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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 捕まえた三人を縛り上げて、ソールの町まで連れて行く。
 今回処理した労働者たちは「うまい話がある」と誘われて、悪事と知りながら荷担していた。

 商国は武力を持たない代わりに、金を使って人の心に忍び寄る。
 金に人の心を売り渡した連中に明日はない。

 さて今回の出来事だが、技国の治安機構に任せると情報が筒抜けになったり、捕らえたはずの者がいつのまにか釈放されたり、逆に口封じで消されたりしそうなので、関わらせることはしていない。

 あとでしかるべき筋を通して知らせるだろうが、いまは勝手にやっている。

「それではよろしくお願いします」
 ソールの町で、捕まえた三人を〈影〉に引き渡した。

 これから尋問して話の裏を取るようだが、新しい発見があれば教えてくれるだろう。
 無人となった栽培地の焼却もお願いした。

 さすがにシャラザードが一気に焼却……というわけにもいかない。

 ロスマイムの花の栽培方法だが、他に漏れているか確認していない。というかする時間がなかった。
 たとえば労働者たちの家族とかに漏れている可能性がある。

 勝手に栽培されても困るし、しっかりと手綱を握るためにも、公開していい情報とそうでない情報は区別つけるよう、脅しているはずだ。
 そう思うが、一応それも確認させた方がいいだろう。

 勝手に栽培しても成分の抽出法方が分からなければ、大丈夫か?
 だとしたら、ハリムが新たに始めない限り、禁制品はいまある分で打ち止めになるはずだ。

「このあとはどうされますか?」
「経路を順に潰していきます。精製工場があるようなので、次はそこですね」

 技国は革新的な技術を各氏族が持っていることもあり、辺境でもそれなりに秘密主義がまかり通っていたりする。

 田舎にあるただの工場で厳重な警備を敷いていても「ああ、何か重要なものを作っているんだな」と、人の口の端にものぼらない。

 栽培地から乾燥させたロイスマイムの花を工場に運び込み、そこから他の町へ行商しに行くルートができあがっている。

 工場の場所は分かっているが、これもまた秘密裏に処理したい。
「技国の町に話を通して捕まえてもらうのは駄目だしな」

 その町のトップには、すでに鼻薬を嗅がせてあると思っている。
 事情を話しても握りつぶされるか、情報を漏らされるのがオチだ。

「工場はひとつだけだけど、警備は厳重。建物は頑丈……ね」
 なかなか苦労しそうである。

 工場を破壊するだけならば、夜中に忍び込んで火を付ければいいのが、問題は精製方法を知っている者がどれだけいるかである。

「労働者は当然知っているとして、見張りは……知らないだろうな。あとはどうだろ」
 やはり尋問すべきだろう。かなり面倒そうだが。

〈影〉が調べ上げた資料に目を通す。

「調べ上げたというより、調べた……かな?」
 資料には、意外と肝心な所が書いてなかったりする。

 昨晩、さきの三人に尋問したところ、一度収穫すると三、四ヶ月は、次の花が収穫できない。工場へ運ぶのは数ヶ月に一度の頻度らしい。
 よって栽培地壊滅の情報は、しばらくバレない可能性が高い。

 そして〈影〉作成の資料によると、工場では機械式の仕掛けが各所に施されており、工場内部へは侵入できなかったという。使えない。

「ただし、噂は集めてあるわけね」
 工場はさびれた町にあり、そこに出入りする者から聞いた話が、いくつか書かれていた。

 働く場所は、内容別に分かれているらしく、別の部屋で何が行われているのか知らない。
 集めた花を一ヶ月くらいかけて日陰干ししたり、一花一花不必要な部分を取り除いたりするなど、かなり手間をかけているらしい。

 荷馬車が月に二度程度、出入りするのを目撃されている。
 日中は見えないところに見張りがいて、夜は見張りが交代で巡回している。
 しかも機械式の仕掛けあり。

「犬を使ってないのは、鼻が良すぎるからかな」
 栽培地でも犬は一匹もいなかった。

 見知らぬ臭いがあれば吠えるように躾けるのは簡単なのに、それを導入しないのは、禁制品そのものの臭いのために、導入できないのかもしれない。

「事前の情報としてはこんなところか。ここでハリムの目的が分かればいいんだけど」
 栽培地の見張りの男たちは、ハリムの目的についてなにも知らなかった。ただ盲目的にここを守っていたと言っていた。

「さて、行きますかね」
 そう思ってシャラザードのところに行ったら、僕に来客が来ていた。

「レオン操者、久し振りだね」
 まぶしいイケメンスマイルが襲ってきた。

「お久しぶりです。ソウラン操者も、この町に用事ですか?」

 ソウラン操者の笑顔に、欠けた歯は存在していなかった。
 そういえば、いつのまにか治したようだ。

 歯欠けは、貝殻の粉を練って固めると聞いたことがある。

「レオン操者に会いに来たんだ。この町にいると聞いてね」
 そうしたら、どこかに出かけたらしいということで、いろいろ探し回ったらしい。

「僕にですか?」
 なんだろうか。

「ここじゃあれだけど……」
 そっと顔を寄せてソウラン操者は囁いた。

「『楽園』に通じる洞窟を破壊するよう、女王陛下から言われている」
「あー、そうでした」

 そっちもありました。
 いま商国が形振りかまわず、瓦礫を撤去しているんだっけか。
 そのせいで五会頭たちの目は、天蓋山脈に注がれている。

 楽園が目の前にあるので、張り切るのは分かる。
 だから僕は、その間に禁制品ルートを全滅させることにしたのだが、考えてみれば洞窟閉鎖も大事な仕事だ。

「分かりました。案内しますので、一緒に行きましょう」
「助かるよ」

 どうやらソウラン操者は、僕がいなかったので、技国領付近にある天蓋山脈の根拠地こんきょちまで行ってみたらしい。
 悪いことをしてしまった。

「僕らが向かうのは、南の海からですので、技国を突っ切ることになります。場所を覚えて、次回からはひとりで行けるようにしてください」

「分かった。じゃ、行こうか」
「はい」

 工場破壊の前に、洞窟破壊だ。


「シャラザード、この前のトンネルへいくぞ」
『心得た!』

 僕とソウラン操者は、並んで飛び立った。
 きっとソールの町の住民は驚いたことだろう。


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