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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 翌日、僕は栽培地で働く人たちを眺めた。
 どうやら、目的の植物は雑草に弱いらしく、周辺の短い草すらすべて引っこ抜いていた。

 また、虫がついているのか、ときおり茎から何かを払い落としている。
 護衛はいるものの、夜より厳重ではない。

 外からの侵入を警戒しているのは一緒だが、働いている人々に対してはほとんど注意を払っていない。

 そうして見ているうちに昼休みになった。
 一旦、全員が小屋に戻る。昼食を摂って戻ってくるのだろう。

 僕は小屋から一番遠く離れている栽培地に潜んだ。
 ほどくなくして、昼食を終えた人々がやってきた。

 作業を始めたので、しばらく様子を見る。

「……よし、頃合いかな」
 そっと後ろから忍び寄り、一人に当て身を喰らわせる。

 南国の植物だけあり、背が高い。
 僕の背と同じくらいであるため、屈んで作業をするとその姿を隠してしまう。

 僕は痛みに呻いている男を背負って、密林に駆け込んだ。



「……さて、少し聞きたいことがあるんだ」
 時間がないので、手短にいく。

 尋問は言葉で脅し、暴力で痛めつけ、ときどき優しくすることで心を折っていく。

 いま優しい目の前の人物が豹変したらまたさっきのが繰り返される。
 そう思うと口が軽くなる。

 今回は普通の労働者のようなので、そこまでする必要ない。
 顔を隠した、いかにも怪しげな者が、小剣をチラつかせながら尋問するのである。

 少し剣先で腕を突っついてやるだけで、労働者は震え上がった。

「お前たちはどこに住んでいて、なぜここにきた?」
「お、オレたちは近くの村のモンだ」

「近くといってもここは密林の中だろ」
「歩けば一日半かかる。だけど、一番近いのにはかわりねえ」

「それがなぜここで働いている?」
「や、雇われたんだ。実入りのいい仕事があるからって」

「金のためか。働いている者はみなそうなのか?」
「そ、そうだ。畑で麦を作るより何倍も儲かるって」

「おまえたちが何を作っているか、知っているか」
「…………」

「知っているんだな。言え!」
「し、仕方ないんだ」

「何が仕方ない? あれで人を狂わすのは仕方ないのか?」
「使うのはオレたちじゃない。それにオレたちは花を育ててるだけだ」

 クズだな。知っていて荷担している。

「収穫した花がどこに運ばれるか知っているか?」
「知らない。オレたちは集めて倉庫におくだけだ。そこから先は一切知らされていない」

 その後も色々聞いたが、大した情報は持っていなかった。

 ハリムは大金を使って地元で人を集め、ここで働かせていたようだが、わざと貧しい村を使ったのか、自主的に参加させていた。
 みな自分たちが何を栽培しているのか、知っていたのだ。

 もうひとり連れてきて尋問したが結果は同じだった。

 新たに分かったことといえば、見張りは全部で三十人。
 ここで働く者がそれくらいなので、労働者と見張りが同人数だ。
 なんと非効率かと思ったら、花を盗みに来る者がいるらしい。

 盗人猛々しいことだが、どの村も貧しく、金になるものが密林で栽培されていると知っているから、何人かが徒党を組んで盗みにくるのだという。

 また最初のうちは、労働者をずっとここで栽培させていたらしい。
 すると、さすがは原住民。
 見張りの目をかいくぐって村に戻ってくる者も出たため、人員を増やしたのだという。

 脱走を防ぐため数十日に一度、労働者を村に戻しているが、そのときの話が広がって、盗みに来る者が増えたとか。

 僕からしたらなんて頭の悪いことをしているのだろうと思うが、栽培にそれなりに技術がいるようなので、素人だけでやるよりかはいいのだろう。

「労働者とは名ばかりの犯罪者と、盗人を警戒する見張りたちね。何が何だか」
 世も末だと思う。

 しかし、昼の見張りが少なかったのはそういう理由があったとは。
 いまは労働者の脱走はそれほど警戒されておらず、栽培したものを盗まれることを恐れているようだ。

「金を湯水のように使って人を雇って、採算がとれるのかな」

 最終的にどれだけの金額で取り引きしているか分からないが、金を稼ぐよりもモノを作ることに重点を置いている気がする。

「それと、暗殺者のような気配を持った者だけど、正体は分からずか」
 呪国人を見たことがあるらしいので、それなのかもしれない。

 なんにせよ、そいつは見張りの切り札だろう。


 夕方になるまでに、最奥の栽培地で働いていた労働者は、全員尋問をしてから処理した。

 一度、栽培地を見に来た見張りが、だれもいないと騒いだのでこちらも同じく処理した。
 そろそろ作業を終わらせて小屋に戻る時刻だ。

 ここは奥だから戻ってくるのは最後。
 消えたのが発覚するまで、時間が稼げる。その間に全員処理してしまおう。

「問題はあの気配の薄い奴だよな」

 さすがに魔道を使う者がこんなところにいるとは思えない。
 だとすると、格闘術が暗殺術に長けた者か。
 何にせよ、敵だ。

 僕は闇に溶けた。


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