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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 会話はロザーナさんが行い、それを僕に通訳してくれる。
 領主のギュレイさんだけでなく、ご老人方もロザーナさんとの会話に参加してきた。

 会話が進むと、『魔探』デュラル・ディーバは、かなり先を見据えていたことが分かった。
 この『楽園』を守りつつ、ともに発展してゆける道を模索していたようだ。

 洞窟内が崩落しなかったら、今頃はおだやかに組み入れられていたのではなかろうか。

「レオンくん。今後の方針なのだけど、国王に知らせるのは当然として、国を開くのならば、相応の人と話を詰めないと駄目そうなのよ」

 それは僕やロザーナさんでは意味が無い。
 この国の王と話し、意見を伝えるのはできる。ただしそれだけ。

 個人と国では、契約や条約はできない。
 もし本当にそれを望むならば、やはり決定権、認可権を持つ人がいないと駄目だという。

 デュラルもまた、それを考えていたのだろう。
 そのため、商会の人をここへ連れてきて、互いに言葉を覚えさせ、その上で国の開放に向けて話し合いの場を持とうと考えたらしかった。


 竜国の狙いはいくつかあるが、その大きなものは僕も知っている。
 食糧の供給だ。

 広い肥沃な大地があると言われる楽園。
 そこで生産される食糧は、今後大陸の難問を解決できる一手となるかもしれない。

「この国は何を望んでいるか分かる?」

「王が何を望むか分からないけど、ギュレイさんたちは、閉塞感からの脱出かしらね。発達した文化、豊かに暮らす人々、そして竜操者にもあこがれているらしいわよ」

 この国は伝承通り、旧王族の末裔とその信者たちであるらしい。

 確証はないようだ。長い間山の中を漂泊し、ようやく見つけた安住の地という位置づけらしく、自分たちが罪人の子孫ではないかと心配している人もいるらしい。

 つまり外には別の世界があり、そこで暮らしている人々がいると理解している。
 ただ、好奇心のまま出て行く者はほとんどなく、唯一外への出入り口である洞窟についても、今ではレスター領の一部の人以外には知られていない。

 多くの人は、自分たちは山を越えて来たのだと思っているらしい。

「……シャラザードでも越えられない山だし、無理なんじゃないかな」
「昔はできたと思っているみたいね」

 そしてこの国の現状。
 肥沃な大地は合っているものの、土地は使い切れてない。余っているのだ。

 もとはひとつの民族だったことで、領土を巡って争うこともなく、指導者となった数人が土地を分割して治めたため、戦争など起きようがないらしい。

「まさに楽園だね」
「その分、文化が発展したかといえば、そうでもないみたいなのよね」

 現状に満足し、外からの刺激もないため、職は代々同じ家が継いでいく。
 大工の親は大工だし、その親もまた大工である。

 石造りの家も数百年前に建てたものをそのまま使っている。

 毎年すべてが同じ事の繰り返し。
 停滞の中で安定を求めているのだとロザーナさんは説明してくれた。

「そんな状態じゃ、シャラザードが出て行ったら驚くんじゃない?」

「そうね。この国の王に連絡を入れてもらうのだけど、こちらに敵意がないことを分かってもらって、その上で十分準備をしてからシャラザードを見せた方がいいと思うわ」

 シャラザードの餌となるものは一応持ってきている。
 月魔獣狩りや戦争に参加して困るのは竜の食事だ。

 そのようなときに使われるのが塩漬けの肉で、今回持ってきた量ならば、一回や二回分の食事になると思っている。
 シャラザードが文句を言わなければ、という注釈がつくが。

「なんにせよ、事情は分かった。ギュレイさんにいろいろ動いてもらおう」
 方針が決まったので、僕はシャラザードを呼び寄せた。

 事前にしっかりと説明をしておいた。
 それでも予想外だったのか、ギュレイさんとお爺さん方は、口を開けたまま固まってしまった。

 ギュレイさんの表情がアプリとあまりに似ていたので、さすがは親子だとちょっと笑ってしまった。

 シャラザードに言い聞かせ、僕とロザーナさんはギュレイさんの屋敷、いわゆる領主の館に招待されることになった。
 すでに王領へ使いを出したそうで、早々に返答があるだろうとのこと。

 その間に僕らはこの国についての基礎知識を学ぶ。

 まず国名。カイルダ王国というらしい。
 旧王都を追放された王族の末裔が国王になっている。

 国王の名はフォーン・カイルダ。
 齢七十歳の高齢らしく、ここにやってくることはないだろうとのこと。
 各領地の領主たちも、用事があれば王領に出かけていくらしい。

 王領を除いて領地は三つ存在し、ここレスター領は王領の隣。反対側にナルトニア領が存在している。
 王領はレスター領とザトク領に挟まれている。

 西からナルトニア領、レスター領、王領、ザトク領と覚えればいいそうだ。

「僕らは王領へ行くことになりそうなんですね」

 などと呑気なことを話していたら、僕らが領主の館に滞在して二日目の夜。
 王領から使者がやってきた。

「レオンくん。王の名代で、息子夫婦が来たみたいなの」

 王太子レヴレアルとその妻サーニアが、王の命によって駆けつけてきたという。
「ずいぶんと腰が軽いですね」

 普通、王太子を派遣するだろうか。いや、本人の希望かもしれない。
 本人がサヴァーヌ王女みたいなアレならば、十分可能性はある。

 王太子レヴレアルが四十歳で、妻が三十五歳。
 もしかすると、交渉はこの人たちが中心になるのかもしれない。


天蓋山脈は、地球でいうヒマラヤ山脈地帯が近いです。
あの山脈を越えても山々が連なっていますが、あんな感じです。
その中で、ここ『楽園』は東京都くらい。
山脈の規模からすると、ほんの点くらいの大きさでしょうか。

それでは引き続きよろしくお願いします。
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