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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 僕はこれからロザーナさんと一緒に、『潮の民』がいる島へ赴く。
 なぜかこれは竜導教会としての活動になる。

「島に物資を運ぶの。教会の援助活動の一環ね」
 聞いたらちょっとよく分からない答えが返ってきた。

 竜導教会を島に出張するつもりだろうか。

「そういえば教会って、大転移で住み処を追われた人たちを援助しているよね」
 現在、かなりの数の避難民が出ている。

 彼らの生活を保護する必要があるが、国だけではどうしても手が回りきらない。
 地域に密着している竜導教会の神官たちが、そういった人たちをフォローしている。

「援助物資だし、教会が適任と思ったんじゃないかしらね。持って行く物は主に食料品と、他にも足りないと思ったものを揃えたみたいなのよ」

 なるほど、国からの援助だと、竜国に取り込まれるんじゃないかと心配するからとか?


 でも援助物資は仲良くなるのにいいやり方だと思う。

 以前ロザーナさんが島の人と話したときに感じたこと。
 どうしても竜国と比べて見劣りした。

 押しつけにならない範囲で、足りないと思ったものを中心に援助するのだろう。

 シャラザードに積み込む荷が運び込まれてきた。
 それを見て僕は驚いてしまった。馬車数台分の食糧に、他の物資も同じくらいある。

 これは大盤振る舞いだ。
 竜国の本気がうかがえる。

「はい、これは島までの地図よ。王城と教会、操竜会でも共有しているやつね」
 竜国の海岸線と島が書き込まれたシンプルなものだ。

 島の名前は……火乃粉ひのこ島と書いてある。
 これ、覚えられないくらい長ったらしい古代語を僕が簡略したものだったな。

「地図はよく出来ているけど、だれもたどり着けなかったと」

「そうね。理由はさまざまあると思うけど、今回は休憩無しで飛びたいの。できるかしら?」

 海上に漂って一夜を明かした場合、並の影響で向きにずれが生じるかもしれない。
 それを無くしたいのだろう。

 シャラザードに一晩中飛んでもらいたいようだ。
「シャラザードは大丈夫だと思う。これだけ荷物を積んでもね」

 あいつの体力は底なしだし。
「無理してもらうかもしれないけど、それで行ってくれるかしら。お願いね」
 今回は、絶対に失敗したくないらしい。

「分かった。シャラザードもいいよな」
『うむ。我は問題ないぞ』

 地図からすると一旦竜国の南の町チュリスに向かってから海に出た方がよさそうだ。

 シャラザードに荷物を積み込むのに半日。チュリスの町までやはり半日。
 合計一日だが、海上で睡眠不足になることを考えて、チュリスの町で一日休みを入れた方が良さそうだ。


 さてこの地図だが、島までのおよその距離が書かれている。
 といってもかなり大ざっぱだ。

 ――五千キロメートル、誤差千キロメートル

 四千から六千……ようするに凄く遠いということだ。

「島からの帰りで、シャラザードがまる二日飛んだんだよね」
 あのときは全速力ではなく、計測しながら一定の速度で飛んでいた。
 それで二日間かかった。

 ロザーナさんが「飛竜ではたどり着けなかった」と言っていたが、もしかするとそれと同じように、等速飛行で行ったのではなかろうか。

 飛竜が一定速度で進むにはかなり速度を落とさなければならない。
 五日くらいかけて着けばいいと考えたのならば、途中で迷ったのも頷ける。


 他に目印となる島とかがあればいいが、そんなものはない。
 うまくいかないものだ。

「シャラザード、僕らは全速力でいくぞ」
『あい分かった』

 五千キロメートルの距離ならば、朝出発すれば翌日の昼前には着く。
 それで見つからなければ、周辺を探したっていい。

 水も食糧も大量に積んでいるので、大丈夫だろう。
 そんな軽い気持ちでシャラザードを飛ばした。

 そして迷子になる……ことはなく、予定通り翌日の昼前には島を見つけることができた。
 実はホッとした自分がいたりする。

 少し周辺を回って見つけたのは内緒だ。
 やや南よりにずれて飛んでいたらしい。



「あー、そういえば火山があったっけ?」
 火口付近から、うすく煙を上がっている。

 これは火山がまだ生きている証拠だ。

「何度も大きな噴火があって、土地は何層にもわたって灰が降り積もって固まったものらしいわよ」

 前回聞いたのだろう。ロザーナさんがそんなことを言った。

「そういえば竜導教会はなくて、火山を信仰しているだっけ?」
「そうね。もともとは自然信仰だったらしいけど、火山が最も目立つから火山信仰になったみたいね」

 ロザーナさんも当時の会話を思い出している。

「よし、島に着いたし、一旦周辺を回ってから降りるね」
 警戒されないようにシャラザードに島の上を何度か旋回してもらう。

 その後、町の外れにシャラザードをそっとおろした。

「この場所、久し振りだな」

 眼下には小さな町とも呼べないような村がある。
 後ろには森と奥に火山が見える。

 こんな場所でも人は暮らしていけるのかと思うほど、こぢんまりとしている。

「来たみたいね」

 下から青年と老人がやってきた。
 この島は、火山に近くなるほど地面が高くなっている。

「老人は見たことあるな。たしか……タ、タラちゃん?」
「タイランね。とりあえず私が相手をするわ」

 古代語が使えない僕の出番はない。
「うん。任せるよ」

『我は魚でも捕りに行ってよいか?』
 シャラザードが呑気な声を出す。

「一昼夜かけて飛んだってのに、ずいぶん元気だな。荷物を下ろさないと無理だからな」

『ふむ。そう言えばそうか』

 ロザーナさんが老人――タイランさんと話している。
 まだ時間がかかりそうなので、僕はシャラザードによっかかりながら、しばし目を閉じた。


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