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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 昨夜僕は父さんと一緒に工場を潰した。
 問題はない。姿を人に見られることもなかったし、シャラザードに乗り込むときも町の外で行った。

 ソールの町に到着して、やり遂げた気持ちのまま眠った。

「……ん?」
 翌朝、目が覚めたとき、外が少しだけ騒がしかった。
 まだ朝の忙しい時間である。外の喧噪がここまで届いたのだろう。

「さて今日はハリムの捜索か。ハリム商会の人間を見つけて聞くのが一番早いかな」
 聞き込みをすれば、商会の人間は見つかる。

 そこからどうするか。
 やさしく尋ねるか、捕まえて尋問するかだが、禁制品に関わっていない者に手荒な真似はしたくない。

「ハリム会頭に会いたいと言って場所を聞くか、取り次ぎをお願いしてみようかな」
 居場所さえ分かれば、夜に潜入してもいい。

 出たと子勝負になるが、時間をかけると工場襲撃の噂が届くかもしれない。
 そんな感じで、行くとしよう。

 ハリム商会の人間を探しに天蓋山脈方面に向かおうと、シャラザードがいる竜舎に行った。

「……ん?」
 やけに騒がしい。
 どうやら何人かが集まって、大声で話をしているようだ。

「どうしました? 何かありましたか?」
 知っている竜務員りゅうむいんの人を見つけたので、聞いてみた。

「つい先ほど聞いたんですけどね。どうやら、月魔獣討伐の『前線基地』がひとつ壊滅したようなんですよ」

「前線基地って、技国の方式を取り入れた後方支援のあれですか?」

「そうですね。最近、月魔獣の活動範囲が広がっていたので、基地を後方に移動させようと決定した直後の襲撃だったようです。そこにいた竜操者や駆動歩兵がずいぶんとやられたとか」

「竜は月魔獣の接近に気付かなかったんですか?」
「急な襲撃だったようですね。速い速度でやってくれば、竜だって反応は遅れますし、最初にドカンときたら、対応できませんからね」

「ということは、襲ってきたのは大型種とか?」
「そうだと思います」

 もともとあった竜操者用の宿泊施設だが、陰月の路付近に多数用意してあった。

 ただしこれらはなるべく狭くし、最小限の人員での運用をしてきた。
 月魔獣の襲撃を考えて、あまり大きくしない方がよいとされてきたのだ。

 大転移後では、今までの拠点方式が通用しなくなり、技国が戦争時に行う移動型の後方支援を取り入れていた。

 兵も多数常駐できる簡易組み立て式の施設で、民間人もそれなりに雇用したと聞いている。
 さすが技国の技術だと思っていたが、それが襲撃されたらしい。

「……ん? アンさんはどうなっているんだ?」
 アンさんはいま、技国と竜国の親善のためと、最前線で戦っているはずだ。

 当初こそ被害が出ていたものの、駆動歩兵の底力だろうか。
 最近では有用な運用方法が編み出され、成果を出しつつ被害を減らしていると評判だった。

 駆動歩兵五体で月魔獣一体を相手に戦う戦法が正式採用されたと聞いた。
 今回の襲撃で多数の駆動歩兵に被害が出たと言っていたが、竜国に来ている駆動歩兵の部隊はそれほど多くない。

 とくに第一線で活動しているならば、アンさんの部隊である可能性が高いのだ。

「どうかされました?」
 その考えに至って呆然としていた僕に、竜務員が心配して話しかけてきた。

「その……」
「はい?」

「その、被害が出た駆動歩兵って、どこの部隊だか分かりますか?」
「いえ……この話も荷物を届けにきた竜操者が話していただけですので」

「そうですか……襲撃はいつのことです?」
「一昨日の晩と聞いています」
「分かりました……ありがとうございます」

 よろよろとシャラザードのところへいく。

『主よ、どうしたのだ? 顔色が悪いぞ』
「いや……なんでも……なくないよな」

『うん?』

「もしかしたら、アンさんの部隊に被害が出たのかもしれない」
 自分で言っていて、胸が締め付けられた。

『アンというと……我によく話しかけるおなごか?』
 僕は頷いた。

 リンダやロザーナさんと違って、アンさんはよくシャラザードに話しかけていた。
 シャラザードの返事は唸り声としか届かないが、それでもアンさんは返事があると喜んでいた。

「それで僕は今日……天蓋山脈に行って、ハリムって人を探さなくちゃならないんだ」
『ふむ』

「だけど、もしかするとアンさんがいま、苦しんでいるかもしれない」
 僕はどうすればいいんだろう。

 女王陛下からの指令は、ハリムを処理すること。
 だけど、もしアンさんに何かあったら……。

『主よ、何を悩んでおるのだ?』
「月魔獣にアンさんがいる隊が襲われたかもしれないんだ。でも僕には指令があって、そこに行くことはできない……」

 アンさんは無事だろうか。

『主よ』
「なに?」

『行くべきであるぞ』
「うん?」

『もし襲われたのならば助けに行くべきだ。そのアンとやらがいる所へすぐに向かうぞ』
「でも僕には指令が」

『主よ! 何をぐずぐず迷っておる! 主が行かねばだれが行くのだ!』
「……っ!? そうだよな」

『さあ主よ、我に乗るのだ。場所は分かるか?』
「陰月の路のどこかだから、北上しながら途中の宿泊施設で聞けば分かると思う」

『ようし、すぐに助けに行くぞ!』
「分かった! シャラザード、行こう」

『おうよ』

 僕らは目的地を陰月の路に変えて、大空に飛び立った。

「シャラザード」
『なんだ?』

「ありがとう」
『なあに、まったく問題ないぞ……ぐふふ』


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