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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 会議の休憩が始まって部屋に人がいなくなると、ソウラン操者が僕に近寄ってきた。

「レオン操者、少しいいかな」
「はい、僕は構いません」
「じゃ、少し外に出よう」

 勝手知ったる操竜場の中。
 僕とソウラン操者は、人が来なさそうな場所まで行き、揃って腰を下ろした。

「休憩はそうだな……三十分以上、おそらく一時間はかかると思う」
「そんなに長いんですか?」

「会議に参加しているのが代表たちだからね。今頃部下と調整に動いているよ。その話し合いが終わるまでは戻ってこないのさ」

 商人、政治家、竜操者、教会、それぞれ部下が別室で待機しているので、そこで意見を調整して、必要ならば内々に他の勢力に話をもっていく。そこでも小さな会議が開かれるだろうとのこと。

「この会議、いつ頃終わるんですかね」

「さて。次回は来月だし、今日の会議である程度決めておきたいはずだ。夜までかかるんじゃないかな」
「うへえ」

 僕の嘆きに、ソウラン操者が笑った。

「以前は四つの団体の長が集まっていたのだけど、意見が分かれるとどうしようもなくなったらしい。そこで第五の勢力……実働部隊を呼ぼうって話になったみたいなんだ」

 僕やソウラン操者が呼ばれたのはそういう理由があったらしい。

「でもあの状態じゃ、まとまらないんじゃ?」
「そうだね。そもそも皆、自分たちの思惑があるからね」
「思惑ですか?」

「たとえば商人たち。彼らの考えは分かりやすい。支配種討伐が成功した後を常に念頭に置いているね。いまは秘密裏に物事が進んでいるけど。どれだけこれに時間を割いても、お金を使っても、まったく宣伝にはならない」

「そうですね。それは商人としてマイナスということですか」

「計画が発表されるまでは誰にも話せない。実行は一瞬だから、商人がその後のことを考えるのはしょうがないとは思うね」

 成功した後について考えているらしい。
 そのため、この秘密の計画を知っている女王陛下が万一戦死でもしたら、計画が根本から狂ってしまう。

 あとを継ぐ王子は生真面目な堅物。
 裏でどれだけ商人が尽力したか、理解してくれるとは限らない。

 そもそも国が混乱すれば、商人は生きにくい世の中となる。
 女王陛下にはぜひとも生き残ってもらって、次の社会に自分たちを重用してほしいと思っているらしい。

 商人らしい現実的な考えだ。だからこそ、読みやすいのかもしれない。

「見返りが政治関与ではなく実利なら良さそうな気がしますね」
 商国よりかなりマシだ。

「さて政治家だが、彼らには別の思惑がある。彼らは女王陛下の代理人であって、本人に決定権はない。そして政治家は風波立たずに終わらせることが有能な証と考えている。つまり、いまの商人の考え方とは相容れない。余計なことは言うな、するなの精神だけ。自分だけでなく、他人にも。だからわざとではないと思うけど、これまでも結構反対意見を言っている」

「話し方も、下級役人みたいな感じでしたね」

「政治家も上の立場になればなるほど責任回避能力に優れているから、商人の追求ものらりくらりと躱していたね。責任を他者に押しつけてばかりだ」

 そう考えると、商人と政治家の反りが合わないのは当然なのかもしれない。

「操竜会はどうなんです?」

「最低の犠牲で終わらせたい。ずっとそう考えているよ。できれば、軍人ではなく民間の竜操者で事をおさめたいとね。そうなると訓練の有無が重要になってくる。メンバー決めを一番焦っているのは操竜会かもしれないね」

「熟練の竜操者を充てたいと言っていましたけど」

「半分はブラフかな。そうすると国防の重鎮がいなくなる。だったら民間の竜操者を戦いに赴かせた方がいいと説得する作戦かと思っているのだけど。どちらにしろ、かなりの犠牲がでる作戦だから、軍部が崩壊しない程度に民間の協力が必要と考えているのは確かだと思う」

 月魔獣の脅威が去ったあと、国内が混乱しては意味が無い。
 押さえの武力は残しておかねばならないというわけだ。

 それは他国との戦争だけでなく、さきの内乱も頭の隅に残っているのだろう。

「余計、話がまとまらなそうな気がしてきました」

「いよいよとなったら多数決を取るから、俺たちは早めに立ち位置を決めておいた方がいいかもね。もしかすると教会の助けが必要かもしれないし」

 これまでの会議でも、教会は我関せずという態度が強く、主張は多くない。
 それでも多数決での一票は持っているので、水面下で提携をしておくのは悪いことではないという。

「あまり僕、そういう政治的なのは好きではないんですけど」

「俺だってそうさ。だけど彼らだけに任せたら、どんな作戦が飛び出すか分からないからね。実際に向かうのは俺たちだから、嫌なことには初めからそう言っておかないと駄目だよ」

 ソウラン操者は大人だ。
 僕なんか、会議をどうやったら逃げ出せるかばかり考えていたのだから。

「というわけで、レオン操者とはこうして時々話し合うことが多くなりそうだからね、話せて良かった」

「ありがとうございます。僕も助かりました。この会議、もう何が何だか……」

「会議だけど、休憩後はきっとスルスルと決まると思うよ。今頃裏で調整しているはずだから」

「本当ですか?」
「休憩が終わったら、分かるよ」

 一時間と少しして会議は再会され、竜操者側の出した作戦参加者名簿の一部が承認されることとなった。
 同時に民間に残った竜操者の中から、推薦で何人か作戦に参加させることも決まった。

 さっきまでの大荒れは何だったのかと思うほど、休憩後はすんなりと会議が進んだ。
 本当にソウラン操者の言った通りになったのだ。

 こうして僕は疲れた身体を引きずって、シャラザードのもとへ向かった。

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