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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 竜国を希望した五人の島民を乗せて、僕らは王都に到着した。

 彼らは飛び立ってすぐに気絶したため、シャラザードに言ってそのままの速度で飛んでもらった。

 どうせ気絶したならば、どんな速度で飛行しても同じだろうと思ったし、少しでも早く帰りたかった。

「まあ、しょうがないわよね」
 王都に着いたとき、ロザーナさんの笑顔がやや引きつっていた。

 意識を取り戻した人たちが、またすぐ気絶したけど……それはごめんなさい。
 結局、ずっと気絶したままだったと思う。

「……ここが俺たちの故郷?」
 五人は数百年ぶりに、故郷の地を踏んだ。

 立ち並ぶ家々を見て、どう感じたのか。
 やはり、王都の建物に衝撃を受けているようだ。

 操竜場に降り立ったあと、竜導教会まで馬車で移動したため、いまは教会の建物の中にいる。

「会話ができる人がいないと困るでしょうし、私がついていることになるわね」
「僕が報告に行こうか」

「そう? お願いできるかしら」
「まかせて」

 ちょうど夜だったので、僕は女王陛下の許へ直接報告に行くことにした。



「へえ、相変わらずレオンは面白いわね」
 王都を出発してからのことをすべて話したら、女王陛下は呆れ半分、笑い半分で聞いてくれた。

 途中島芋のくだりを話したら、「技国で栽培するといいかしら」と相づちをうち、希望者の五人を連れてきたと話すと、「でかしたわ。これで困らないわね」と喜んだ。

「報告は以上になります」
「面白かったわ。ロザーナは今頃、報告書を作っているのかしらね。細かいことは、それを読むことにするわ」

 島民とのやりとりは、古代語を使用しているので、僕には分からない。
 そのため、報告のメインの部分が、かなりあやふやになっていたりする。

「はい。僕が理解できた部分だけでは限界がありますので、よろしくお願いします」
 今回の功労者はロザーナさんだ。

「それと飛竜を伴って一度島へ向かわせるのはいい案ね。今度用意させるので、行ってちょうだい」
「はい、よろこんで」

 飛竜の速度に合わせると島まで倍以上の日数がかかるが、たどり着けるのがシャラザードだけというのは、どうにも使いにくい。
 そのため提案してみたのだが、女王陛下は乗り気になってくれたようだ。


「島の話はこれくらいにして、レオン」
「はい」
 話が落ちついた頃になって、女王陛下はふと思い出したかのようにそう切り出した。

「商国の領土宣言だけれども」
「はい」

「竜国も少しちょっかいをかけることにしたの。これはレオンにも関係するから、聞いてちょうだい」
「…………はい」

 竜国もちょっかいをかける……このまま耳を塞いで「わー」とかやりたい案件だ。

「まずは、そうね。魔国との和平交渉だけど、条件は無事まとまりそうよ」
「それはおめでとうございます」

「魔国が握っている楽園の情報は全て貰ったわ。それと、天蓋てんがい山脈に派遣した竜の調査隊も戻ってきたの」

 僕が島に行っている間に、いろいろと進展があったようだ。
 女王陛下は扇を口元にあてて、ニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。

「天蓋山脈に移り住んだ魔国の住人と商国の人間が衝突したり、謎の荷馬隊が目撃されたり、領土宣言した先へ進もうとした者が拘束されたりと、いまあそこはとてもホットな状態なのね」

 あそこには何かある。そう女王陛下は言っているのだ。

 それをひた隠しにしているのが商国で、最近まで運命共同体のような関係だった魔国は袂を別って、竜国に情報を流している。

 そんな場所で、女王陛下が考えることと言ったら……。
「……嫌がらせ?」

「なあに、レオン。妾のことをどう思っているのかしら」
「いえ、その……」
 つい口に出てしまった。

 でもどう考えても、女王陛下は嫌がらせとかするタイプだ。
 もしくは、邪魔するタイプ?

「まあ、間違ってないのだけど」
 間違ってないのかよ!

「…………」
 今度は喋らずに済んだ。

「それでね。あそこは人が通れるルートって限られているでしょ」
「はい。人は垂直な崖を登ったり、深い谷を越えたりできませんし」

 もともと天蓋山脈など、人が自由に通行できる場所ではない。
 なんとか通れそうな道を探して、少しずつ奥へ分け入ったという歴史があるくらいだ。

「入念に調査させたところ、大きなルートは三つくらいしかないのね」

 商国が領土宣言した場所は山を四つ越えた先だ。
 そこへ至る道はほとんど決まっているという。

「だからソウランに言って、それをすべて潰してもらったの」
「……はっ?」
 マジか?

「道かどうかも分からない細道だけ、かろうじて残っているわ。手荷物を持って渡れないくらいの道なのだけど」

 ソウラン操者の騎竜は、消えない炎を吐き出す。
 岩だろうが何だろうが溶かしてしまう……道を溶かしやがった!

 もう嫌がらせの域を超えているじゃん。
 生死に関わるよ、それ。

「商国の領土……無事なのでしょうか」
「……さあ」

「…………」
「冗談よ。商国には竜もいるし、いざとなれば空から荷を運ぶでしょう」

 絶対分かっていてやっているわ。
 商国の領土宣言は、楽園探しのため。

 竜国は魔国経由で流れて来た情報しか知らない。
 商国が真実を魔国に伝えているのか、知り得た全ての情報を伝えているのか分からない。

 ゆえに竜国は、独自で情報を集めて商国を追い抜かなければならない。
 そのため、最大の力をもって商国の邪魔をしたと。

 うーん、えげつない。

 詳しく聞いてみると、「ちょっと命が危険にさらされる細道」は残してあるのだという。

 身体全体で崖にへばりつき、そのままゆっくりと数キロメートル進まなくてはならないらしいが。
 もちろん、足を踏み外せば落下。
 横殴りの強風が絶えず吹いてきて、足場もかなり脆いらしい。

 ようやくそれを抜けると、岩と木で通行止めがしてあるという。
 これは人為的に。なぜかと聞いてみたら。

「だってそこから先は、魔国の先住民がいるもの」

 先ほど話に出た、『商国と争った魔国の移住者』たちである。

 これに竜国の名は一切出てこない。ただし、そこを拠点として商国の出入りを監視するのならば、女王陛下は密かに援助すると約束したという。

「で、ですが、先人がようやく発見した山の奥に向かうルートを破壊するのは如何なものでしょうか。抗議がくるかと思いますけど」

「月魔獣が出たのだからしょうがないわよ」
 嘘だ!

 あんなところに月魔獣が出るわけがない。
 まあ、回天のときはあそこに降下した可能性はあるけど、それだってもうとっくに力尽きている。

「月魔獣が出たなら……仕方ない……ですね」
 百パーセント嘘だろうけど。

「そう。仕方ないわよね。また出るかもしれないし」

「…………えっ?」
 まだ何かするつもりなの?


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