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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 ソールの町で偶然、アンネラと会った。
 いや、偶然とも言えないのかもしれない。
 いま、竜国とカイルダ王国をつなぐ経路は定まっていない。

 カイルダ王国への出入りは、僕が開けたトンネルしかないわけで、そこを使うと必ず南の海へ出る。

 そこから山脈ぞいに海上を進み、技国領を抜ける一番近いルートだと、ソールの町が一番利用しやすい。
 ゆえにアンネラもこの町を頻繁に使っているのだろう。

「レオン先輩、カイルダ王国の各領主様たちの了承が得られたので、作物の栽培を始めるんですよ」

「早いな。もうそこまで話が進んでいるのか」

「ええ、許可が得られなかったら、王領だけでもはじめると言ったら、各領主様方も賛成したみたいですね」

 竜国が提示した条件が破格だったらしく、王太子が持ち帰った話で王領はすぐさま賛成。
 これだけでもかなりの効果が期待できるが、他の三つの領も賛成したらしい。

「破格って……どんな条件を提示したの?」

「種になる作物はこちらから持ち込みで、人員も派遣して栽培までやるんですけど、出来た作物は竜国が買い上げるという話らしいです」

「竜国が人も物も出して、場所だけ借りて栽培するわけか。それでできあがった作物は、カイルダ王国のものとなると。買い上げるって、そういうことだよね」

「大転移で大量の食物が必要になるので、一日でも早く開始したいらしいんです。ですから私も毎日いろんなものを運び込んでいるんですよ」

 農作業に必要なものだけでなく、人が住むのだからと、物資を運び入れる量が凄まじいものになっているらしい。

 ちなみに王国に向かう人員は、竜国の北部から避難してきた人や、希望者を募った中から厳選している。

 それでも希望者が膨れあがって、整理が大変だとか。
 いままさに、カイルダ王国へ移住ラッシュがおきているそうな。

「古代語を話せないから、現地の人と交流は難しいだろうに」
「もともと同じ人種ですから、何とかなるんじゃないかってみんな思っているようですよ」

「なるのかな?」
「さあ」

 カイルダ王国は、王領以外にも僕が最初に到着したレスター領がある。
 それにナルトニア領とザトク領を加えた、四つの領で成り立っている。

 僕は会話が成り立たないので、文化の発展度合いは理解していないが、ロザーナさんから聞いた話では、感覚は僕らとそれほど変わらないらしい。

 つまり言葉の壁さえなんとかなれば、意外に早く打ち解けられるのではなかろうか。

 立地的な不利はあるものの、開拓精神を持つ者には、なにをおいても向かってみたい新天地なのかもしれない。

「……あっ、荷物の積み込みが終わったようです。もう行かなきゃ。それじゃ、レオン先輩。また会いましょう」

「ああ、アンネラも気をつけて」
「はい」

 そうは言ったが、あまり心配していない。
 ターヴェリならば、よほどの事がない限り、切り抜けるだろう。

 属性竜の強さは、小型、中型竜を寄せ付けない。基本的に無敵だ。
 それだからこそ油断や奢りが出るかもしれない。

 というわけで、最近は中型竜すらたどり着けない高度まで上昇してから移動することにしている。

 アンネラもあっという間にもの凄い高さまで上り、空の彼方に消えていった。

 僕もここで情報を集めたあとは、魔国領へ行く予定だ。
 出発は明日の朝。
 それまでに〈影〉と接触して……などと考えていたら、飛竜がけたたましく飛び込んできた。

「ん? 緊急かな?」
 通常、飛竜が町に降り立つ場合、自分の姿を見せる意味と、敵意がないことを示すために上空を旋回する。

 それを省略したということは、なにか起こったのである。

 町に出かけようかと思ったが、この竜の広場で待っていることにした。
 竜操者が集まる場所にいれば、緊急の情報はすぐに入ってくる。

 もし、手が空いていれば、他の町や村へ伝言を届ける必要もでてくる。
 周囲の竜操者も手を休めて注目している。

 少しして、誰かが竜の広場にやってきた。

「おい、聞いてくれ」
 それはよく通る声だった。

「どうした?」
「何がおこった?」

「今日……いや、昨日か。昨日、王都で発表があったんだが」
 走ってきたせいか、男の息がそこで切れた。だれかが「文官はこれだから」とか、「早く言え」と先をせかした。

「聞いてくれ。竜国が魔国に宣戦布告した」
 息を整えて、男は一気に言い切った。

「なんだと?」
「宣戦布告って……ちょっと前まで魔国と竜国は戦後処理の会談をしていたじゃないか」
「賠償額が決まったって聞いたぞ」

 竜操者たちが口々に言う。僕も驚いた。
 今さら魔国と戦争しても、何も得るものがないだろうに。

「おい、もっと詳しく教えろ」
 だれかが詰め寄った。

「分かった、分かったから、静かに聞いてくれ。まだこれは、王都で発表されただけなんだ」
「いいから早く」

「せかすなよ……とにかく発表されたのは三つ。一つは、竜国が魔国相手に宣戦布告したこと。これは、魔国の了承があれば即時開戦となる」

 なるほどと僕は思った。
 いきなり攻め込んだ場合、緒戦から快進撃を続けることができるが、相手国の憎悪を引き出してしまう。

 相手国が戦争に同意すれば違う。
 家を焼かれたり、知人が殺されたりしても、その憎悪は守ってくれなかった自国の王に向かう。
 戦争を受けたのだから、しっかりやれというわけだ。

「他には?」
「まだあるんだろ?」

「そうだ。二つ目は、魔国が戦争を回避する手段の提示だ。魔国が一定期間内に降伏し、竜国の支配を受け入れる場合は、宣戦布告そのものが無効になる。その期日は今月の終わりまでだ」

「今月はまだ始まったばかりだぞ。意外とあるな」
「他には? 三つと言ったよな。他には?」

「ああ、次が最後だ。三つ目の発表だが、魔国が降伏を受け入れた場合、魔国は竜国に従属し、竜国の一部となる。魔国領は新しい竜国の領土となって、竜国の制度が導入される。王家その他は旧魔国領を離れ、そこには新しい領主が派遣されるって感じだ」

「魔国はそれを受け入れろというわけか。だが、王族を魔国領から追い出すのか?」
「内乱の火種になるからな。致し方ないだろう」

「それを魔国が受け入れるのか?」
「だからって、竜国と戦うと?」
「勝てる見込みがないのにか?」

「そもそも、竜国は魔国領を欲しがってなかっただろう」
「統治するのに莫大な金がかかるからな」

「だったらなんで今頃?」

「「「カイルダ王国かっ!!」」」

 魔国が竜国領になれば、カイルダ王国とは国境を接することになかと噂し合った。

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