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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 以前来たとき、ここは昔ながらの農法をしているとロザーナさんが言っていた。

 人力かつ非効率なやり方がいまだに行われているらしく、農民ひとりあたりの収穫量はそれほど多くない。

 そもそも島の住民は三百人と少ない。
 その中で農業をするのは一部の人間。
 本来ならば、昔ながらの農法で喰っていけるわけがない。

 だからこそ味は二の次、三の次で、栄養があって腹が満たせるものを延々と栽培し続けているのだろう。それこそ愚直に。

 小麦とライ麦など、竜国で一般的に栽培されている穀物を渡して、不味い芋を貰って帰る。
 一見、損したように思えるが実際は違う。

 荒れ地や砂地でも栽培できるこの芋は、今後食糧難になる大陸の救世主となるかもしれない。
「もしかして、ここに来た目的って、この島芋を手に入れるため?」

「そうよ。その『島芋』っていい名前ね。昔は芋は芋だからほかの呼び名もなかったらし、区別をつけるために今は『古代芋』って呼んでいたけど、そっちの方がごまかせるかも」

 ごまかせる……それはつまり、知られたくない相手がいるということだ。
 なんとなく分かったけど、あまり深入りするのは止めておこう。

 また面倒なことが起こるかもしれないし。

「ロザーナさん、今日はどうします?」
「今日は村の人たちとお話をするつもりよ」

「それも仕事の一環ですか?」
「ええ。頼まれているの」

 ロザーナさんは古代語が話せるからいいけど、僕が後ろをついていても意味はない。

「だったら僕はシャラザードとこの周辺を回ってみます」
 前回も少し調査したが、今回もできれば目印のような島でも岩でも見つけてみたい。

「分かったわ。もう一泊したいし、夜にまた会いましょう」
「はい。一応食糧を置いていきますね」

 僕らが食べる分は別に支給されている。
 ロザーナさんの分を置いて、僕はシャラザードのいる所に向かった。



「今日は周辺を散策したいんだけどいいかな」
『うむ、我は構わんぞ』

 問題は海ばかりで目印が何も無いってことだ。

「たとえば、ここからかなり離れたとして、シャラザードは戻ってこられる?」
『まったくもって問題ない』

「よかった。……じゃあ、遠出しよう」
 こういう所は、渡り鳥と一緒か。

 一応、シャラザードにも鳥と同じ機能はあるらしい。
 犬でも遠く離れた場所から戻って来られるっていうし、竜にあっても不思議ではない。

『主よ、なにかいま失礼なことを考えたのではないか?』
「………………いやまったく」

『ふむ……そういうことにしておこうか』

 そう言えばシャラザードの背に乗ったままでいると、昔から勘が鋭くなっていたな。
 これも魂が関係しているのだろうか。

 シャラザードが迷わず帰れるというので、僕らが住んでいる大陸からもっと離れた方角へ向かってみた。

 もし新大陸を見つけるならば、残された場所はこっちしかないからだ。

 南の海は船が通れないほどに底浅の岩礁がずっと続き、潮の流れも急だ。
 飛竜でその先に向かったこともあるらしいが、何か発見したという報告はない。

 何かあっても船で向かえないので魅力は半減。
 あまり本格的に捜索はしていないと思う。

「問題はこの海の先だよな」

 僕としては大陸かなにかが「ある」のではないかと思っている。
 ただし、シャラザードが全力で進んで十日とか二十日とかかかるかもしれない。

 そうなった場合、船での行き来は実質上難しいかもしれない。
 もちろん今日は半日で戻るのだけど。

 そして代わり映えのしない海を進む。
 ときには北へ向かったり、南に戻ったりしながら進んだが、結局大陸どころか島ひとつ見つけられなかった。

「残念だけど、あの島だけが特別ってことだよな。火山とかあったし」
 天変地異でもおきなければ、島ひとつ存在できないのかもしれない。

「シャラザード、戻るか」
『あい分かった』

 収穫はなかった。いや、収穫がないのが収穫か。同じ事、前にも言った気がするけど。

 日が暮れる頃、僕は島に戻った。
 もちろんシャラザードはちゃんと島の場所を覚えていた。

「あっ、一度シャラザードが飛竜を連れてくれば、場所を覚えてくれるんじゃないかな」
 一度行った場所を覚えるのはなにもシャラザードだけの特技ではないはずだ。

 その辺の記憶は知性とはまた別の部分ではないかと思う。
 感覚とか本能が重要な気がするし。

「おかえりなさい、レオンくん」
 ロザーナさんが出迎えてくれた。

「ただいま、ロザーナさん。収穫はなかったよ。どこまで行っても、海、海、海だった」

 それ以外はなにもなかった。退屈な海の旅だ。
 きっと人の歴史が始まってから僕が一番東へ行ったんじゃなかろうか。

「それは残念だったわね。もし新しい大陸を見つけたら、人の歴史が大きく変わるところだったのに。儲けそこなったわね」

「僕は辺境の田舎町でパン屋を営めればいいから、新大陸で儲けるのはちょっと……」

 隠居してパン屋……そのくらいの我が侭は聞いてくれるだけの貢献はしたはずだ。
 大転移が終わったら言い出す予定だけど、さすがに否とは言われないと思う。

「それでロザーナさんの方はどうなの?」
 何をやっていたのか知らないけど。

「私の方は順調よ。島から竜国に来てくれそうな人をお願いしているの」
「……もしかして、移住させるの?」

「留学……に近いかしらね。相互交流するには会話で意思疎通ができないと困るでしょう? だから若くてまだ物覚えが良さそうな人を少し……ね」

 その分働き手がいなくなるため、多めの食糧援助を先にしたようだ。
 なるほどと思ってしまった。

「相互交流か。それはいい話だね」
「でもまだ確定していないのよね。もう一日か二日かかっても大丈夫かしら」

「いいんじゃない? 一旦帰ると、また来るのは大変だし。というか、何か心残りがある感じ?」
「聞いた限りだと、竜国に行くのが不安なのと、家族をここに残すのが心配なのかな……あと」

「……あと?」
「シャラザードに乗るのを嫌がっているのよ」
「それかっ!」

 いつ喰われるか分からないとか言っている人がいるらしい。
 困ったものだ。

「けどね、これは重要なことなの。もし『楽園』が見つかって、そこに住む人がいた場合、会話が成り立つ人が必要でしょ?」

「あー。そうか」
 楽園に住んでいるのは『霧の民』に関わる人たちだ。『潮の民』と同じく古代語を使っている可能性が高い。

「というわけで、島の人に大陸の言葉を覚えてもらいたいのと、私たちの中からも古代語を話せる人たちを増やしたいのよね」

 それはたしかに重要な任務だ。
 古代語を話せる人がいるのといないのでは、今後の発展に大きくかかわる。

「ロザーナさんは納得するまで交渉するといいよ。僕はずっと付き合うからさ」
「ありがとう、レオンくん」

 こうして二日目の夜も更けていった。


 さて、明日は何をしよう。


昨日の芋、作り方はサツマイモと同じです。中身はヤーコンをイメージしています。
サツマイモは茎を地面に植えて育てるのです。私の場合毎年100本1束2500円で仕入れています。お安いですよね。
そのかわり、1000本単位でしか買えませんけど。
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