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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 捕まえた商人がよほど演技に長けている場合を除いて、ハリムの目的もなんとなく分かってしまった。

 この禁制品を村々にバラ撒いた理由。
『楽園』探しとは別件かと思っていたら、妙なところで繋がっていた。

「用意周到というか、なんというか」

 さすがは『華蜜はなみつ』のハリム。花の蜜を扱う商売だけのことはある。
 今では禁止され、失われた技法で抽出した禁制品を作る技術を持っていたばかりか、工場のような大規模な抽出施設まで作ってしまうとは。

 しかも目的が楽園の住民を中毒患者にして操るというのだから、これを予想しろと言う方が無理だ。

 今回、楽園に至る洞窟が見つかったのが早かったからか、回天と大移転が早まったことでハリムの計画が狂ったのか知らないが、本来ならば秘密の人材だけで実験を繰り返し、僕らの知らないところで完成させていたのだろう。

 五会頭は、「そういえば最近話を聞かないな」とか「わが国で見かけなくなったな」となったときには、ロクでもない事をしている可能性が高い。

 監視は常にしておかなければいけない存在だろう。

「他になにか聞きたいことはあるか?」
 僕は首を横に振った。一応ハリムの居場所を聞いたが、知らないという。

 この商人は、何を聞いてもまともに答えるとは思えない。
 嘘交じりの話を聞くくらいならば、最初から聞かない方がいい。

「この商人に関してはもういいかな」

 僕の指令は禁制品ルートの壊滅だ。
 栽培地を破壊したし、この工場を破壊すれば、ほぼ成したと言える。

 あとはハリムを処理するだけだが、奴がどこにいるかは分かっていない。

「ならば俺はここを始末しておく。おまえは工場をやってこい」
「破壊するけど、音を出してもいいよね」

「構わんだろ。ここは秘密の工場らしいからな。それなりに民家から離れている」
「分かった。じゃ、行ってくる」

 闇に潜ったまま、工場に入る。見張りは全員処理してあるので、中はだれもいない。

 工場の中は、いくつかの機械が設置されていた。
 ほとんどが見たこともないもので、使用用途がまったく予想できない。
 材質は鉄で出来ていた。

「壁は漆喰だし、下は石畳。燃やすのは大変だしな」
 鉄だと燃え残る。大量の木材があれば別だが、焼却処分はできそうにない。

「よし、壊すか」
 魔道で一気にやることにした。
 狙いを定めて『闇鉤爪やみかぎづめ』を放つ。

 石畳に三本の影爪が出現し、直進する。
 ガギィと大きな音が工場内に響いた。

「どんな感じかな」
 近寄って見てみると、機械に大きな傷痕がついている。
 破壊度合いとしては、三分の一程度か。

「これならば数回やれば破壊できるな」
 音がかなり響くがしょうがない。

 僕は狙いをつけて、何度も『闇鉤爪』を放った。

 …………………………こんなものかな。

 機械の残骸ができた。完全に破壊されて、修復は不可能だろう。
 部品の再利用も難しいと思う。

「よし、これをすべての機械に放てばいいな」
 破砕音はもうしょうがない。壊すことを優先しよう。

 一時間かけて、工場内の機械をすべてぐちゃぐちゃにした。
 やりきったと思う。

「父さん、こっちは終わったよ」
 宿舎に戻ると、父さんの方も準備を終えて待っていた。

「ほれ、これ持て」

 縛り上げた商人を渡される。『闇渡り』で運べと言いたいらしい。
 僕は商人を闇の中に仕舞い、父さんと一緒に工場から脱出した。

 シャラザードに乗り込んで、ソールの町を目指す。

「このあとはどうするつもりだ?」
「ソールの町の〈右足〉に報告して工場関連は終わりかな。捕まえた商人もそのとき渡すと思う」

「俺が見つけた資料はこれだけだ。一緒に渡すといい」
「ありがと。これが終わったら、ようやくハリムを処理しに行けるよ」

「そうか……五会頭はみなくせ者揃いだ。戦闘力がないからといって、気を抜くなよ。敵と認識したらどんな手で来るか想像もつかんからな」

 商人の考えることは分からないと父さんは締めくくった。
「分かった。五会頭に会ったら十分注意するよ」

 そういえば父さんは、五会頭の話を僕にしたときからずっと警戒するよう言っていた。

 戦闘力を持たないただの商人と考えると、痛い目に遭うということか。よく覚えておこう。

 ソールの町に降り立ち、〈右足〉に資料と商人を引き渡した。

「これはまた……分かりました。時間をかけて聞き出しましょう」
〈右足〉は苦笑していた。尋問には専門の人がいるので、そこに持ち込むのだろう。

 父さんは仕込みに間に合わなくなると、すぐに去っていった。

 僕はシャラザードを竜舎に預けて、仮眠を取ることにする。

 以前もらった資料によると、ハリムの所在は魔国とあった。
 だがこれはもう一ヶ月も前のものであり、ハリムがそこにいるとは限らない。

 栽培地と工場を襲撃したが、その情報がハリム商会に届くのはまだ先になる。
 いまのうちに禁制品を扱っている交易商人たちの一斉捕縛に動いた方がいい。

 これは〈右手〉にお願いして、現地の〈影〉を総動員してもらう。

 前までは証拠隠滅と逃亡の危険があったので、栽培地などを先に狙ったが、もう遠慮する必要がなくなった。

 唯一の懸念は、商人たちを捕縛もしくは処理することで、ハリムが地下に潜ってしまう危険性があることだ。

「商人たちの捕縛と同時に、僕がハリムを処理しなくっちゃならないんだよな」

 資料からハリムの行き先を予想できる。
 魔国か天蓋山脈にハリムがいるのではなかろうか。

 禁制品の使用目的が楽園ならば、その効果を確かめるためにも、早い段階で楽園に顔を出すと思うのだ。

「まずは天蓋山脈の麓か山中を探してみるか」
 うまくいけば、簡単に見つかるかもしれない。

 そう思いながら、僕は久し振りにゆっくり眠るのであった。


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