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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 翌日、王太子レヴレアルをシャラザードに乗せて、大空へ旅立った。

 ロザーナさんは通訳として同乗。他、全員が留守番。
 レヴレアルの奥さんはニコニコと見送っていたが、他の人たちはかなり慌てていた。

 シャラザードの大きさもさることながら、国の後継者が供も連れずにいなくなるのは問題があるのだろう。
 レブレアルとしたら、知ったことではないらしいが。

『凄いな、本当に凄い』

 そうロザーナさんが通訳をしてくれる。
 こういう感嘆の叫びは、訳してもらわなくてもなんとなく分かる。

「シャラザード、山脈に沿って飛んでくれないか」
『それはよいが、あまり高みには行けんぞ』

「町はまばらだし、あまり上を見上げる人はいないと思うけど、騒ぎにならない程度には気を遣いたい」
 見た人が、「幻かな?」に思えるくらい離れていると都合が良い。

 僕の背の方で、レヴレアル王太子とロザーナさんが話をしている。
 難色を示していることから、無理難題でも言われているのか。

「レオンくん。行ってほしいところがあるんですって」
「いいけど、町中に下りるのは勘弁してほしいかな」

「行きたいのはあっちの山脈の方ね。いいかしら」
「うん、問題ないよ」

 僕らがやってきたのとは、反対側の山脈だ。

 しばらく飛ぶと、長くて大きな湖が見えてきた。

「この地は水が豊富なんですって」
 領主のギュレイさんも言っていたが、各領地には多くの池や湖があり、水源には困らないらしい。

 というのも、降った雨が山脈を通してみんなここに流れ込んでくるかららしく、しかも下は固い岩盤のようで、ああした湖のような場所がいくつもできるらしい。

「もう少し先らしいわ」
「何か変わったところがあるのかな」

「なんでも、王領の町から見える山脈の中でも、そこが一番低い場所なんですって」

 通訳をしてくれるロザーナさんも半信半疑らしいが、過去何百年にも亘って、この山脈を越えようとした冒険家が何人もいたらしい。

 全員が途中で諦めるか、遭難して帰らぬ人となったようだが、彼らが目指したのが、今から向かう場所。

「そこだけ低いわけ?」
 夜の間に一度、ゆっくりと周囲を回ったが、さすがに全ての山脈を調査したわけではない。

「山脈の切れ目みたいになっていて、見た目は越えられそうみたい」
 ふたつの山の中間で、一番低い場所へ向かってほしいのだという。

 なんでも山脈越えは数代前の王も挑戦したとか。
 こんな場所では、山登りはロマンであると同時に、勇者の証なのかもしれない。

「なるほど、ここか」

 たしかに周囲と比べて数段低い。
 それでもシャラザードが越えられる高さではない。

「……限界まで上昇したとして、あとどれくらいだろう」
 おそらくだが、千メートルくらい高い。

「でも周囲に比べるとかなり低く感じるわね」
「歩いて越えるには無理な高さだね」

 シャラザードもある一定以上の高さまで上昇すると、いくら羽ばたいてもそれより上がっていかない。
 他の飛竜も同じで、個々に限界高度があるのは、竜操者の常識となっている。

 シャラザードの場合、ただの飛竜よりも倍くらい上昇できるが、それでもここを越えることはできそうもない。

「ここなら……属性技で破壊できるかも」
 ふとそんなことを思ってしまった。

 シャラザードの雷玉らいぎょくを破壊に使えば、一度で数十メートルの大穴を開けることができる。
 岩盤は固いため、そこまでの効果は期待できないが、何回、何十回もやればトンネルを穿つくらいはできそうな気がする。

 それをやらないのは、山脈があまりに大きすぎるからである。

 ただしこのくらい山が低ければ、開ける穴の長さも二千メートルか五千メートルか。
 一万メートルまではいかないと思える。

「数日かければ可能かな……いや、問題は長さじゃなくて堅さか」
 岩や石を破壊する方が地面に穴を穿つより何倍も難しい。

 その辺の話をロザーナさんに通訳してもらったら、レヴレアルさんがやたらと興奮してきた。

「君たちはどうやって帰るつもりだったのかって聞いてきたのだけど、話してもいいかしら」
「問題ないと思うよ。実践できないと思うし」

 ターヴェリの大嵐渦で周囲のものをすべて引き込んでもらう。
 そのために、山脈のそれぞれで狼煙をあげたり、天に届くように属性技を打ったりして連絡を取り合うことになっていた。

 もし『楽園』の人たちが真似をしようとしても、それは再現できないことになる。

 そこまで話したら、納得してもらえたようだ。

「それで、『神の覗き穴』を広げることができるのかですって」

 天まで届く山脈。
 空を覆い隠すように高く伸びたそれからすれば、ここは山脈の切り込みに見える。
 楽園の人たちは、そこを『神の覗き穴』と呼んでいるらしい。

 僕が属性技で破壊できるかもと言ったら、やたら食いついてきた。

「できるかもしれないってだけだよ。可能かどうなのか何度か挑戦すれば分かると思う」

「……ぜひやってみてくれですって」

 なんともはや、せっかちな王太子であることか。
 山脈の一部を崩すか、大穴を開けることになるのだが、いいのか、それで。

「どんどんやってくれって言っているわよ」
 王太子に躊躇がない。

「こんなのに全権を持たせて任せていいのだろうか」
「さあ、他国のことはよく分からないわ」
「それもそうか」

 レヴレアル王太子をレスター領に戻し、翌日もう一度ロザーナさんと一緒に神の覗き穴にくる。

「昨日、周辺の村や町へ王太子が通知を出したそうよ。どんなに音がしても見に行くなですって」
「気の早いことだよな」

「それだけ期待しているってことじゃないかしら」
「なら、やってみようか」

 シャラザードも最近は暴れ足りないらしく、話を持って行ったら、かなり乗り気だった。

「よし、シャラザード。存分にやってくれ」
『あい分かった』

 何度か雷玉を打ってみて、駄目そうならば諦めればいい。
 行けそうならば、時間がかかってもいいから、最後までやってみる価値はある。


 シャラザードがバチバチと帯電し、頭上に大きな雷玉が浮かび上がった。
 許可は出ているので、ためらいなく放つ。

 ――ドドーン、ババーン、ガラガラガッシャーン!

 激しい音とともに、山脈の一部がはじけ飛んだ。
 出来た穴の深さは十数メートルほど。可も不可もない感じか。

「削れたけど、時間がかかりそうだよ、これ」
「でも、周辺も良い具合に削れているわね」

 シャラザードの雷玉は、周辺へのダメージも激しい。
 直系数百メートル、深さ十数メートルのクレーターができた。

 深さが稼げなかったのは、固い岩盤のせいだろう。

「よし、シャラザード。とりあえず十回ほど、打ち込んでくれ」
『任せろ!』

 僕も興奮していたのかもしれない。

 強力な属性技を連発するシャラザードにあてられたのか、まる一日かけてかなりの横穴を掘ってしまった。
 そして翌日の朝には、なんと向こう側に貫通させてしまったのである。

 シャラザードの能力と、それを実行させた僕自身に、ちょっとビックリした。

【楽園断面図】
挿絵(By みてみん)
【楽園断面図】の説明。
ほぼ見ての通りですけど、一応解説。
楽園は海抜数千メートルのところにあります。
その周囲を高い山に囲まれていまして、断面図が上の通りです。

今回、シャラザードが開けた穴は図のような感じで、人が登山できる高さを超えています。
シャラザードに乗った状態だからこそそこまで上がれるような感じです。
また洞窟ですが、上ったり下りたりを繰り返しながら、別の場所へつながっています。

ただし、一度地揺れで崩壊して通れない場所ができ、そのとき少しずつ漏れたガスが、今では下層に溜まった状態になっています。

では引き続きよろしくお願いします。
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