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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 竜国が魔国に宣戦布告して、十日が経った。

 その間に何か進展があったかといえば、とくにない。
 僕は王都に行って、リンダと会った。

「王都は落ちついているようだね」

「そうね。魔国と戦争になってもなんとかなると思っている感じかしら。商品の値上がりはあるけど、大転移のせいで品薄になっている関係上、仕方が無いことだし」

「じゃあ、宣戦布告の影響は王都にはない感じ?」
「ないわね。かえって竜国が豊かになるんじゃないかって話しているわよ」

 たくましいな、王都の住民。

「それはまた……王都の住民は戦争に勝てると思っているのかな」

「こっちから仕掛けた戦いだし、そうなんじゃないのかしら。大転移で魔国はかなり国力を減らしたから、少なくとも戦争になっても王都は無事だってみんな思っているみたいね」

「なるほど。でもリンダは少し違う考え? 何となくだけど、人ごとみたいに話しているんだけど」

「わたし? わたしはあれよ。戦争は起こらないって思っているもの」
「期日までに魔国が降伏するってこと?」

「歴史ある大国が一戦もしないで降伏するはずはないとみんな思っているようだけど、どうかしらね」

 僕も一戦してから和平の使者を送るかもと思っていた。
 竜国としては緒戦でも、魔国は総力戦。

 ただの一戦だけど「魔国は意外とやるかも?」と思わせて、和平の条件を少しでも有利に運ばせるわけだ。

 だがリンダはそうじゃないと言う。

「魔国はあと数日で議会が始まるんだっけ?」
 僕らはいま、慣例に従って魔国と言っているが、今はもう、純粋な魔国ではない。

 魔国はすでに商国から人を受け入れて、政治に関与させている。
 魔国の政治的決断が、商国の利益を保証する形で運営されても仕方ないところまで来ているというのが、もっぱらの噂だ。

「そうね、第一回会議……その時論議されるでしょうけど、きっと降伏ね。だって、魔国は軍隊をまったく呼び戻していないもの」

「呼び戻してないって……ああ、そうか。陰月の路か」
「そういうこと。少ない軍隊をさらにわけて、残っている町に配置しているのよ」

 魔国はここ数年で大きく兵力を減らしてしまった。
 商国に攻め入った軍隊はシャラザードが壊滅させたし、技国戦でも竜国戦でも魔国は負け続きである。

 兵の数もかなり減ってしまっていて、月魔獣対策のためにほぼ全軍が陰月の路に張り付いた状態だという。

 リンダはその辺の情報を商人仲間から聞いている。
 そして魔国の軍隊が一向に移動する気配がないことを掴んでいた。

 来月が始まったら戦争開始。
 竜国軍は国境を越える。

「そうか。移動の日数を考えれば、そろそろ動いていないとおかしいのか」

「そういうこと。だから降伏は揺るがないと思うのよ。あとはどう影響力を残すかで調整しているんじゃないかしら。でも、それは無駄よね」
「どうして?」

「竜国も馬鹿じゃないってことよ。商国の影響力を完全に排除したくてしょうがないのよ。だからかなり苛烈な要求をすると思うもの」

 商人を追い詰めるのは下策と言われているが、今回ばかりはその限りではないだろうとリンダは言った。
 何しろ、国政の中に入り込んでくるような者たちが、真っ当な商人とは思えないと。

「なるほどね。たしかにそうだ」
「商人が政治に口を出した先はああなのかと思うとぞっとするわ」

 リンダは商人の目で物事を判断している。リンダが権力に興味をもたなくて、なんとなくホッとしている自分がいる。

「じゃ、いい感じにおわりそうだね」
 戦争は回避され、商国は排除される。

「あくまでわたしの予想だけどね。……そう言えば、あなたはどうして王都に? 月魔獣はいいの?」

「操竜会に呼ばれたんだ」
「……へえ。戦争が近いからかしら」

「どうだろ。竜操者には順次招集がかかるって言っていたから、違うかも」
 伝達事項だけならば、わざわざ呼び寄せることもない。

「だとすると大転移絡みかしらね。陰月の路付近では手が足らないとは聞いているけど、大攻勢でもかけるのかしら」

「分からない。どうせ聞かされても発表されるまでは秘密だから」

「そうね。それに魔国との戦争もこれからという時期に、別の何かを始めることはしないでしょうし、いまは何かの準備中なのかしら」

「そうなのかな」
 実際僕も、なぜ呼ばれたのか分からない。

 楽園かもしれないし、大転移かもしれない。もしかすると魔国かも。

 ただ、〈影〉の活動として行ってきたハリム捜索については、一旦保留するということが正式に決まった。

 現在、禁制品の栽培地は全て焼却。精製工場も破壊済み。これだけでかなりの成果だ。
 行商人も禁制品を輸送しているところをすべて逮捕している。

 関わった者たちはほぼ全員捕まえたか処理済みなので、あとは張本人のハリムだけ。
 奴がどう動こうとも、ハリム商会には監視の目が付いているので、何もできない。

 そのため、捜索の優先順位が下がったのだ。

「それじゃ、あなたはしばらく王都にいるのね」
「うん。何かあれば操竜会に連絡をくれれば会えると思う」

「分かったわ。わたしももう少し王都でやることがあるから、お互い何かあれば連絡しましょ」
「うん」
 僕はこうしてリンダと別れた。

 僕は招集の期日まで緩やかに過ごし、操竜会へと足を運んだ。


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