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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 シャラザードの姿に驚いた女性は、僕らのことは視界に入っていないようだ。
 ただ見上げている。

「レオンくん……」
「うん。いきなり攻撃してくる人ではなさそうだね」

 見たままならば、相手はどこにでもいる村娘。
 ざっと周囲を確認したが、他に人の気配はなかった。

「私が行っていいかしら。レオンくんだと警戒させてしまうかも」
 同じ女性ということで、ロザーナさんの方がたしかにいい。

「お願いできるかな。何かありそうならすぐにかけつけるから」
「……きっと大丈夫よ」

 ロザーナさんは、シャラザードの足の陰から出て行った。
 僕は懐から投擲用のナイフを取り出し、気配を消す。

「こんにちは」
 それは古代語での挨拶。
 これで話が通じれば、ここは『楽園』とほぼ確定する。

 僕はシャラザードの陰でそっと耳を澄ませた。

「こんにちは……私の言葉が分かるかしら」
 再度の問いかけに、女性はハッとしたように身体をふるわせ、何かをわめき立てた。

「古代語みたいだな」
 僕には聞き慣れない言語。

 一応僕もロザーナさんから少しだけ手ほどきを受けたが、挨拶やお礼の言葉、はいかいいえくらいしか分からない。

 ロザーナさんが女性に話しかけている。
 女性がロザーナさんに駆けより、手をつないだ。

 そこで問答を繰り返し、ようやく女性の方が落ちついてきたようだ。

 ロザーナさんが僕の方を向いて、手招きをした。
 僕がゆっくりと近づくと、女性は大きく目を開いて、僕とロザーナさんを交互にみる。

「こんにちは」
 僕の知っている数少ない古代語。
 うまく伝わっただろうか。

「こんにちは」
 女性も返してくれた。どうやら伝わったようだ。

「レオンくん。この人――アプリさんというのだけど、この人から少しだけ話を聞いたの」

「うん。それで何だって?」

「シャラザードは……というより、竜はこの国の人たちにとって恐怖の象徴らしいのよ」
「うん?」
 どうしてだろう。

「おとぎ話に出てくるみたいね。聞いた限りだと姿形はシャラザードに似ているし、それを現す単語も合っているわ。それからすると、竜は人に災いをもたらす悪しき存在だとか」
「なんて理不尽な」

 もとは竜国の民――というか、その前身であった国の末裔じゃなかったのか。
 竜が悪しき存在って……。

「とりあえず誤解は解いてもらったのだけど、このアプリさんと少し話してもいいかしら」
「うん。僕だとまったく会話できないから、お願いするよ」

「なるべく情報を聞き出すようにするわ。それとシャラザードへの恐怖を無くしてもらうようにね」

 ロザーナさんは、アプリさんを連れて歩いてしまった。
 どうやら、シャラザードの近くが怖いらしい。



 待つこと二時間と少し。
 そろそろお昼の用意でもと思ったところで、ロザーナさんだけが戻ってきた。

「ただいま、レオンくん」
「おかえりなさい、ロザーナさん。それで話はどうだった?」

「そうね。かなりいろんなことが分かったわ。最初に私たちが出会ったところについてね」

 ロザーナさんが聞いた話では、森の中を歩いていたアプリさんは、なにやら聞き慣れない音を聞いたという。

 バサッ、バサッ、ザァーという大きな音の正体はなんだろうと、森を歩いてこっちに来たそうだ。

「木々が邪魔をして、シャラザードが着陸する姿は見えなかったんだね」

「そうみたい。森を抜けたらシャラザードがいたわけでしょ。魂が抜けるほど驚いたみたい。私が話しかけた辺から記憶にあるようだけど」

 ロザーナさんに「危ない!」と注意を促したらしい。そういえば、何かわめいていたなという印象はある。

 ロザーナさんがシャラザードに気づいてないのだと理解して、手を取って森へ逃げようとしたというのだから勇気がある。それと人を放っておけない優しい性格なのだろう。

 逆にロザーナさんは、「危険じゃない」と力説し、「これに乗ってきた」と説明したが信じてもらえず、「どうやって」と返される始末。
 そこで僕を呼び出して、この人がシャラザードの乗り手なのだと紹介したらしい。

「その時点で危険はないと思ったわ。この人は大丈夫って。だからシャラザードから離れたところで話を色々聞いたわけね。それでかなりの事が分かったわ」

 ロザーナさんが話を聞いていた時間は二時間と少々。
 詳しく聞くには足りないだろうが、概略を掴むには十分な時間だろう。

「どこから話せばいいのか迷うのだけど」とロザーナさんは前置きした上で、時系列はすっとばして、大事なことから話すと決めたようだ。

「まず、ここは『楽園』で間違いないわ」
 のっけから、結果が出てしまった。

「やっぱり、ここが楽園なのか」
「そうね。本当に偶然なのだけど、十年以上前にここを訪れた人がいて、そう評したらしいわ」

 ここはまるで楽園だと言ったらしい。

「それを言った人って?」
「デュラルと名乗ったらしいから、『魔探』のデュラル・ディーバだと思うわ。偶然にもアプリさんが少女時代に会っているんですって……いや、場所からしたら偶然でもないのかもしれないわね」

「偶然じゃないって?」

「ここはレスター領で、この森は領主の持ち物。普通の人は入ることができないのよ。小さい頃彼女は森をずっと行った先にある洞窟から出てきたデュラルと会っているの」

 彼女の名前は、アプリ・ロイルス。
 領主ギュレイ・レスターの娘であり、すでに結婚して姓が変わっているものの、もとは領主一族に連なる血筋らしい。

 小さい頃、領主所有の森で遊んでいたところ、若い頃のデュラルと出会っている。

「じゃあ、その洞窟は外と繋がっているとか?」

「いまは閉鎖されているみたいね。ガスが洞窟の底の方に溜まって人が次々倒れるので、別の道を作ろうとしたところそこが崩壊したみたい。いまは危険だということで、入る人はいないみたいよ」

「そうなんだ……」

「聞いたところ、洞窟を抜けるのにもまる一日以上かかるみたいだし、相当長いと思うわ。脇道もあるようだし、かなり下る箇所がいくつかあって、人に有害なガスが溜まっているから、いまも通行できなさそうね」

「ということは、商国の人たちはまだ到着していないのかな」
「出口がここだけならば、そうなのかも。それよりひとつ気づいたことがない?」

「気づいたこと?」
 なんだろう。

「さっき、私がレスター領だと言ったでしょ。領主一族とも」
「うん」

「ここは王政をとっているのよ。しかも、土地をいくつかにわけて領地を運営するような制度を敷いているのね」

「あっ、そうか。つまりある程度発達した政治体系があるのか」

 潮の民たちの住む島は村がひとつだけしかなかった。
 だがここは違う。

 領主がいて、王がいるらしい。

「ちょっと驚きでしょ」
 ロザーナさんの言葉に、僕も頷いた。


 わたしがイメージしている楽園の広さは東京都くらいでしょうか。
 それだと少し大きいかな? 二十三区と東京都(島除く)の中間くらいかも。
 それで縦長の土地をイメージしています。
 楽園の詳細は、明日以降ということで。

 引き続きよろしくお願いします。
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