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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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「んっ、んん~~!」
 報告書の作成も終わり、僕は大きな伸びをした。いや~疲れた。

「書いたのは私なのだけど、レオンくんの方が疲れているって、どういうことかしら」
 ロザーナさんがジト目でこっちを見ている。

「あー、うん。慣れないからかな、こういうのは」

「竜操者も日報を書くって聞いたけど」

「そうだね。巡回に出たときは移動ルートと倒した月魔獣の数を書いたりするけど、あれは簡単に書き入れるだけだし」

 今回の報告書は違う。立派な資料として、高位の人たちが閲覧することが決まっている。
「だいたい」で書くわけにはいかない。

「それで、レオン君。今日は一日お休みで、明日からまた移動よ。よろしくね」
「了解……って、ええ!?」
「どうしたの?」

「まだロザーナさんと一緒?」
「ええ、所属もこのまま竜導教会ね」

「……そうなんだ」
 意外というか、まだ終わってないらしい。

「……それでレオンくん」
「はい?」

「アンさんとの婚約はどうなったのかしら?」
「えっと……はい?」

「正式に婚約したことまでは知っているわ。その先は? 結婚はまだなんでしょ?」
「あー、はい」
「詳しく聞きたいわ」
「……はい」

 アンさんことアンネロッタ・ラゴス。
 技国の序列第一位、兎の氏族の直系だ。
 僕にとってはなかなかに高嶺の花だったりする。

 そんなアンさんと婚約した当初は、僕がシャラザードを得ていたこともあって、格としてはギリギリ及第点。
 竜国の政治的意図を加味して、少し役職で背伸びさせてもらった感があった。

 アンさんの祖父であるディオン氏族長は気にしなかったが、ラゴス家に連なる者たち――竜国でいうところの貴族の反感を押さえる役目があったんだと思う。

 その後、僕はシャラザードと魔国の侵攻を跳ね返したり、支配種を倒して竜国で英雄扱いされたりして、肩を並べられるくらいにはなった感じだ。

 お兄さんのモーリスさんはすでに結婚しているし、技術競技会も終わって、結婚の時期としては悪くない……はずだった。

「回天と大転移。それに竜国と技国の同盟もあったし、アンさんはいま、自分の部隊を引き連れて陰月の路にいるんだよね」
 だから、会えていなかったりする。

駆動くどう歩兵を操るのは知っているけど、陰月の路って……そこまでしなくちゃいけないの?」

「竜国には、親善大使として来たんだけど、ドレス着て貴族とダンスしているよりも有益らしい」
 技国の親善活動だ。
 これは結構好意的に見られている。

 技国の軍隊というとらえ方はあまりされていない。
 どちらかというと、技国からわざわざ月魔獣を狩りに来てくれた人たちという印象だ。

 反対に戦闘に加われない竜操者は技国に行っているけど、そちらはあまり話題にされない。うまく隠している。
 技国としても、戦闘経験と月魔獣戦のデータを集められるので悪いことではないらしい。

 駆動歩兵は維持費が馬鹿高いので、限界はあるだろうが、いまのところうまく機能している。
 もうしばらく、アンさんは陰月の路に張り付くのではなかろうか。

「すると、結婚は遅れそうなの?」
「大転移が数年続くけど、それが終わるまでってことはないはず。ある程度の目処が立ったら、結婚するみたい」

「……みたいって、レオンくんのことでしょ」
「そうなんだけど、政治的な問題も絡んでいるんで、僕とアンさんだけじゃ決められないんだ」

 結局、竜国と技国の同盟にも関わることなので、日程は国の方で決めて僕らに打診があるんじゃないかと思っている。

「……はぁ。なかなか大変なものなのね」

「だね。モーリスさんも、自分では決められなかったみたい」
 氏族の直系は大変だ。

 僕の場合、アンさんが竜国に嫁いでくるので、あまり氏族の「あれこれ」は関係ない。
 ただしアンさんの扱いはかなり気を遣うものになりそうだ。
 夫婦の亀裂が両国の関係悪化につながったりすると、いろいろまずい。

「戦争の引き金にならないようにしましょうね」
 同じことを思ったのか、ロザーナさんにニッコリと言われてしまった。



 翌日、僕とロザーナさんはシャラザードに乗り込んだ。
 目指すは天蓋山脈。

 しかも魔国の南部。技国との国境に近いあたりだ。

「天蓋山脈でも、すごい南だね。竜操者でも行ったことない人がほとんどじゃないかな」
「とくにこの辺は高い山脈ばかりだから、遡ってもほとんどの人が行ったことないんじゃないかしら」

 天蓋山脈とは、昔の人が「まるで天から吊り下げられたように見える山並み」から付けた名である。

 魔国の西にあり、その奥は何十、何百、何千という山々がずっと連なっている。
 それほどまでに高い山であるが、僕らがこれから向かう場所は、もっと高い。

 まるで二つの山脈がぶつかり合い、その場所で上に大きく盛り上がったかのようだ。
 実際そこの南と北では、山脈の性質が違うため、何らかの地殻変動があったのではと言われている。

 王都から向かうには距離が離れているので、途中で一泊した。

「天蓋山脈の中に竜国の根拠地こんきょちがあるんだよね」
「そうよ。技国の人たちに作ってもらったのだけど」

 僕らが向かう場所は、ちょうど魔国と技国の国境付近になる。
 そこから天蓋山脈へ分け入っていくらしい。

 根拠地はすでにできており、物資も運び込まれているという。
 ここを基地として、天蓋山脈の中へ分け入っていくのだが、そこに僕らが選ばれた理由。

『……ぬ!?』
「どうしたシャラザード?」

『この気配は!』
「えっ?」

 すでに天蓋山脈の中に入っている。
 入り口付近の山ですら、頂上は八千メートルとか一万メートルと言われている。

 稜線りょうせんのなるべく低い場所を選んで進んでいるが、山脈に隠れて視界はかなり悪い。
 なぜそんな遠回りをするかといえば、あまり高いと息が苦しくなるのだ。

『ぬうう、やはり!』
「どうした、シャラザード」

 シャラザードが睨む方向に何かがチラッと動いた。
 よく目を凝らすと……赤い?

 あの高さで赤い色?

「あっ、あれはっ!」


というわけで、バレバレのまま次回です。

場所は地図で確認してもらえればと思います。魔国と技国の国境付近で、周囲より山が高い場所。
なんとなく、この辺かなと分かるかなと思います。


さて、連休は出ておりました。
そのせいでストックが……。

誤字の修正なども順次やっていきたいと思いますが、なかなかPCの前にいる時間がとれなくて難儀しています。
がんばりますので、引き続きよろしくお願いします。
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