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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 僕とアンさんはいま、作戦会議室で密談をしている。
 外には警備の人がいるので、話が他に聞かれる心配もない。

「わたくしでしたら、こうしますわ」
 そう前置きして、アンさんは少しだけ悪戯っぽい顔を僕に向けた。

「月魔獣をけしかけて来るのでしたら、それをしやすい環境を整えてあげればいいと思うのです」

「つまり、囮になるのですね」
「はい。わたくしは駆動歩兵隊が狙われているように思えます」

 竜国の状況は分からないが、駆動歩兵隊に限って言えば、未遂に終わったものを含めて、複数の被害があったことを話してくれた。

「多いですね。これだけ見ると、月魔獣が駆動歩兵隊を狙っているようにも見えます」
「やはりレオンくんもそう思いますか?」

「はい。月魔獣の出現地域から離れたところで、これだけの襲撃があるのはおかしいです」
 五つの部隊で、平均二回の襲撃が確認されている。

 二回程度ならば多くないと考えるかもしれないが、通常ならめったに襲われることのない場所である。
 合計すると、駆動歩兵隊が襲われたのは十回だ。これは多い。

「そこでわたくしが考えますに、駆動歩兵隊を集めてしまって、襲いやすくしてみたらどうかと思うのです」

 一部隊が壊滅して残りは四部隊。
 それを一カ所に集めて襲いやすくするとアンさんは言っている。

 もし商国が関与していたと仮定する。
 この襲撃の意図は何か?

 技国の戦力を減らしたいのではなく、竜国との仲を裂きたいのではなかろうか。
 すると一番いいのは、このような軍事的協力関係を解消させること。

 駆動歩兵隊が技国に戻れば、竜国から技国に貸し出している竜も引き揚げざるを得ない。

 両国はもとの状態に戻るわけだ。
 商国はそれを狙っている可能性がある。

 だとしたら、襲いやすくしてあげれば、飛びつくのではとアンさんが思うのも分かる。

「それにですね。もし駆動歩兵隊が一カ所に集まった状態で襲って来たならば、わたくしたちの予想が当たっていることになりますわ」

 これでもし実行犯を取り逃がしたとしても、商国の関与は疑いない。
 妨害があることを前提で話を進めれば、両国の関係にヒビが入ることもないだろうとアンさんは言った。

「つまり襲撃がなければ偶然で片付けられるし、襲撃されれば商国の関与は確定。その時点で、敵を捕まえることができても、できなくても両国の関係にヒビを間に入れることはできなくなる……そういうわけですか」

「その通りですわ」
 アンさんはにっこりと微笑んだ。

「だとすると、これは秘密裏に進めないと行けませんね」
「はい。技国はわたくしが先導できます。というよりも、わたくしは誰にも知らせません。竜国はどうしますか?」

「そうですね。少し考えてみます」

 これは大規模な罠になりそうだ。
 こういう場合、操竜会そうりゅうかいに相談するのが一番だけど、あそこは竜操者だけが存在しているわけではない。

 事務をする人や、営業や広報など、竜操者のイメージアップを担当する人たちもいる。
 他にもシャナ牛をはじめとする食事関連の仕事をする人や、竜の世話をする人など、多種多様な人が働いている。

 彼らの中に商国の関係者が紛れ込んでいる可能性もあるし、大金で情報を売り渡す人もいるかもしれない。

 話を漏らすならば、相手をよく吟味しなければならない。

「計画はわたくしが立てますわ。実行はなるべく早い内にと思うのです」
「分かりました。でしたら、竜国は直前まで内緒にしておくのはどうでしょうか。普段通りの動きならば、商国の関係者が潜入していてもバレませんし」

「うふふ……とするとこれは、わたくしとレオンくんだけの秘密ですわね」
「そうなりますね」

「分かりました。それで実行しましょう。近いうちに理由をつけて駆動歩兵隊を集めます」

「僕の方は襲撃に備えて、竜たちを配備すればいいんですね」
「いいえ、逆です。竜国の人たちをなるべく離してもらいたいのです。そうすれば、襲撃しやすくなりますから」

「でも、それだと月魔獣の襲撃があったら、技国だけで対処することになってしまいます」

「わたくしはレオンくんを信用しています。月魔獣が来ても、レオンくんとシャラザードさんがいれば大丈夫です」

「そこまで信用されているならば、分かりました。このこと、シャラザードにも伝えておきます」

「うふふ。よろしくお願いしますね」

 こうして僕とアンさんは、月魔獣の襲撃について、秘密の作戦を話し合った。
 これに商国が関与しているのかどうかは、まだ分からない。

 それをあぶり出す作戦は、もう少ししてから始まる。

 その間にと、僕とシャラザードは周辺の月魔獣を狩りつつ、天蓋山脈に向かった。

 ハリムの捜索と罠の設置。
 まだまだ僕に静かな時間は到来しそうにないようだ。


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