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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 シャラザードに乗って、陰月の路を目指した。

 途中、竜操者が使用する宿泊施設に降り立ち、情報収集をした。
「襲撃が相次いでいるんですか?」

 教えてくれた竜操者の人は、先月の中頃から施設が月魔獣に襲われる回数が増えたと話してくれた。

「大転移で陰月の路が移動したせいでしょうか。それとも、魔国にいる支配種の影響とか?」

「それがよく分からないんだ。施設はもとから十分な安全マージンを取っている。年に一度や二度ならば、月魔獣の姿を見かけても問題ないが、こう立て続けに出てくるとな」

 巡回する竜操者の数は増えているものの、それ以上に月魔獣の姿が確認されるため、いまもまだ巡回が追いついていない。

 最初、月魔獣の襲来が増えたときに「巡回が間に合わないから」だと思っていたが、集中して巡回し、この一帯は安全になったと太鼓判を押した直後でも現れるらしい。

「これはおかしいぞ」とみなが言い始めた矢先に、今回の襲撃が起こったようだ。

 その竜操者が言うには、いきなり大型種がやってきて『前線基地』に襲撃をかけた。
 気付いた頃にはもう遅かったらしく、十分な連携もとれないまま各自が迎撃をはじめた。

 もちろんそんなやり方で大型種が倒せるわけがない。
 飛竜が他の施設に助けを求めに向かって、大量の竜が駆けつけたときにはほぼ戦闘は終わっていたという。

 動ける者は逃げたが、そうでない者は自らが戦うことで、月魔獣をその場に留めていたらしい。

 増援の到着によって大型種は仕留めることができたが、今までおかしいと感じつつもその日伸ばしにしていた異常襲撃を本格的に調査すべきという声が操竜会にも届いたらしい。

「ではその被害に遭われた人たちは、いまどこに?」

「いくつかの施設に分散して収容している。怪我をした者は町に連れて行っているが、それはどこの町だから分からない」

「分かりました。ありがとうございます」
 いくつかの宿泊施設の名前を聞くことができた。

『どうしたのだ? 思い詰めておるようだが』
「これまでにない、月魔獣の異常襲撃があったらしいんだ。何が原因なんだろう」

『ふむ……月魔獣はもともと人を襲うものであるぞ』

「そうなんだけど、理由もなく長距離移動はしないのが常識なんだよね。だからこそ陰月の路からどのくらい離れれば安全か、計算できたわけだし」

 もし今までと行動様式が違ってきたのならば、新しい線引きが必要になってくる。
 それは取りも直さず、人類の居住地が脅かされることにも繋がる。

『これからどうするのだ?』

「まずは、生き残った人がいる宿泊施設に行ってみようと思う。ここだと、個々の人たちの情報は入ってなかったし」

 誰が襲われたなどの情報は、ここに届いてなかった。
 アンさんがそこにいたのかは分からないため、生き残った人たちに直接聞いてみるしかない。

「場所は聞いたからすぐに行こう」
『心得た。それが終わったら月魔獣に復讐だな♪』

 シャラザードの声がうわずっている。
 最近、『楽園』関係でずっと陰月の路から離れていたからかもしれない。

「とにかく行くぞ」
 僕らは飛び立った。



 夕方近くになって、教えられた宿泊施設の一つに着いた。
 中は人でごった返していた。

「普段の状態しか知らないと、何があったのかと思うな」
 急に人が増えたことで、その世話をする人が増えたのだと分かった。

 人が増えれば物資が足らなくなる。
 それを運び入れる人が出入りしたことも、この混雑に繋がったようだ。

 ここは陰月の路からある程度離れているため、月魔獣に襲われることはない。
 だからこそ、一時的な避難場所に指定したのだろう。

 僕はヒマそうな人をつかまえて、今回の襲撃について話をきいた。
 ここでも前に聞いた内容以外に、新しい情報はなかった。

 やはり竜操者たちは正確な情報を早く届けることができるのだと感心したほどだ。
 そこで一旦言葉を切り、ついでとばかりに襲われた人たちの詳細について尋ねた。

「第三駆動歩兵隊ですか」

 竜国へやってきた駆動歩兵隊は、順番に第一から第五まで番号を振ってある。
 アンさんがいるのは第一。つまり、今回の襲撃を受けた中にはいなかったことになる。

 不謹慎だが、ホッとしてしまった。

 というのも、思ったよりも被害が大きい。
 第三駆動歩兵隊は三分の二が未帰還となり解散。

 生き残った駆動歩兵の半分が大破したらしく、無事だった者は、ほとんどいなかったらしい。
 第三駆動歩兵隊はそのまま技国に戻ることが決定されたという。

 竜の被害も深刻で、たかが大型種の襲来と思っていたが、かなり認識を改める必要がありそうだ。

 そしてここでも月魔獣の異常行動について話があった。
 これの原因を突き止めないかぎり、今後も被害が増えるだろうとみなの意見も一致していた。

「今回は無事だったけど、いつアンさんが被害を受けるか分からないな」

 アンさんだけ逃げてくれと言っても聞かないだろう。
 たとえ最初の襲撃を生き延びたとしても、部下をとりまとめて反撃するはずだ。

 いまぬか喜びしたところで、一月、二月後はどうなっているか分からない。

「やはり原因を突き止めないと……だけどどうやって」

 時刻は丁度夕食時。
 僕もみなと一緒に食事をもらった。

 駆動歩兵の整備をする人を見つけて、他の部隊がどこにいるか聞いてみた。
 アンさんのいる第一駆動歩兵隊は、ここからかなり離れた陰月の路の北側にいることが分かった。

「そっちに行ってみるか」

 竜操者たちのネットワークはかなり強固で、今回の襲撃についてはかなり広範囲に話が伝わっている。

 いずれアンさんの所へも話が行くだろうが、もし月魔獣の異常行動がここだけの話ではなかった場合、いつ襲われるか分かったものではない。

「……よし、行ってみよう」

 そう考えたとき、「襲撃だぁ!」という叫び声が聞こえた。
 まさか、ここへ!?


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