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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 天蓋てんがい山脈は魔国領の西側すべてに存在している。
 基本的に人跡未踏の地という認識でよいが、一部の例外がある。

 なんとか人が住める場所も存在しているのだ。
 ほんとうに僅かな場所であるが。

 町と呼べるものは天蓋山脈の中にはない。
 せいぜいが村。だが、それすらも過分な表現であるといえる。

「これは集落かな」

 戸数でいえば、十に満たない。
 山からわき出る水があることで、少数の人が暮らしていける。
 そこはそんな場所だった。

 シャラザードが降りられるような広い場所がないため、僕だけがそこに来た。
 シャラザードには、好きにしていいと言ってある。

 この集落は完全に竜国の支配下に入っていて、付近を通る人々の監視の役目を担っている。

「ハリムが消えた?」

〈影〉を通して、このような集落すべてに話を通してあった。
 商国の者とおぼしき連中が通ったら記録しておくようにと。
 とくにハリムの特徴を伝え、この者が来たら、必ず知らせるように伝えてある。

 魔国に本拠地を置いているハリム商会の動きは、しばらく前から監視中である。
 だが、会頭のハリム自身はそこにいない。

 天蓋山脈に向かったというのが一番新しい情報だったため、とくに天蓋山脈の監視を強化していた。

 この集落でハリムらしき集団を見つけたと連絡が入り、早速向かったが、すでに見失った後だという。

「呪国人の中には、勘の鋭い者がいるからなぁ」

 ハリムが周囲に呪国人を置いているのは周知の事実である。
 能力は不明であるものの、常に身近に置いておくことから、ハリムがかなり信頼していると考えられている。

「魔国側に戻った形跡はないので、天蓋山脈の中へ分け入ったと思うのですが」
「そうなるともう、上から捜索するしかないか」

 目立つので、できればやりたくない。
 といっても、天蓋山脈は天然の迷路のようなものだ。

 通行できる場所が限られているため、山に詳しくない者が入っても、思った場所へたどり着けないことも多い。

「この先に裂け目がありますので、隣の山へ移るのでしたら、山を二つ迂回しなけれななりません」
「それは大変そうだ」

 となるのである。

 ちなみにハリムが消えたのは、その裂け目の近くらしい。
 引き返した形跡はないようなので、裂け目を渡ったか、降りたのか。
 どちらにせよ、行動力のある会頭である。

 集落の人に礼を言い、僕はひとりになって考えた。

「ハリムの目的はなんだろう」
 それが分かれば、行き先も分かるかもしれない。

 ハリムは禁制品の栽培地が燃やされたこと、精製工場が破壊されたことを知らない。

 つまり、あの薬がこれからも流れる前提で動いていることになる。
「いや、相手は五会頭だ。そういう決めつけはよくない」

 兆候がなくても、供給元が絶たれたもしくは、工場がなくなった前提で動いていることも考えられる。

 何しろ、すでに中毒者は出始めている。警戒してしかるべきだ。
 村に売り始めた段階で、雲隠れできる準備が終わっていたとしても僕は驚かない。

「さまざまな前提が崩れると、もう何をどう探していいのかも分からなくなるな」

 すでに十分な量の薬を確保していた場合、雲隠れしても問題ない。
 そうでなければ、この辺りに来たのも、姿が見えなくなったのにも理由があるはず。

「いや、これこそ擬態と考えることもできるか」

 ハリム本人を見たというわけではない。
 それらしき人物というあやふやなものだ。

「あー、頭が痛くなってきた」

 僕は常日頃から騙しあい、化かし合いをしているわけじゃないのだ。
 裏を考えるのは得意ではない。

 そして相手は五会頭。裏の裏を読まねばならないときもある。
 それを急に考えろと言われても、困ってしまう。

「シャラザードに乗って空から探すのは拙いだろうし、地道にいくか」

 さも何かを探していますと上空を飛び回れば、さまざまな憶測を呼ぶ。
 人がめったに入らない山の中だからこそ、ひとたびシャラザードの姿が見つかれば、噂が飛び交う。

 夜間ならば見つかる可能性は低いが、それでは見つかるわけがない。
 ゆえに、ハリムが消えたと思しき裂け目を中心に、僕は独力で捜索を開始した。



 結局、二日ほど捜索したが、何も見つけることはできなかった。

 諦めて、アンさんの元へ戻ろうとしたところ、シャラザードが空腹を訴えた。
 そこで一度ソールの町に寄り、それから北へ向かうことにした。

「シャラザード、我慢できないのか?」
『うむ』
「なにが『うむ』だよ」
 かなり偉そうだ。

 聞いたところ、僕と別れてからは、天蓋山脈の中を縦横無尽に飛び回っていたらしい。
 奥地へと翼をはためかせ、かなり遠くまで向かったのだとか。

 そのせいで腹が減ったというのだから、救われない。

「シャナ牛は、手続きさえすればどこの町でも手に入るけどさ」
 あとでリンダの所へ請求がいくだけなので、竜操者としては楽だ。

 そういえば、最近リンダとも会っていないなと思いつつ、ソールの町に降り立ったところ、重大な情報が飛び込んできた。

「魔国が商国の軍門にくだったんですか?」

 商国が魔国を支配したらしいと噂が飛び交っていた。
 どういうことだ?


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