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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 僕が開けた大穴だが、あれは夕方からはじめて、開通するまで翌朝までかかった。
 王太子から山脈の中で一番低い場所を教えてもらっていたからできたのだと思っている。

 それでもシャラザードが開けたトンネルの長さは、数キロメートルにもなった。
 岩盤をくり抜くような形になっているけど、強度は保証しない。
 正直、いつ崩れてもおかしくないと思っている。

「レオン。そのトンネルを出た側は海と聞いたのだけど」
「はい、その通りです」

「海側はどうなっているかしら。山のように上ることができて?」

 海側か。ゆっくり見ることはなかったけど、ほぼ崖のようになっていたな。

「もし船で近くにつけて、そこから人が上っていくと考えるのでしたら、不可能かと思います。トンネルの先は断崖となっておりまして、空を飛べるシャラザードだからこそ、行き来できるのだと考えます」

「なるほど。下が崖になっていれば、上るのは難しそうね。穴自体、かなり高い位置にあるのでしょう?」

「はい。人が上がれるほぼ限界の高さと考えていいと思います」

 もっと上にトンネルを作れば、掘る長さを縮めることができた。
 だが、あれ以上だと呼吸が苦しくて、長時間の作業は不可能だ。

 そのため、人が上がれる限界と述べたが、概ね間違っていないと思う。

 女王陛下は僕の言葉を幾度か口に出して噛み砕いていた。

「でしたら、他の国がそれを使うのは不可能ね」
 なるほど。僕が開けたトンネルを他の国に利用されるのを恐れたか。

「その通りだと思います。トンネルを通るだけですら、通常の飛竜でも不可能でしょう。シャラザード以外でしたら、他の属性竜であれば可能かと思います」

 小型飛竜だとシャラザードの半分。中型の飛竜でもややマシな程度しか上昇できない。
 シャラザードやターヴェリはやはり違う。

「トンネルについては分かったわ。でしたら今度ソウランにも場所を教えなさい。あれなら行き来できるのでしょう?」

「はい。問題ありません」

「あのね、レオン」
「……はい」
 女王陛下の雰囲気が変わった。

「人をやって調べさせたのだけど、楽園に至る洞窟はいま、中の瓦礫を撤去中らしいの」
「瓦礫を……ああ、地揺れで崩壊した場所で難儀しているのですね」

「そう。やけに丸太を運び込むとは思ったら、洞窟の補強に使っているみたいね」
 五会頭が使役している竜操者に、丸太を運び込ませているらしい。

 そこで女王陛下は、冷酷な笑みを浮かべた。ちょっと怖い。

「商国は、解読した暗号から巨大な山脈の向こうに楽園があると思ったようね」
「間違っていないと思いますが」

 竜国も同じ結論に至ったのではなかったのかな?

「そのために人目も憚らず洞窟を使えるようにしているのよ」
 そういえば、ずっと隠れて行動していたんだっけか。

「ですが、瓦礫をどけても底の方にガスが溜まっていると聞きましたが」
 ガスが溜まっているのを知っているのは、楽園の人たちだっけか。

 つまり、崩落現場の楽園側ということになる。
 商国がガスのことを知るのはまだ先か。

「ガスの方は……瓦礫を撤去し終えたら、何とかするでしょう。別の道を見つけるか、新しく作ってもいいわけだし」
「そうですね」

 商国が本気でやれば、瓦礫もガスも何とかしてしまうかもしれない。

「そこでね、レオン。あなたにやってもらいたいことは、ソウランを楽園に連れて行ってほしいのよ。もちろん、洞窟の出口を破壊するために」

 さっき女王陛下が言っていた、結果次第では僕にやってほしいことがひとつ増えると言ったあれか。
 トンネルを使えるのが属性竜以外にいないと分かったから、もうひとつを潰すつもりだ。

「よろしいのでしょうか。あそこは一応……他国? になるかと思いますけど」

「聞いた限りだと、洞窟の存在を知っているのは、領主一族を除けば少ないのでしょう? しかも、国に竜がいないのならば、見つかることもない」

 誰にも見つかるなということか。
 夜に行って、洞窟の出口をぐちゃぐちゃにしてこいという依頼だ。
 たしかにソウラン操者の青竜は、何でもかんでも燃やす……というより溶かす。

 洞窟の上の方から岩盤を溶かせば、それが溶岩となって洞窟内に流れ込む。
 中で冷えたらもう元に戻せない。

 掘るといっても、ドロドロに溶けて固まった溶岩など、十年、二十年かけても除去できるかどうか。

「それは商国の介入を防ぐためでしょうか」
「当たり前じゃない。あれが何を考えているかおおよそ分かるけれど、それを自由にさせるつもりはないわ」

 その野望もろとも、溶かしてきなさいということらしい。
 相変わらず、女王陛下は容赦がない。

「……分かりました。すぐに取りかかります」
「お願いね。……あっ、そうそう。本題がまだなのよ」

「そういえば、僕にやって欲しいことがあるとか」
 最初に言っていた、僕をここに呼んだ理由だ。

「商国は楽園探しを中心に動いていたから、盲点だったのよね」

 いきなり女王陛下が、息を吐き出した。
 なにか、思い通りにならないことがあったらしい。

 ここは空気を読んで、「何かありましたでしょうか」と聞ければいいのだが、僕が女王陛下から話を伺う場合、あまりに心臓に悪いことが多すぎた。
 ここは、敢えて無視しよう。

「…………」
 僕が黙っていると、女王陛下が睨んできた。

「…………」
「…………」

「……えっと、どうしたのでしょう?」
 沈黙に耐えきれず、そう言葉をかけた。

「レオン。あなた、ハリム・イーヴァを知っているわよね」

 はて? 誰だっけか。
 ハリム……どこかで聞いたような。えっと……あっ、思い出した。

「商国五会頭のひとり、『華蜜はなみつ』のハリムのことでしょうか」
「そうよ」

 それならば覚えている。
 たしか技国で……そう、アンさんのお兄さんの結婚式のときに会ったんじゃなかったか。
 僕がシャラザードを得た直後だから、そのくらいだ。

 ハリムはたしか、キザったらしい帽子を被って、僕に挨拶してきた人だ。

「そのハリムがどうしたのでしょうか」
 そういえば、あれから会ってないなと思っていると。

「楽園にかかわる者たちを重点的に調べていたから、監視の目が緩んだというのは言い訳よね」
「?」

「レオン、あなたはイーヴァ商会を潰しなさい」

「へっ!?」
 どうしてまた?


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