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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第8章 大転移-月戦編

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 シルルお姉さんから聞いた話は中々に壮絶だった。

 逃げた『鉄耕』のニコライドは、最後のあがきをする可能性があるという。
 どうせこのままでは身の破滅なら、デカい何かをやってやろうというわけだ。

 事実、今回の魔国滅亡で、そのくらいしないと溜飲が下がらない大商人たちがわんさか出たらしい。

 現在、吸収交渉の最中らしいか、魔国側にさまざまな制限を課すという。
「敗戦国と同じ扱いか。実際には戦ってないけど」

 最後通牒を突きつけて降伏を促したわけだが、竜国としては現政権の残滓は一粒たりとも残したくない。完全に一掃させたいようだ。
 何も知らない領主を赴任させて、一から町作りをやっていく感じになるだろうとのこと。

 シルルお姉さんいわく、魔国に資金をつぎ込んでいた商人ほど、竜国が恨めしいらしい。

 もちろん竜国の商人は魔国に投資などしないし、技国はもともと技術者の国で、商人は自国内で細々とやる方が断然多い。

 つまり魔国に金を注ぎ込んでいたのは、魔国と商国の商人たちだけということになる。
 下からあがってくる不満を『白夜』のイノセントが受け止めて、それでも支えきれない部分をニコライドが担当するのかもしれない。

 唯一『連吟』だけは我関せずなのだろう。



「さて、こんなことをしていられないな。僕も行かなきゃ」

 僕は公園を出て、王都にある操竜会本部に顔を出した。
 本部とは、王城と竜の学院の中間地点にあるおなじみの場所である。

 中に入ると、物々しい警備が目につく。
 シルルお姉さんが中に入れないと愚痴をこぼしたのも頷ける。

 いま操竜会本部は、かなりピリピリしている。

「レオン操者か、遅かったようだが」
「すみません。用事が一件ありまして」

「そうか。これで今日のメンバーは全員揃ったな。では始めよう」

 いま僕がいるのは操竜会の会議室。
 居並ぶメンバーは多種多様となっている。

 たとえば、僕に声をかけたのは操竜会の副操竜長リドルフ・ヴェッツァー。
 操竜長が表だって動くわけにはいかないというので、リドルフ操者がこの会の責任者をしている。

 リドルフ副操竜長は、竜操者千騎を従えるとても偉い人だ。
 偉すぎて、僕には接点がない。

 他にも国から派遣された大臣たちが数名いる。
 名前はまだ覚えていない。

 大臣は基本的に国政の裏方をしていることが多く、顔も名前も表には出てこないのだ。

 そして竜導教会からは、総教会長のリギス・ノーザントが参加している。
 教会の序列は分からないが、かなり高い地位にいると予想できる。

 年齢は七十歳を超えていることは確実。
 長く伸びた白い髭が特徴的な人物である。

 柔和な顔をしているが、性格までは分からない。

 竜国商会からは、ルビン・ログレム総長が来ている。
 彼は竜国商会のトップだ。

 こんな豪華な顔ぶれの中で、僕やソウラン操者のようなペーペーがいること自体おかしいのだけど……いや、ソウラン操者はおかしくないのか? その辺はよく分からないけど。

 この会議は竜国の秘密中でもトップシークレットの部類に入る。
 なにしろ会議に名前がないのだ。ただ。「会議」とだけ呼ばれている。

 僕がこれに参加したのは今日で二回目。
 この一年間で、五、六回の会議が行われているらしい。
 ひと月おきくらいの頻度だろうか。

 会議の目的は、旧魔国首都にいる月魔獣の支配種について。

 過去、何度も調査のために竜を派遣したが、いずれも未帰還となっている。
 唯一の帰還例がシャラザードというのがアレだ。阿呆すぎる。

 僕が指令で忙しい時に勝手しやがったアレが、一番重要な情報をもたらしたことになっている。

「今日は月戦隊つきせんたいのメンバーについて話し合うことにする。メンバーは希望制を取っているが、ほぼ未帰還となると思う。そのため、経験の豊富な竜操者を多めに入れ、戦力の増強を図りつつ、メンバーのスリムアップを提案していきたい」

 リドルフ副操竜長の言葉に、ルビン総長があからさまなため息を吐いた。

 月戦隊とは、支配種を打ち破るために結成する決死隊である。
 当然僕やソウラン操者、アンネラも含まれている。

 ただし、属性竜だけではたどり着くまでに打ち落とされて終わりなので、弾よけとして多くの竜操者の参加を見込んでいる。

「場合によっては、女王陛下の参戦もと伺いましたが、それは本当なのでしょうか」
 ルビン総長がうろんな目を大臣たちに向ける。

「無論、そのようなことがないよう、我々も陛下を説得しておりますが、参加することによって撃破が可能ならば、陛下は参戦も辞さないと申しております」

「竜国の綱紀は王がいるからこそ守られております。送り出す我々としては、それは賛同致しかねるのですよ」

「私どもも同じように説得しておりますが、陛下は勅令を出すことが可能ですので、最後は陛下のお心ひとつになるかと思います」

「それでは意味がありません。そうさせないためのあなた方でしょう」
 ルビン総長がテーブルをバンッと叩く。
 一瞬、大臣たちは眉をひそめた。

「陛下が参加するしないは後で論じればいい。いまは少しの時も惜しいのだ。今日の議題に移ってもよいかな」

「ですからそのメンバーの中に陛下が入るのが拙いと言っているのです」
「だからそれはいま話すことではない」
「ならばいつですか?」

「まあまあ……双方意見はあるかと思いますが、ここは建設的に行きましょう」
 リギス教会長が場を取り成す。

 前回僕ははじめてこの会議に参加したが、そのときも凄かった。
 支配種を倒す作戦はすでにできており、それには複数の属性竜を導入する以外にないという結論も出ている。

 ただし、相応のバックアップがなければならず、そのことで揉めに揉めているのだ。

 操竜会、竜導教会、国、竜国商会の四団体のトップが顔を合わせて密談しているのである。

 互いに背負っているものがあるため、対立しても容易に譲れない。
 それがまた相手を刺激して、どうしても対立が表面化してしまう。

「ですが、リギス老。メンバーか決まらねば作戦が決まらず、訓練もできないのです。訓練結果から作戦の変更もあるやもしれません。なにをおいてもメンバー決定は最優先事項なのです」

 話が堂々巡りしている感じがするが、みな真剣だ。
 お互いに譲れないものがあるため、まるで子供の喧嘩のようになっているが。

「それでは一旦休憩にしませんか?」
 提案したのはソウラン操者だ。
 僕同様、意味のない会議に辟易していたのだろう。

「うむ。我は賛成じゃ。別室でお茶が飲みたいのう」
 リギス教会長は好々爺といった表情を浮かべて席を立った。

 それに釣られるようにして何人かが席を立つ。

「……ふぅ」

 会議が始まってすでに一時間以上。
 このまま荷物を持ってトイレにでも行こうかと考えていると、ソウラン操者が僕の方に寄ってきた。

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