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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 準備をすべて終えるまで二日かかるとヨーサリィさんは言った。
 それまで待機していればいいのだが、ここで時間を無駄にしたくない。

「私はもらった資料を読み込むことにするわ」
「お願いします」

 ロザーナさんは、ニッコリ微笑んで資料に目を通しはじめた。
 楽園に現地人がいた場合、ロザーナさんだけが頼りだ。

「ボクはシャラザードと出たいんですけど、いいですか?」
「どこへ行かれます? 北方の山をいくつか越えると商国の探索者たちに見つかりますよ」

 ヨーサリィさんとしては、あまり目立つ行動をして欲しくないようだ。

「僕らが越える山を見たいんです。実際にこの目で見ておかないと、想像力が沸きませんからね」
「西方ですね。でしたら大丈夫だと思います。気をつけていってらっしゃいませ」
「はい、ありがとうございます」

 ヨーサリィさんの許可が出たので、シャラザードの所へ行くと……。

『話の分からんババアだな。我が勝ったと言っておろうが』
『ほんのちょっとくらい勝ったからって、何を言ってんだい。まぐれって言葉があるのを知らないのかい』

『んだとババア、やるのか?』
『躾が必要かい? これだからボウヤは』

「わー、ターヴェリさん! 落ちついてください」
 アンネラが必死に押しとどめている。

「……うん、相変わらずだな」

 これはあれだ。ただじゃれているだけだ。
 そう思うことにしよう。

 僕はシャラザードの話している言葉しか理解できないが、ターヴェリの方は、からかい半分のような気がする。
 つっかかっていくシャラザードを煽りながらいなして(・・・・)いるような。

「これは経験の差かな」
 シャラザードが手玉にとられているんじゃなかろうか。

「シャラザード、いまから出かけるぞ」
『主よ、ちょっと待ってほしい。こやつに我の強さをだな……しっかりと教え込まねば……』

「帰ってから存分にやってくれ。それより日が暮れないうちに確かめたいことがあるんだ」
『うーぬ。仕方ない』

 シャラザードに乗って天蓋山脈を進む。
 しばらく行くと、左手に高い山の連なりが見えてきた。

「あれがそうか」

 たしかにあれは越えられない高さだ。
 まるで天に突き刺すように、山の頂上が上へ上へと伸びている。

「シャラザード、あの近くへ寄ってくれ」
『あい分かった』

 山全体が硬い岩石でできている。破壊はかなり難しいと思う。

 いまは雲もないが、もしあればかなり下方に出来るはずだ。
 僕らがいる場所はそのくらい高い。

「ここから上昇したら、どのくらいまで上がれる?」
『あれを越えるのは無理だぞ。我でもあそこまでは上がれん』

「そっか。……たとえば飛べなくても、歩いて山を越えられたりする?」
『そんなのやったことはないわ。考えたこともない』

「いま考えてくれ。できそうか?」
『急斜面は無理だな。緩やかなところならば時間をかけて……できるかどうか。やってみなければ分からんが、やってみたいとは思えんな』

「なるほど。そういう感じか」

 帰りを考えた場合、もしものときはシャラザードだけでも戻ってもらおう。
 一応できると考えていいのかな?

「それと低い尾根がないか探したいんだ。少し周辺を飛んでくれ」

 シャラザードにお願いして、山脈に沿って飛んでもらったが、そのような場所は見つからなかった。
 どこもかしこも高すぎる。

 飛んでいるうちに暗くなってきたので戻ることにした。

 根拠地に着くと、ターヴェリが寝そべっていびきをかいていた。
 シャラザードは丸まって寝ることが多いが、ターヴェリは壁に背中を預けて腹を出して寝るのが好きなようだ。

 酔っ払って寝入ったおっさんみたいに見える。

「お帰りなさい。どうでした?」
 ロザーナさんが出迎えてくれた。
 資料を全部読んだのだろうか。かなりの量があったが。

「ただいま。山脈の高さを見てきたけど、やっぱり独力で越えるのは大変だね。シャラザードだけで無理をすればもしかしたらって感じかな」

「この辺の調査が進んでいないのは、高い山が多いからね。同じ天蓋山脈でも、他はそうでもないのに」

「偶然なのかな。そういえば、この反対側って海だよね」

「そうよ。海から雲を突き抜けるようにして山がそびえ立っている感じかしら。それがずっと西の方まで続くって聞いたことがあるわ」

 僕も海から上がれるような場所はないと聞いたことがある。
 この辺は調べても意味の無い場所として、何百年も放置されていたのだろう。

「ロザーナさん、明日は何をするか聞いています?」

「荷を乗せる準備をするみたいね。通常の乗せ方だと、荷が放り出されてしまうから、絶対に落ちないように縛り付けるんだとか」

「なるほど……そういうことか」

 シャラザードに荷を乗せる場合、鎖を胴体に巻き付け、あとはロープが革で結わくのが普通だ。
 背中に置いた荷物は鎖と連動させて縛る。

 そうすると、よほど激しい動きをしない限り、荷がどっかに飛んでいってしまうことはない。
 今回は、その「よほど」の動きをする。

「鎖の調整とかをするんだろうな。一日仕事になりそうだ」

 僕が座るときは、シャラザードの首もとに鎖を通し、首の裏側に革と鎖を連動させて場所を確保している。

 今回、大嵐渦だいらんかではじきとばされないよう、すべてギチギチに縛るのだろう。
 シャラザードの様子を見ながら、明日はそれに付き合うか。

「そういえば、レオンくん。竜国に来た『潮の民』だけど」
「巫女のセーレさんたちですよね。たしか大陸の言語を習得させるとか」

「そう。そろそろ特訓を始めた頃だと思うわ。優秀な古代語の翻訳者が到着したらはじめると言っていたから」

「即戦力になるといいですね」

 楽園が存在し、そこに原住民がいた場合、古代語を話せる人がどうしても必要になってくる。

 現地の人に大陸の言葉を覚えてもらうのもひとつの方法だが、竜国内でちゃんと話せる人を確保しておくのは重要なことだ。

 セーレさんたちに頑張ってもらおう。



 翌日、シャラザードに積み込む荷を見た。
 馬車三台分くらいある。

「これだけの量を大嵐渦でも外れないようにするのは大変そうだ」

「箱に詰めて鎖で固定します。前後左右上下、どの方向に力がかかっても緩まないよう、きっちり縛りますんで」

 荷運びの職人さんは一流の人を起用したらしく、手際よくシャラザードに荷を固定していった。

「じゃ、大丈夫かどうか、確かめてみますね」

 荷を乗せたまま、シャラザードに急制動をお願いしてみた。
 乗っている僕も、胃がひっくり返るかと思うような動きなため、後ろの荷物に気を向ける余裕がない。
 大丈夫だっただろうか。

『うむ、問題ないぞ』

 シャラザードも背中の荷が動いた感じはしないというので、合格のようだ。
 根拠地に戻って、それを報告する。

「では状態を確認しますね」

 さっきの急制動で緩んだり、破損したりした部分がないか。強い力がかかって変形していないか、一度荷をすべて下ろして点検するらしい。

 それで満足いく結果が出たら、明日、本番となる。

「確認が終わりました。大丈夫ないようです。どこも異常ありません」
 達人のお墨付きを得たので、明日の決行が決まった。


いよいよ明日、楽園探しに出発です
グランドラインみたいなものでしょうか。
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