会長の言葉が妙に引っかかったのだ。
 そこで僕は、コッソリと竜の聖地へ向かってみた。

 そうしたら案の定、人の痕跡を発見した。
 リギス教会長は、よく発見したなと思うほど、かすかなものだった。

 闇に溶けて張り込むこと二日目。
 侵入者を発見した。

 僕が見つけたのは呪国人の三人組で、すぐにお引き取り願った。この世から。

 時間がなかったけど丁寧に話し合った結果、いくつかの事が分かった。

 商国五会頭のひとり『鉄耕てっこう』のニコライド・ルブランが王都入りを果たしている。

 シルルお姉さんからニコライド発見の報はなかった。
 つまり、王都の〈影〉は見つけられていない。

 出入りが激しいため、その辺は致し方ないとは思うが、すんなりと王都に入られていたのは意外だ。

 他の『白夜びゃくや』イノセントや、『連吟れんぎん』ゴードリクの所在は確定している。
 注意するのはこのニコライドひとりである。

 呪国人の三人はニコライドに頼まれて、中の様子を探っていた事が分かった。
 探っていたのは、竜の聖地すべてだ。

 ここは入り組んだ谷ではあるし、警備の配置、どの時間にどこに人がいるのかなど、不明なことは多い。

 そういったものを事細かに集めていたらしい。
 たしかに上空から眺めようにも、近づくだけで排除される。
 下から地道に探るしかない。

 そのため呪国人を派遣したらしいが、問題はその目的だ。
 もちろん彼らは目的を知らない。教えて貰っていない。

 だが、簡単に予想が付く。
 竜の聖門に関するありとあらゆるものを探っていたのだから、目的はひとつだ。
 ここを占拠するのか、破壊するのか。

 どちらにしろ、聖門を狙っていることには変わりない。

 これは女王陛下に報告すべき案件だ。

 幸い、呪国人が得た情報はまだニコライドに渡っていない。
 今ならば先に手が打てる。

 というか、そうするために女王陛下に話を通したい。

「それとハリムか」
 ハリムの行方は分からない。こちらは何の情報もない。

 この混乱の中、王都に潜入している可能性もあるが、ニコライド同様、本気で身を隠すと、中々摑まえられないのが現状である。

 僕も忙しくなってきたし、ハリム発見は他の〈影〉に期待することにしよう。
 まずはニコライドの捕縛だ。

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