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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 リンダの話を聞いた。

 最近の商国の動きについて、僕も色々思うことがあった。
 以前から、商国は裏でこそこそと動いている。

〈影〉としてどこかに潜入して、商国の策謀を知ることも多かった。
 ゆえに僕だって、商国の動きはかなり警戒していた。

 だけど僕の知らないところで、商国はもっと手広く陰謀を巡らせていたわけだ。
 正直脱帽する。

 以前父さんが、五会頭には気をつけろと言った意味も分かる。
 こうして深く関わると、五会頭の手広さがよく理解できる。

 頭がこんがらかりそうなので、商国が関わっていそうなことを整理する。
 あくまでも僕が知っていることだけだけど。

 まず、僕の指令に関わること。禁制品のバラまきだ。
 これはハリムが主導していて、魔国や技国の村などで被害が出ている。

 ただしそれは氷山の一角。
 本当の狙いは『楽園』。
 中毒性のある薬を使って骨抜きにするのではないかと思われる。

 それには大量の薬が必要になる。
 廃人にするのではなく、中毒患者にして長く支配下におくために、人里離れた村で実験を繰り返していた。

 そもそも見つかったら捕まるようなものを作る工場さえ持っていたのだから、大胆というか、怖い物知らずというか。

 このことで商国の目的は、楽園の支配にあると分かった。

 二つ目。それは『楽園』探し。
 これはかなり前から複数の五会頭が関わっていることも分かっている。

 ついに暗号を解読し、今まさに楽園に到達しようとしている。
「……できないけどね」

 洞窟の出口はソウラン操者にお願いして潰してもらった。
 いくらがんばっても、あの洞窟からはたどり着けないのだ。

 つまり用意した禁制品は無駄になる。いい気味だと正直思う。
 しかもまだ、洞窟の出口が塞がれていることを知らないはず。
 真実を知ったときにどのような顔をするのか見物だ。

 そして三つ目。竜国と技国の仲を引き裂こうとする勢力がいる。
 これはまだ商国が関与している確証はないが、消去法から商国以外にあり得ないと思っている。

 技国からやってきた駆動歩兵隊を潰し、本国に帰らせる作戦。
 竜国と技国の仲が悪くなれば、政治的な共同戦線が張れなくなる。

 商国は明確な軍隊を持たない代わりに、情報戦争や、政治戦争、経済戦争を挑んできている。
 そのとき両国が仲違いしていれば、足並みが揃わない。
 商国の勝利は容易いだろう。

 その手に乗るものかと、アンさんと組んで、その陰謀を絶対に潰してやるつもりだ。

 そして四つ目。いまリンダから聞いた話。
 商国が借金を理由に魔国を傘下に収めようとしている。

 魔国も首都を月魔獣の支配種に落とされなければ、どうにでも引き延ばせたのだと思う。
 だが、富と権力が集中していた首都が落ち、国中の食糧と金が不足した段階で、借金の証書だけは残っている。

 しかも食糧難はこれからだ。
 いますべての商人にそっぽを向かれたら、国民全員が飢える。

 議会を設置し、商国の者がそこに入るくらい、国がなくなることに比べたら、些細な問題なのかもしれない。

 弱みにつけ込んだ商国のやり方は非難されるものだが、竜国だって他国に無償で援助する余裕はない。

 これもまた、魔国が国の舵取りを誤ったゆえの結果なのだろう。



「ねえ、王都に行きたいのだけど、いいかしら」
 ひとりで考え込んでいたら、リンダからそう提案された。

「いいよ。でもどうして? こっちの商売は大丈夫なの?」
 王都方面は、ヨシュアさんが担当しているはず。

 リンダは竜国の南から技国までの南方方面。
 父娘でうまく南と北の商業圏を分割している。

「今回の魔国の件で、対策を練らないといけないのよ」
 竜国はいま、竜国商会を発足させ、国内のみならず魔国や技国にもその影響力を広げている。

 ここで魔国に何らかの規制が入り、流通にストップをかけられると困ると、リンダは言った。

「それだけじゃないのよ。そのうち魔国から何らかの発表があるでしょう。それを見れば、今後のビジョンが分かるわ。でもそれだと遅いかもしれないのよ。だから、先手を打ってみるつもり」

 商国が関わるならば、発表された時点で手遅れとなることも考えられる。
 手を予想して、対策をたてておく。そうリンダが言っている。

「たしかに商国が絡むと、後手になったときに厳しいからね。分かった。僕はすぐに立つけどいい?」

「ええ。いますぐでも大丈夫よ」

 そういうわけで、僕はリンダを連れて王都に向かうことになった。

 実家に戻った早々出て行くことになるが、作業場にいる父さんはもとより、店番の母さんすら、動じることなく「あらそうなの。大変ねえ」で済んでしまった。

 家族の反応をみて、もう少し頻繁に家に帰ろうと心の中で誓った。



 その日の夜に王都に到着し、リンダを下ろした。

 ついでに王都の〈影〉にハリムの事を尋ねたが、最近は現れていないという返事をもらった。やはり、山脈の中に消えたのが本人であったのだろうか。

 王都ではとくにすることもないので、すぐに陰月の路に飛んだ。
 アンさんとの約束まではまだ期日がある。それまで、なるべく多くの月魔獣を狩っておこうと思った。

 アンさんとの作戦では、駆動歩兵隊をどう集めるかがネックになっていた。

「部隊が襲撃を受けて壊滅したことで、軍の再編。そして再訓練をすると告知するつもりですわ」

 それならば一カ所に集まってもおかしくない。
 ただし、どこに集まるかとか、どういう訓練をするのかなどは事前に決めておかねばならない。

 さらに「集まれ」と言われてすぐに集まれるものでもない。
 駆動歩兵隊は、いまも月魔獣と戦っている。
 勝手に持ち場を離れることも難しい。

 その辺の根回しをアンさんがしてくれたので、結果を聞きたかったのと、駆動歩兵隊が去ったあとで困らないように、周辺の月魔獣をできるだけ処理しておきたかった。


 シャラザードが嬉々として月魔獣を蹴散らしたあと、僕はアンさんがいる『前線基地』に降り立った。


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