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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 今回の任務だが、僕とアンネラで楽園探しをすることまでは理解した。
 シャラザードとターヴェリの合わせ技を使うらしい。

「あのグルグルまわるやつだよね」

 天蓋山脈の高い山を越えるのに必要らしいが、ハッキリ言おう。
 あれはキツい。

「グルグル……大嵐渦だいらんかですね。はい、それを使うみたいです」
「あれの中に入るのは、かなり負担になるんだけど」

 そもそもあれは敵を倒す技ではなかろうか。

「大丈夫です。大嵐渦で打ち出すといっても、大ダメージを受けないように速度や回転だって調整します。今回は敵に突っ込むわけではないので、もっと穏やかにいけるはずです」

 ……行けるはずって。そこは嘘でも「大丈夫です」と言って欲しかった。
 というか、大ダメージを受けないように? どのくらいのダメージを想定しているのだろう。

 シャラザードの翼がボロボロになるのはどのくらいだ? 中ダメージか?

「えっと、レオンくん。いまは何の話をしているのかしら。私が聞いたのは、現地に向かって、そこで指示を仰いでほしいと言われただけなのだけど」

 ロザーナさんが不安そうに聞いてくる。

 僕とアンネラでこんな会話をしていたら、そりゃ不安にもなる。
 速度とか回転とか、何の話だと思うだろうし。

「僕もこっちの指示に従うように言われただけなので……アンネラは詳しい任務の内容を知っている?」

「はい。この地に来てもう十五日目ですから」
「そうか。結構苦労していたんだな」
 この根拠地、最初は何もない場所だっただろうに。

「ターヴェリさんと一緒ですから、へっちゃらです」
 いい子だ。

「和むわね」
 ロザーナさんも癒やされたらしい。

「じゃ、アンネラ。ロザーナさんもいることだし、もう少しちゃんと説明してくれるかな」

「はい、分かりました。……そうですね。この地を選んだところから話をしますね」
 そこからか。まあいいけど。

 どうやら、商国の楽園探しを参考にして、囮を使っているようだ。
 魔国と一緒になってワイワイやっているのは実はダミー。

 実際はここで楽園探しをしているらしい。

「天蓋山脈の中でも、地図が作られていない地域は限定されていまして、南部が多いんです。そこで、南部を中心に捜索することになりました。ですけど、調査を始めたら高い山が意外に多くて、飛竜でもなかなか越える事が出来なかったのです」

「ここまで来ただけで分かるよ。たしかに南部は高い山が多いね」
「そうなんです。そこでもっと高く飛べるソウラン操者が呼ばれました。あとわたしも」

 そこでアンネラには詳しい説明がなされたらしい。
 本人いわく、「本気で驚いた」ということだ。

「お父さんの残した暗号を頼りにここまで捜したみたいなんですね。ですから、わたしからもぜひやらせてくださいって頼み込んだんです」

 父の偉業の再確認をしたかったようだ。
 気持ちは分かる。

 それからはソウラン操者とアンネラが交代しながら、地図の空白地帯を埋めていたらしい。
 てっきりアンネラは陰月の路に行きっぱなしになっているものと思っていたが、違ったようだ。

 いまの話を聞く限り、ここと月魔獣狩りを半分ずつか。
 時々月魔獣も狩って、世間の目をうまくごまかしていたのだろう。

「それでどうしても越えられない山があって、その周辺だけ地図が埋まらなかったんです。そうしたら、ここに楽園があるのかもしれないと話が出て……」

 周辺を巡ったが、どうにも山を越えられない。
 だからこその先に楽園があるのでは?
 そう考えて、ここに根拠地を作ることにしたらしい。

 僕とロザーナさんが海を渡っているときに、天蓋山脈でそんなことが行われていたとは知らなかった。

「いろいろ山を越える方法を考えたのですけど、どれも難しかったんです」
 山頂を越えるのはまず無理だということになった。

 ではどうすれば? そう思ったときに、ソウラン操者がアレを思い出したようだ。

「ターヴェリさんの大嵐渦ならば越えられるんじゃないかって言われたんです」
「ああ、そこに繋がるわけね」

 シャラザードの巨体すらきりきり舞いさせられたのだ。
 威力はお墨付きだろう。

「あれで山を越えられるということになって、レオン先輩に話が行ったんです」
「それで僕かよ……でもあれ行きだけだろ」

 山を越えるように打ち出すのはいい。
 あまりよくないけど、手加減してくれるのならば、何とか耐えよう。

 問題は帰りだ。
 行ったがいいが、帰れないのでは意味が無い。
 そのところ、アンネラはどう考えているのだろうか。

「えっと、逆回転できますので、大丈夫かと思います」
 逆の回転で、周囲のものを引き寄せるらしい。

 たしかにターヴェリは風を操る竜だ。
 打ち出すのもできれば、引き込むのも出来るわけか。
 向きを変えるだけだから、一応可能なのか。

「でも、ちょっと待って!」
 あやうく納得しかけるところだった。

「どうしました、レオン先輩?」
「逆回転で引き込むとしたって、間に山があるから無理じゃないか?」

 その引き込み、山を越えたシャラザードのところまで届くのだろうか。

「そこは……うまく山の上部を削ってもらって、低くするとか」
 無茶苦茶なことを言い出した。

 アンネラが言いたいのはこうだ。
 シャラザードの属性技で山に大穴をあけて、尾根を少し削りとってくれと。
 それならばなんとか届くとか。

「ソウラン操者はなんて言っていたの?」
「彼ならできるって仰ってました」

「……逃げたな」
 絶対逃げた。僕に押しつけたよ、これ。

 たしかにシャラザードの雷玉なら、山の稜線くらい削れるけど。
 それだったら、ソウラン操者の炎でもいいじゃないか。

 山は下に行くにつれて広くなっている。
 上の方を削るくらいなら可能だろうけど……マジか。

「ちょっとレオンくん」
「なんですか、ロザーナさん」

「それ……私も行くのだけど」
「そういえばそうですね」

 楽園に人がいた場合、現地人と交流できなければ意味が無い。
 そのため、ロザーナさんがわざわざここまで来たのだ。

「その大嵐渦というのは、何なのかしら。私は知らないのだけど」
「あー、そうでしたね。ウッカリしていました」

 アンネラに説明を求めようとしたら、そっぽを向きやがった。
 あれか。まっとうな方法じゃないって自覚あるんだな。

「……で、何かしら」
「……ええっとですね。大嵐渦というのは、赤竜ターヴェリの必殺技、つまり属性技です。巨大な渦ができます」

「渦?」
「風の渦です。その中に入るとグルグルとこう……身体が回転しながら飛んでいくんです。その勢いを借りて山を越えようという案が出ています」

 僕が小石を拾って指で回しながら投げた。
 小石は勢いをつけながら飛んでいく。

「それを私たちでやると」
「まあ……そうですね」

「二人とも、正気?」
 ロザーナさんのジト目が怖い。

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