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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 背後の殺気に、僕はすぐさま跳躍した。
 木の枝に掴まり、身体を一回転させて、その上に立つ。

 枝葉が僕の身体を隠してくれるのを幸いに、木から木へと飛び移る。
 一瞬たりとも立ち止まることはしない。

 十分離れた地点で、僕は気配を完全に消した。
 そして先ほどの殺気を思い出す。あれは攻撃するときのものだった。

 もし身を竦ませていたらと思うとぞっとする。
「……不用意な攻撃はしてこないか」

 あの時、一瞬だけ僕の方が早く動けた。
 ゆえにあのまま攻撃されても、僕には当たらない。

 それどころか、敵は自分の居場所を僕に知らせることになる。
 だが、敵は攻撃を思い留まった。

「当てずっぽうの追撃もしてこなかったな」
 木の上に逃げたのは、草むらを移動すると音で位置がバレるからだ。

 気配を消したまま耳を澄ますが、敵の移動する音が聞こえない。
 動いていないか、音を立てずに移動できる手段があるのか。

 そうなると、僕も迂闊に動けなくなった。
 無駄に攻撃をしてこないあたり、敵は一撃に自信がある。
 もしくは毒など、数に限りのある攻撃だろう。

 周囲の気配を探るも、何も見つからない。だけど、僕には『闇渡り』がある。
 僕は闇に溶けた。

 闇に溶けたまま敵を探す。

 見つけてもこのままでは魔道は使えない。一度、闇から出る必要がある。
 一流の者を相手にする場合、出現sの瞬間は危険だ。

 だが、今回は仕方ない。まず敵を見つけるところから始めないといけない。



「……おかしいな」
 気配がない。
 仕方ないので、闇に溶けたまま捜索範囲を広げる。

 よほどうまく隠れたのか、僕の探知に引っかからない。
 夜の闇では、僕の感知能力はかなり上がっているはず。

「どういうことだ? ……いや、これは引っかけられた?」

 もうひとり、密林の中に逃げた見張りがいた。
 この暗殺者をいれた二人が、密林のどこかに潜んでいるはず。だが、その気配がない。

 僕に攻撃すると見せかけて、逃げた?
「いや、そう思って、僕が動くのを待っている可能性がある」

 たとえば葉を身体に巻き付けて擬態したとか、地中に潜った可能性もある。
 不用意に僕が現れるのを、虎視眈々と狙っているかもしれない。

 そう思って捜索範囲を広げつつ敵の痕跡を探したが、本当に見つからない。
 その後も時間をかけて念入りに捜索したが、敵の姿はついぞ発見することができなかった。

 どうやら、まんまと一杯食わされたらしい。

 敵も僕の襲撃が行き当たりばったりとは思っていないだろう。
 すると暗殺者は、どう考えただろうか。

 労働者が全員処理された時点で、少なくともこの栽培地の情報はバレたと考えたはずだ。
 襲撃を受けたことを外へ知らせたい。だが、ただ逃げるだけでは駄目。

 できればこの場所に敵を引きつけたいが、襲撃側の数も力も未知数。
 ゆえに攻撃する素振りを見せてから逃げたのかもしれない。

 事実僕は、見張りを全員処理したら、暗殺者を倒しに行く予定だった。
 ただのひとりも逃がさないために。

 それを予想されて先手を打たれたか。
 だとすると見張りと暗殺者、それぞれ別々に逃げているはずだ。

 さすがにこれだけ時間が経ってしまえば、どの方角に逃げたかは分からない。
「さて、運良く見つけられても一人だな。残りの一人は逃げられてしまうか」

 悔しいが仕方ない。
 こうなったら、どちらだけでも見つけて処理するしかない。

「最短で街道に出るはずはないから……一番ありそうもない逃走経路なんてどうだろう」

 そうして僕はシャラザードに乗り込み、密林のもっと深い所へ逃げ込んだ見張りを見つけて処理した。
 予想が当たったようだ。

 だが結局、僕に殺気を放ってきた暗殺者は最後まで見つけることができなかった。


「シャラザード、このまま別の栽培地を襲撃する」
 逃げた暗殺者が知らせに走るのは時間の問題だ。

 もうこっちも形振なりふりり構っていられない。
 シャラザードに乗ったまま急行すれば、目的の場所はすぐそこ。

 見たところ最初のと同じで、密林の中に栽培地が点在し、小屋がいくつか建っている。

「シャラザード、おまえの属性技で、小屋だけ吹き飛ばせるか?」
『無理だな』

 思った通りの答えが返ってきた。
 どんなに威力を絞っても、シャラザードの属性技はその数十倍の規模の被害をもたらす。

 さすがにそれは拙いので、僕が行くことにする。

「時間がないから、このまま下りる。終わったら迎えに来てくれ」
『うむ。分かった』

 時刻は真夜中を過ぎている。
 労働者はみな寝静まって、見張りはいまだ栽培地を巡回中だ。

 僕は闇に溶けたまま近寄り、次々と処理していった。
「ここには、凄腕の見張りはいないようだな」

 あそこだけ特別だったのか、大した時間もかからずに、すべて処理し終えた。

 もう一度シャラザードに乗って、最後の栽培地へ向かう。

「〈影〉が調べたのは次で最後だけど……やはり、こうなるよな」

 明け方だというのに、小屋から光が漏れている。
 慌ただしく撤収の準備をしているのか、荷物が外に置かれていた。

 逃げた暗殺者から、襲撃の話が伝わったのだろう。
「一旦戻るか、このまま襲撃するかだけど」

 僕が逃がした暗殺者がここにたどり着いたのだろう。
 事情を説明して、巡回している見張りを呼び戻す。

 寝ている労働者たちを起こして撤退の準備をさせる。
 時間的には、ちょうどそのくらいだ。

「だとすると、逃がした暗殺者もこの中にいるわけだ」

 暗殺者に聞きたいこともある。
「よし、このまま襲撃しよう」

 僕はシャラザードの背から飛び下り、その途中で闇に溶けた。


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