挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

55/660

055

「ハイ終了!」
 お姉さんが物見の塔からやってきた。なぜか半笑いだ。

「終わり?」
「そうよ。レオンくん、おつかされま」
「いやぜんぜん疲れてないけど」

 呆気無い幕切れだったので、あまり練習になっていない。
 もう少しこう、神経を研ぎ澄ませないと分からないような侵入をしてくれないと、難易度が低すぎて意味がない気がする。

「見ていたけどさすがね。簡単に五人を拘束していたわよ」
「お姉さん、もう一回やりたいんだけど」

「えっ?」
「せっかく特訓にきたんだし、侵入する方もこんなもんじゃないでしょ。だからもう一回」

「えーっと……」
 お姉さんが拘束されて大地に転がっているイモムシ――五人に視線を合わせた。

「………………」
「………………」
 目で何かを訴えているようだ。

「もう十分みたいよ」
「今回の特訓って、僕のためだよね」

 ここは僕が希望したら、二回戦が始まるんじゃなかろうか。

「そうなんだけどね。特訓をしなくても大丈夫みたい。合格よ。そうよね、お爺ちゃん」
「………………」
 口輪くちわを付けられたままなので、老人は首を上下に振って答えた。

「合格? そういうもんかな」
 なにか違う気がする。

「これ以上は、私も無駄だと思うわ。それこそこの前のスルーみたいに、魔道を組み合わせたようなタイプを用意しない限り、意味がないもの」

 なるほど、そういうことか。敵は魔国からやってくるのだ。
 魔道使いが混じっている可能性が高い。

 それを想定した場合、今回の特訓だけでは、あまり効果がないかもしれない。
 魔道には魔道で対抗する。

 魔道は長く使ってこそ、応用範囲が広がる。
 いくら才能があっても十代の魔道使いでは、円熟した相手に後れを取ることがある。

 どれだけ多く、そしてどれだけ様々な場面で使ってきたか、そこが勝負の分かれ目になるのだ。
「すると、僕もまだまだだな」

「……どうしてそういう答えになるのかな」
 お姉さんの笑みが強張った。

「あとは自分で特訓してみるよ」
 予想される魔道に対抗するため、少しでもいま使っている魔道を高める特訓をしてみよう。

 僕は、お姉さんと特訓に協力してくれた〈左手〉のみなさんにお礼を言って、闇に溶けた。

               ○

「……何かすごい勘違いをしていたわね」
 シルルはレオンの気配の消えた辺りに向かって、そうつぶやく。

 城を守る〈左手〉が五人。
 防衛の特訓としては厳しい相手であったが、それもまた経験だろうと思っていたが、結果がまったく違っていた。

 次々と拘束される〈左手〉を見て、最初はわざと手を抜いているのかと思ったほどだ。

「それにあの魔道」

 暗かったし、一瞬のことだったので、あまりよく見えなかった。
 それでも、空を滑空していた〈左手〉が張っていた布が剣によって切り裂かれたのは見た。

 だれがやったかなど、探さなくても分かる。
 だが、どうやって? 距離は離れていた。

 ナイフを投擲するなら分かる。
 方法は分からないが、あれは直接切り裂いていた。


 女王陛下から全赦ぜんしゃを賜るはずだとシルルは思った。
 攻守ともに優れている。
 あれに敵う者がどのくらいいるのだろうか。

「レオンくん……恐ろしい子」

 足元でいまだ拘束され続けている五人をよそに、虚空を見つめ、シルルはそうつぶやく。

「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
「………………」
 口輪された五人は、早く開放してくれとしきりに目で訴えていた。

               ○

 王城からの帰り道、ふと気になって、操竜場そうりゅうじょうへ向かってみた。
 普段は地下水路を通るため、一度も入ったことはない。

 これも特訓の一貫である。好奇心ではない……と思う。

 王城と同じような感知結界が張ってある。
 この辺はいい。もう慣れたものだ。

 闇に溶けずに、自分の感覚だけで進んでみようと思う。

 複雑な結界もあるが、それらは大抵重要施設の周辺にある。
 操竜場を突っ切るだけならばそれほど面倒な結界はない。

「他には……おっと!」

 だれかが巡回している。僕は物陰からそれを覗き見た。
 いま『闇渡り』を使っていないので、動けば気づかれる。

 操竜場の警備員のようだが、気を緩めることなく、周囲に視線を走らせている。
 犬を連れている。それにいくつか見慣れないものを腰に差している。
 瞬時に音か光が出るものだろう。

 思ったより厳重な警備だ。
 魔道の結界だけに頼らず、人が常駐して巡回する。
 建物の周辺には複雑な結界もある。

 これを攻略するには、事前調査が必要だろう。
 パッと向かっていって成功するとは思えない。

 犬がこちらを向いた。匂いで気づかれたか?
 犬の頭にシワが寄ったので、何かを感じ取ったようだ。

 僕はすぐに闇に溶けた。
 犬はすぐに興味を失ったようで、また前を向く。

 面白いな。また今度来てみよう。

 僕は闇に溶けたまま、寮を目指して進んだ。
 今日はいろいろと、いい発見ができた。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ