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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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「レオンくん、お待ちしておりましたわ」
 アンさんがすぐに駆け寄ってきてくれた。

「僕から話があるんですけど、その前に聞いていいですか?」
「なんでしょうか、レオンくん」

「この前の襲撃者をおびき寄せる件です。準備はどこまで進みましたか?」

「かなり具体的なところまで決まりました。……内緒の話になりますので、ふたりだけで話せる場所に参りましょう」

 アンさんに連れられて、作戦会議室に向かう。
 入口を守る衛兵がいるが、僕とアンさんがここに入る姿をどう見ているのだろう。

 なんとなく気になってチラ見するが、アンさんに動じたところがない。
 あまり気にしていないのか、慣れているのか。

「ではレオンくん。作成の詳細を発表しますわ」
 二人っきりになると、アンさんは一枚の地図を出してきた。

「これは……陰月の路付近ですか」
「はいそうです。何もない荒れ地が広がっているので、簡素な地図に見えると思います」

「所々にあるのは……林ですか。それほど大きくありませんね」

「そうなのです。小規模な林が十ほど点在しています。ここを敵の隠れ家にしようと思います」

 今回罠を張るために、相手側にも有利なポイントを残しておくべきだと考えたアンさんは、敵が隠れられそうな場所が複数あるポイントを探すことにしたという。

 地図とにらめっこを続け、ようやく発見したのが、いまテーブルの上に広げてある場所らしい。

 アンさんは、地図の中央に四角い石を置いた。

「だいたいこのあたりに『前線基地』を作ります。といっても、もう作り始めているのですけど」

「荒れ地と林の中間くらいですね」

「はい。現地を見に行きましたが、草原でもなく、まばらに草が生えているだけの場所でした。ここに『前線基地』を作って、敵に攻撃させます」

 林から適度に離れ、それなりに見晴らしがよい場所だ。

 アンさんの作戦はこうだ。
 駆動歩兵隊を『前線基地』に集め、日中は荒れ地で訓練をする。
 夜に戻り、見張りを立てて就寝。それを繰り返すらしい。

「敵は林のどれかに隠れて、タイミングよく月魔獣をけしかけに来る……ですか」

「その通りです。駆動歩兵隊を集めるときに確認しましたが、やはりわたくしたちが狙われているようです。成功、失敗を含めて、月魔獣の怪しい動きは多数確認されました」

「そうですか。だったら、今も気が抜けないですね」

「はい。しかも日が近いかなり離れたところでも襲撃があったりして、敵は単独ではないのかもしれないと考えています」

 複数の犯行か。
 考えてみれば、月魔獣をけしかけると言っても、失敗することもある。
 途中で月魔獣に追いつかれた場合だ。

 逃げ遅れれば死ぬ。死ななくても、大怪我をするかもしれない。
 複数の「逃げ役」を用意していることも十分考えられる。

「いつ頃、開始できそうですか」
「集まるまでにあと十日ほどかかります。『前線基地』も大きなものを作らねばなりませんし、そのくらいはかかるようです」

「でしたら僕は、周辺の月魔獣を掃討しておきます。掃討が十分でないと、数十体の月魔獣を呼び込まれるかもしれませんし」

「ありがとうございます。わたくしの話は以上なのですが、レオンくんも何か話があるとか」

「そうなんです。魔国が商国の軍門にくだったようです」
「……?」

 意味が分からなそうな顔をした。
 噂を聞いた当初、僕も意味が分からなかった。

 僕はリンダから教えてもらった話をアンさんに語った。

「……というわけで、借金で首が回らなくなった魔国が、全商人にそっぽを向かれるか、商国の支配を受け入れるかを天秤にかけたみたいなんです」

「魔国がそんなことになっていたなんて……」
 さすがにアンさんも、ショックを隠しきれないみたいだ。

 聞いたところ、技国から話は入ってきていないらしい。

「僕も意外でした。国家間のことは分かりにくいですし」
「国が借金をすることはよくあります。技国は商国に貸している方ですけど」

 その辺は互いの信用につながるため、返済を迫ったり、要求を突きつけたりしないらしい。

 技国の場合、技術の使用料を商国から支払ってもらっているようで、技術を完全に売り渡すのではなく、少しずつ搾取しているとか。

 似たようなことを商国が魔国にやっていたのかもしれないとアンさんは言った。

「商国もよほどうまく隠していたんでしょうね。女王陛下が事前に知っていたら、何か対策を採ったと思いますし」

 というか、ピンポイントで商国の邪魔をしたと思う。
 これは借金の総額を魔国側が把握していなかったのではなかろうか。

 証書を突きつけられて初めて驚いた……そんなこともあるかもしれない。



 その後僕は、月魔獣を狩りつつ、ハリムについての情報を集めて回った。
 ハリムはいま、完全に地下に潜ってしまい、竜国の警戒網をもってしても痕跡すら見つかっていない。

 ハリムが本格的に姿を消したことで、どこかで何かを企んでいると僕は考えている。
 あの五会頭がただ逃げるために身を隠しているとは到底思えないのだ。

 僕ひとりで見つけるのは限界があるし、一度女王陛下にお伺いをたてようかと思っている。

 栽培地と工場の破壊についてはとっくに報告してあるので、あとはハリム本人だけなのだが、これは長期戦になるかもしれない。

 そんなことを考えていたら、アンさんの準備が整ったと知らせがきた。

 隙を見せて誘い出し、一気に叩く。
 その作戦が、もうすぐスタートする。


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