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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 その後は、月魔獣狩りをしつつ楽園に行ったり、シルルお姉さんの依頼を受けて、王都で活動したりして過ごした。

 王都の住民も、女王陛下が支配種を排除するために大規模作戦を準備していると噂しはじめた。
 どこからか、情報が流れたのだろう。

 作戦の大枠が決まり、各方面への声かけが始まったらしいので、そろそろ噂が流れる頃なのかもしれない。

 この作戦は、王都防衛の兵と竜操者は残して、一時的に陰月の路に展開している竜操者たちを動員する計画であるらしい。少なくとも僕はそう聞いている。

 いま国の偉い人たちや、頭の良い人たちが必死に「勝てる作戦」を考えているらしい。

 僕としても、支配種討伐には賛成だし、やるならば少しでも早いほうがいいのも分かっている。
 問題は、その足を引っ張りかねない存在だろうか。



 日が経つのは早いもので、先日行われた会議で決まったことが実行された。
 作戦に参加する竜操者の募集である。

 小型竜と中型竜を合わせて、五百騎の希望を募った。
 僕やソウラン操者はもとから参加するので数に入っていない。

「実際に赴くのは、その半数くらいになるんじゃないかな」
 ソウラン操者と話したとき、そんなことを言っていた。

 最初の前線基地を作るまでは、選抜メンバー以外に頑張ってもらうことになるようだ。

 月魔獣の支配地域のなるべく深いところに楔を打ち込んで、そこを基地とする。
 僕ら選抜メンバーはそこに常駐し、支配種のいる場所まで向かう。

 途中の妨害を排除しつつ、支配種の射程外から特攻の機会を窺うことになりそうだ。

「最終的にはいくつかのグループに分かれて、支配種やその取り巻きをかく乱することになるだろうね」
「そこまでして、慎重に行かないと駄目ですか?」

「失敗は許されない活動だからね。慎重に慎重を重ねて、その上で勝機が出来るまで動くなと言われているよ」
 ソウラン操者はすでに吹っ切れているようだ。

『我は二千騎を引き連れて決戦に赴いたが、あれはいま考えると無謀であったわ』

 シャラザードによると、数で押したがいいが、本来支配種を倒すはずの守護竜――ここで言うところの属性竜が先頭に立ってしまった。

 たしかにシャラザードは強いし、ターヴェリも負けてはいない。
 だが、そういった属性竜が傷つきながらも道を開き、先頭になって突っ込んでいけば、支配種の元にたどり着いたときにはボロボロになっている。

 それでは駄目だという。

 王都の政府研究機関シンクタンクも同じ意見のようで、あえて捨て石をつくることで、作戦の成功率を上げようとしている。

 それは竜国議会も、操竜会も「必要な犠牲」として割り切っている。
 それこそ、何度も議論を交わしたらしい。

 その上で、希望者を募ったらしい。
 締め切りは、募集開始より二十日後。

 どれだけ来るか分からないが、事前情報も少しずつだが竜操者の間に流していたことで、みな薄々ながら状況を理解しているという。

「すでに募集は始まったし、この作戦は後には引けない。そして一度で成功しなければ、この大陸は月魔獣に支配されてしまう」

 ソウラン操者の真面目な顔に、僕も頷かざるを得なかった。

 そんな感じで、僕の注意が支配種と侵攻作戦に向いていた頃、竜国の外で大変なことが起きていた。

 僕がそれを知ったのは、かなり経ってから。
 定期的に会っているシルルお姉さんからの情報だった。



「えっ、全滅したんですか!?」

 いま竜国は、天蓋山脈で様々な調査活動をしている。

 これまで関心を寄せていなかったことで、純粋に知識が乏しかったこと。
 天蓋山脈内に『楽園』があったことで、その重要性が高まったためである。

 竜国は、国策の一環として、多数の人員を天蓋山脈に入れていた。

 といっても、天蓋山脈は広く大きい。そして深く険しい。
 調査自体は、思うように進んでいなかった。

 だがそんな折り、とある調査グループが、人跡未踏の場所で人の痕跡を発見したのである。
 天蓋山脈は凶暴な獣がいまだ生息している場所である。

 武器を携えた者も多数参加している。
 その者たちが人の痕跡を追ってゆくも、連絡が途絶えた。だれも戻ってこなかったのである。

 不審に思った調査員が現場に向かったところ、多数の死体を目にすることになる。
 そしてその調査員たちもまた、帰らぬ人となった。

「調査員たちは日誌をつけていたので、そこまでの事情は分かったの」
「ただし、誰にやられたのか、どうしてやられたのかが分からないと、そういうわけですね」

 シルルお姉さんは頷いた。
 いつまで経っても調査員たちがベースキャンプに戻らないため、他のグループが探しに行って見つけたのだという。

 調査員の死体や荷物は飛竜が麓まで運び、そこで死因を調べることになった。

 医師の見立てでは、使われたのは毒。
 苦しんだ跡がないので確証はないらしいが、即効性の毒だろうと。
 本人たちも気づかないうちに、毒にやられたのではないかという。

 天蓋山脈で見つけた人の痕跡。
 それを追っていった者たちの全滅。

 それが起こってから、すでに十日以上経っている。

「王都への侵入を厳重にしたいのだけど、人が足らないらしいのよ」

 今はただでさえ人が足らない時期である。
 そして新しいこともどんどんと始まっている。

「じゃあ、もしかすると、王都にもその毒が入ってきているのかもしれないんですね」
 調査員を殺した者の正体。竜国の人間でなければ、答えは絞られる。

 商国の商人。しかも現在手配中のハリム一行の線が濃厚である。
 そういうわけで、お姉さんは僕にその話をしたのだと言う。

「そうか……ハリムが王都に来たのかもしれないのか」
 ハリムは天蓋山脈に消えた。その理由は分からなかった。

 もしハリムが強力な毒を採取しに天蓋山脈に向かったのならば、当然それを使うはず。
 そしてもっとも効果的なのは、人が多いところ。

 ゆえに竜国の〈影〉は、最大限の警戒をもって事にあたるという。

昼間の空き時間に執筆していますが、pomeraDM200を修理に出したで、この所執筆時間がとれなくて苦戦しています。
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