挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

550/655

549

 翌朝、僕はハリムの目的について考えてみた。
 なぜ常習性のある禁止された植物を栽培したのか。
 女王陛下がいうには、それを大規模に売りさばいている。

 禁制の品を売っているのだ。捕まれば死罪は免れない。
 知っていて、手を出した理由が知りたかった。

「ダミーの商会をつかってカムフラージュはしているようだけど、本気で隠し果せられるとは思っていない?」

 あれは身の破滅をもたらす劇薬だ。
 露見しない程度の商いに留めた方が良い。

 いや、大商人ならばたとえ儲かると分かっても手を出さないのが普通だ。

 たとえ見つかっても「自分とは無関係です」と主張できるだけの予防線を張っていなければおかしい。

「……ということは短期で結果を出さねばならなかった?」
 すぐに思いつくのは金だ。

 ロイスマイムの花を栽培するのにどのくらい資金や人手がかかるか分からない。
 それでも常習性があるのならば、いくら出してもいいから欲しいという者には事欠かない。

 リスクがあってもリターン、つまり儲けが大きければ、手を出す価値はあるのかもしれない。

「……だけどなぁ」

 ハリムと会ったときの印象から考えると、それは違うのではないかと思えてくる。
 ハリムは五会頭である。お金が欲しいのならば、別の方法だって可能なのだから。

 だとすると、目的は別にあると見た方が自然だ。
 技国と魔国でバラまいたらしいが、発見されないように、比較的他と交流がない村からはじめて、徐々に販路を広げている。

 地道だが、確実に広めるやり方だ。
 つまり、各国への影響力を強化させる作戦?

 ハリムは五会頭のひとりだから、有力者にコネはある。
 だが、それが一般の民に浸透しているとは言いがたい。

 何らかの新規事業を進めるにあたって、上から言われただけでは、昨今の国民は納得しない。
 反発がおこれば事業開始は滞るし、強引に推し進めれば暴動すら考えられる。

 それをなくすため、村人たちから懐柔したとか?

「じゃあ、何をするのかだよな」
 いまの予想が合っているならば、ハリムは次のビジネスを用意していなければならない。

 このところ〈影〉たちがハリムの商売をずっと調べていた。
 だが、そんな新しい商売のことなど、どこにも書かれていない。

「とすると、目的は不明か」

 新商売へつなげる布石という線は薄そうだ。
 だとすると、僕にはもう予想がつかない。お手上げだ。

「これは実際に潜入しながら調べ上げるしかないかな」
 面倒だが、それを怠ったために禍根を残したのでは、意味が無い。

 潰すならば、きっちりと潰さねばならない。

 などと考えていたら、ロザーナさんがやってきた。

「おはよう、レオンくん」
「おはようございます、ロザーナさん。王太子夫妻の様子はどうですか?」

「そのことで相談があるのだけど。レヴレアル王太子が月魔獣を見てみたいと言うのよ」
「月魔獣をですか?」

 なんでまた。

 いま、王太子たちの情報は完全に秘匿されている。
 女王陛下は信頼の置ける者たちを集めて会議中だろう。

 王城内には、古代語を話せる人たちが集められているはずなので、今日一日くらいは王太子も大人しくしていると思ったが……。

「まあ、昨日から言い出していたのだけどね」
「そうだったんですか。上の人の許可は取れたんですか?」

「いま確認に行ってもらっているわ。町に出なければある程度要望を聞いてあげるよう言われているから、おそらくだけど、大丈夫だと思うの」

「シャラザードをご指名で、月魔獣の見学ですか……いいですよ。シャラザードの場合、見学で済むか分からないですけど」

「王太子の性格からしたら、少しくらい戦っているところを見せた方が喜ぶかもね。なんにせよ、陰月の路に行って月魔獣を見て帰ってくる頃には夜になっているでしょ?」
「そうですね」

「夜に食事会が予定されているのだけど、それまであまり人に見られないよう言い含められているから、城から出てくれるなら都合がいいのよ」

「あー、そうですね。でも奥さんとアプリさんはどうするんです?」

 あの二人は王太子ほど活発ではないので、一日くらい大人しくしてくれるだろう。
 一番心配なのはチョロチョロしそうな王太子だ。

 今から出発すれば、登城する人の目に触れることもない。
 そういう意味では、城から出した方が安全か。

「お二人は竜国の刺繍に興味を持ったみたいなので、それを習いつつ、時間を過ごすそうよ」

 アプリさんはこちらの言葉を覚えたいと意欲的だったし、刺繍をしながら言葉を習うのもいいかもしれない。

 現在、『潮の民』の人たちも大陸語を習っている最中だ。
 古代語が使える人も、教えるのは慣れてきているだろう。

「分かりました。すぐに準備をしますので、王太子にはそう伝えてください」
 ロザーナさんがここに来たということは、許可が下りる可能性が高いはず。

 僕はシャラザードの所へ向かい、今日の予定を伝えた。

『うむ、そういうことならば問題ない。我が責任をもって月魔獣を全滅させてくれよう』
「いや、だから見学だって」

 絶対、わざと聞き間違えているだろ。

 シャラザードを扱う上で、月魔獣は注意が必要だ。
 たまに暴発する。

 適度にストレスを発散させていると大丈夫なのだが、あまり長期間月魔獣を狩らないでいると、何をしでかすか分からない。

「日程的にギリギリかな」
 楽園に行っていたこともあって、結構な期間が空いてしまっていた。

 王太子を乗せるわけだし、暴発させないよう、しっかり手綱を握っておかねば。そう心に決めた。


 ロザーナさんの予想通り、王太子を外に連れ出す許可はすぐにおりた。
 本来、重要人物を陰月の路に連れて行くなどもってのほかとなるが、月魔獣を見たこともない楽園の人に、その恐ろしさを知ってもらった方が良いと判断したようだ。

「口で言っても伝わらないでしょう?」
 そうロザーナさんは微笑む。

「竜の戦闘力を見せびらかす意味もあるよね」
「おそらくそうね」

 今夜から国交樹立に向けて、王太子と女王陛下の会談が開かれる。
 その前哨戦として、竜国の力を見せつけることを選んだのではないかと思っている。

 ちなみにこの遠出、護衛はいない。
 シャラザードの速度に付いてこられないからだ。

 単騎で許可が出たのは、王太子の存在が外に漏れていないことと、シャラザードの戦闘能力がしっかり把握されているからだろう。

 大型種がでない限り、シャラザードに敵はいない。そう思われていると思う。

「じゃあ、出発するよ」
 ロザーナさんと王太子を乗せて、僕らは陰月の路を目指して大空に飛び立った。


ではハリムの目的は?


そのうち明らかになります。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ