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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 僕が王都に来てから三日後。「支配種をなんとかする会」がはじまった。
 名前が前回と微妙に違うが、それはどうでもいい。

 会のはじまりから、本題そっちのけで「責任の追及」が始まった。

 声をあげているのは、竜国商会のルビン総長。
 ややガラの悪い商人という感じだったが、地声が大きいせいで怒っているとしか思えない。

 これは長引くなと思ったので、僕は半分聞き流している。
 ソウラン操者は、見えないようにあくびをしていた。

 この中で一番ソウラン操者が疲れているようだ。
 楽園から急いで戻ってきたらしい。

 唯一辟易しているのは、ルビン会長の標的となっているリドルフ副操竜長だ。

 竜導教会のリギス会長は我関せずで、ほっほっほと好々爺たる笑顔を絶やさない。
 きっとこういう会議は、教会内部でも日常茶飯事なのだろう。

 ちなみにがなりたてているルビン総長を除いて、全員が話をまじめに聞いていない。
 というのも、ルビン総長の話が同じなのだ。堂々巡りをしていると言っていい。

 ルビン総長が要求しているのは大きく分けると三つ。

1.操竜会が非を認めて正式に謝罪すること
2.被害者に弁済金を支払うこと
3.再発防止に努めること

 謝罪というのは亡くなった人の遺族のみならず、事実を公表して、国民全員に詫びるべきだとまで言い出している。

 全方位に詫びろとは、かなり強気な話をしているが、貴重な竜を失った責任を思えばそうすべきだというのである。何様かと言いたい。
 これは操竜会の地位が下がれば、必然的に竜国商会の地位が上がると考えているかららしい。

 支配種が倒されたとき、活躍したのは操竜会で、商会は裏で支えただけという立場が嫌なのだろう。


 そしてふたつめ。弁済金はかなり高額な話になっていた。
 通常、兵が死ぬと見舞金が出るが、そんなものとは桁が違っていた。
 ふっかけるにも程があるだろうという金額だ。


 さらに最後。これは意味が分からなかったので、だいぶ話を聞き流していたが、どうやらトップが辞任し、自分たちの息がかかった者たちを入れたいらしい。

 それが分かった時点で、僕などは嘆息してしまった。
 竜国も商国も商人はどうしてこう、同じようなことを考えるか。

 竜の運用は、金勘定とは違う。そこが分からないのだろうか。

 僕はチラッとリギス会長を見た。
 相変わらず、起きているのか寝ているのか分からない目をしている。

「それでどうなんだ!」
 ルビン総長がテーブルをダンッと叩いた。

 この会議が始まって三時間。
 ずっとこの話ばかりしている。

 そろそろ休憩かなとリギス会長を見ているのだけど、今日は動く気配がない。
 どうしようかと僕が考えていると……。

「あくまで竜操者側に責任があるというのですね」
 ここで副操竜長がルビン総長の話に乗った。

「もちろんだ!」
「議員や商人たちの言うことを聞いたのが悪いと」

「突っぱねれば済むはずだ」
「たしかにそうです」

「ならば謝罪をし、弁済を受け入れるのだな」
「いえ」
「なに?」

「その言葉通り、操竜会は今後一切、議員および商人の意見を聞くことを拒否します」
「なんだと!?」

「いま我々竜操者を非難しているのはそういうことでしょう。相手にどんな言い分があろうとも、最終的に決断した竜操者が悪いと」

「自分の意思で決断したのだからそうなる」

「それをたったいま改めるというのです。議員と商人が何を言おうが、竜操者は絶対に従わないよう、通達を出します。今後、どんなに些細なことでも従わせません。かならず操竜会を通してもらいます」

 もちろん操竜会でも、よほどのことがないかぎり通しませんがと言い添えた。

「なにをバカなことを。我々の援助がいらないというのか!?」
「それとこれは別」
「別なものか!」

「いいえ別です。それともうこの件は終わりにしましょう」
「まだ何も終わってない!」

「話は聞かないと言ったはずです。邪魔をするなら出て行ってもらいます」
「……ッ! ならば、出て行かせてもらおう。商人の援助なくして立ちゆくと思わんことだな」

 リギス総長は椅子を蹴って出て行ってしまった。
 僕らが呆気にとられている間にだ。

「本当に出て行ってしまいましたけれど、あれ、良かったんですか」
 一応、リドルフ副操竜長と話し合った打開策はある。あるにはあるのだが……。

「事態は動いているからな。あまり余計なことに時間を無駄にしたくない。それにいい機会だっただろう。……そうではないですか、ご老公」

「ほっほっほ……驕れる者は久しからずじゃ。竜導教会としても目に余ることはあったでの」
 どうやら二人は内密に話していたようだ。

「というわけで、次の会議の時には新しい商会が来るはずだ」

「ということは、うまく行ったんですか?」
「おそらくは大丈夫だろう。感触は良かったからな」

 なるほど、副操竜長が強気に出たわけは、そこにあったのか。

 こういう結果になったのも、実は数日前。
 僕が呼ばれたとき、副操竜長たちの前でとある話をしたからだ。



 支配種の見学にいって亡くなったのは、全部で十五人。
 議員が六人、大商人が二人、それなりに大きな商会の人たちが七人だった。
 これはかなりの被害である。

 竜の背に五人ずつ乗せていたらしく、他に三人の竜操者を失っている。

 次の会議でルビン総長が操竜会に的を絞って追求してくると息巻いていたので、僕は別の商会を頼ってはどうかと提案したのだ。

「別の商会と言っても、ほとんどが竜国商会の傘下に入っているのではないか?」
 入っていないのは、それこそ弱小の商会くらいだろう。

「そうなんですけど、なにも竜国に限らなくてもいいんじゃないですか?」
「?」

 実は、最近僕も少し違和感を抱いていた。
 竜国ばかりが勝ちすぎる。

 商人たちもそうだ。
 女王陛下が竜国商会を保護したおかげで、かなり商売がやりやすくなっている。
 それゆえ、増長する者も出てきているのではと思ったのである。

 商売はある程度自由に競争させた方が健全ではないかと思っていたときに、ちょうどシルルお姉さんから商国商会を揺さぶる依頼を受けた。

 そのときに知り合った男から聞いた話。

 商国商会も一枚岩ではないこと。
 長く竜国で商売しているのだから、排除しないでほしいとお願いされた。

 僕が感じただけだが、あれはいつ暴発してもおかしくないくらい追い詰められていた。
 それを思い出したときに、ひらめいた。


 ――彼らに声をかけて誘ってみたらどうかと。


 僕がその話をしたら、他の竜操者からも「魔国が竜国の傘下になって、魔国の商人が竜国の商人となった。
 最初はやりづらいだろうけど、早く溶け込んだ方が、より竜国の発展につながるんじゃないかというのだ。

「それいいね!」ということで、副操竜長が女王陛下に掛け合うことを約束してくれた。

 そして、旧魔国の商人と、五会頭から距離を取っている商国の商人たちを引き入れて、竜国商会と競わせたらいいのではないかという意見が出たらしい。

 というわけで、いま王都には三つの勢力が存在する。

1.竜国商会
2.五会頭が率いる商国商会
3.新たにできた竜国内で活動する商国連合

 今回の会議で竜国商会があまりにひどいようならば、乗り換えもやむなしと女王陛下から言質を貰ったらしい。

 というわけで……。

「彼らのことは忘れて、今日の議題を消化しよう」

 会議は粛々と進められることになった。

 本当に次の会議には別の商会の代表が来るんじゃなかろうか。

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