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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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「洞窟も塞いだし、これで『楽園』での作業は終わったな」

 ソウラン操者はやりきった表情をしている。
 よほど商国の思い通りになるのが嫌なのだろう。

 いまは洞窟の中から白い煙が噴き上がっているが、それも大分少なくなってきた。
 白い煙は水蒸気だから、洞窟内の水分がすべて蒸発したら収まるだろう。

「これで竜国は一歩リードですね」
 いま楽園に出入りできるのは、竜国の中でも属性竜のみ。

 そのうち何らかの方法で別のルートを見つけるか、作り出す必要があるが、それまでは竜国の独占だ。

「そうだね。後で仕事が回ってくるかもしれないが、とりあえずこれで本来の任務に戻れるよ」
「本来の……任務? 何かやっているんですか?」

「……聞いていないのかい?」
「えっと……おそらく、はい」

 ソウラン操者は首を傾げた。僕に言ったということは、ソウラン操者は僕が知っている前提で話したことになるが、心当たりはない。
 何のことだろうと考えていると、ソウラン操者は腕を組んでかなり真面目な顔をした。

「いま竜国は総力をあげて、支配種討伐の準備を進めているよね」
「あっ……」
 そういえば忘れていた。

「忘れていたって顔だな」
 しかもバレてる!?

「そういえば、そうでしたね」
 楽園探しとハリム落としですっかり忘れていた。

「楽園を見つけようが、あれを倒さないことには、この大陸に未来はない」
「そうですね。このままだと月魔獣の支配地域が広がっていくでしょうし、そうなればもっとやっかいになりますから」

 支配種は、地上に落下した直後が一番弱い。
 その時期を逃してしまったいま、日を追うごとに討伐の難易度が上がっていると見た方が良い。

「竜国ではいま、いろいろな作戦が立案され、それぞれ準備が進められている。こちらの戦力からすれば、挑戦できるのは一回限り。だから失敗は許されない」

 二度目はない……か。それは慎重になるな。

「僕もチラッと聞いたのは物量で押すか、少数精鋭で突撃するかでしたけど」

「どうするかは決まっていないな。武器や防具、保存食については手配済みだ。一般兵も僅かながら参加させる用意が調っている。いま中心になっているのは竜操者を訓練すること、そして情報を集めることだ」

 竜操者の訓練と情報収集。
 集めた情報次第では、作戦がどう転ぶか分からないらしい。

「どちらにしろ、相当な被害が出そうですよね」
「ああ……ただ、単騎で突撃するわけじゃなし。互いにフォローし合えば、被害も減らせると思う」

「……うっ」
 単騎で突撃……それ、シャラザードのことだよな。
 うん、あれは後で聞いて驚いた。

「というわけで、俺は部下の訓練を継続するつもりだ。おそらく近日中に、女王陛下から何か発表があると思うよ。そうしたらまた、一緒に戦おう」

「そうですね。そのときはよろしくお願いします」
「じゃあ、朝日が昇らないうちに戻るか」
「はい」

 こうして僕らは楽園を脱出した。



 僕はソールの町に戻ったが、ソウラン操者は王都に向かっていった。
 今回の報告は、すべてソウラン操者に任せてしまった。

「さて僕は、禁制品の製造工場を潰そうかな」

〈影〉から聞いた話を総合すると、工場を潰すのは僕一人でもやれそうな気がするが、ここは念を入れて、助っ人を頼むことにした。


「また面倒そうなことをやっているな」


 現れたのは、僕の父さんである。
 ソールの町に来た理由の半分は、父さんに助っ人を頼めないかなと思ったからだ。

「工場が閉鎖されれば、さすがに情報は漏れると思うんだよね。だから、今回は派手にやろうかなと」

 工場は町中にある。
 密林の時とは違って、何かあればさすがに異変に気付かれる。

「派手にとは?」
「全てを消し去る感じ?」

 工場で働く人や見張り、護衛もいるかもしれない。彼らの排除は当然として、完成した禁制品はすべて破棄だし、精製途中のものもぜんぶ処分したい。

 それだけでなく、できれば精製する器機を破壊して、資料も全部燃やしたいのだ。

「資料は持ち出した方が良いな。何か証拠となるものがあるかもしれない」
「そうだね。……でも、ハリムは処理するつもりだよ」
 今回は証拠を探すまでもなく、ハリムは処分対象だ。

「それでも他国に協力者がいるかもしれないだろ。資料を読み込むのは時間がかかるから、持ち出してあとで調べるんだな」
「あー、了解」

「それで工場の場所はどこだ?」
「技国の北西かな。商国と魔国の国境から等距離くらいにある町」

 町の名前はターラム。
 僕は行ったことはないが、回天の頃に数回月魔獣が出現したため、竜操者は何度か向かっている。



 いまは夕方。
 ちょうど我が家は店を閉める時間帯だ。
 父さんは僕に会いに行くと行って、その前に出てきたらしい。

 明日の仕込みまでには帰らないと拙いとか。
 工場破壊は、今夜中に終わらせなければならなさそうだ。

「じゃ行こうか」
 今からシャラザードに乗って出発すれば夜中に着く。

 労働者たちは完全に管理されているようで、夜は工場内にある宿舎で寝泊まりしているらしい。
 寝ているならば処理するのも、そう難しくない。

「シャラザードがいて良かったよ」

 こうして女王陛下の指令を受けるのに、自分の足で移動していたら、どれだけ大変だったことか」

「いや逆だろ」
「ん?」

「女王陛下は、お前が機動力を持っているから指令を出しているんだ」
「……あっ、そうだったのか!」

 盲点だった。
 シャラザードがいなければ毎回大変だぞと思っていたが、シャラザードがいたからこそ大変だったとは!

 なんてはた迷惑な! とか思っていたら、シャラザードが身じろぎした。
『主よ、何か、よからぬことを考えておるようだな』

 相変わらず乗っている時に変なことを考えると、筒抜けになる。

「いや別にシャラザードがいなかったら、もう少し平穏な生活が送れたなんて考えてないよ」
『それを考えていると言うのだ』

 実際、シャラザードがいなかったらどうなっていただろう。
 学院に行かなくてよくなるが、その代わり王都は大混乱に陥ったかもしれない。

 竜国が平和なのはシャラザードがいたからこそだし、これはこれで良かったのかもしれない。

「そろそろだぞ」
 技国の町はそれほどたくさんあるわけではない。

 地図によると、この周辺にはひとつしか町が存在していない。
 そして遠くの方に灯りが見える。あれが目的の町で間違いないだろう。

「どうやって下りようか」
「このままでいいだろ」
「……そうだね」
 父さんは相変わらず豪気だ。

 ターラムの町の上空にさしかかったとき、僕と父さんは闇の中に身を躍らせた。


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