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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 シャラザードに乗って王都に向かい、夜になってようやく着いた。
 いつものように操竜場に降り立つ。

 シャラザードを竜舎に預けたあと、事務員に到着を告げた。

「レオン操者ですね。無事伝達の使者と会えたようですね」
 どうやら、僕に知らせに来た竜操者はまだ戻ってきてないらしい。

 シャラザードが追い抜いたようだ。

「到着したことはこちらで連絡しておきますので、明日の午後に竜導教会へ向かってください」
「……竜導教会ですか?」

 竜導教会に行けなんて、初めてのことだ。
 ちょっといつもと違う。

「次の予定から、しばらく管轄が移るようですね。竜導教会に赴いて、そちらで確認してください」
「分かりました」

 僕の管轄が竜導教会に移るのは確定らしい。
 事前に話がなかったことから、僕でなければいけない理由がありそうだけど。

「ではシャラザードの乗り入れも竜導教会になるんでしょうか」
 あそこも本部は竜がそれなりにいたりする。

「そうなりますね。レオン操者は騎竜とともに竜導教会に一旦移動になりますので、竜舎も移動になります。そちらで詳細は聞いてください」

「分かりました。明日聞いてみます」
 ここではこれ以上分かりそうも内。
 しかし移動って、ガイスン本部長の希望だろうか。


 翌日、僕は竜導教会に足を運んだ。
 名前を名乗ろうとしたら、すぐに案内してくれた。顔パス?

 ガイスン本部長のいる執務室に向かうのかと思ったら、来客用の部屋に通された。
 ここもいつもと違う。

 緊張しながら待っていると、竜導神官に連れられて、ひとりの人物が現れた。

「お久しぶりね、レオンくん」
 そう挨拶する人物はというと……

「ロザーナさん!? どうしてここに?」

 ロザーナ・へディン。
 僕が竜の学院に入学したとき、となりの王立学校の三年生だった先輩だ。

 在学中にいろいろとやらかして実家から勘当状態で、卒業後も王都に残って古代語の研究をしていた。
 どうやらどこかで見初められたらしく、いつの間にか僕と同じ女王陛下のための集団である忠義の軍団(ロイヤル・レギオン)の一員として活動していた。

 そのロザーナさんが僕の目の前にいる。

「会いたかったわ。レオンくん……いえ、英雄様と呼べばいいのかしら」

 再会早々、小悪魔的な表情でとんでもない言葉を投げかけてきた。
 こんなお茶目なことをするのは、まさしくロザーナさんだ。

「そう呼ぶのだけはやめてください。本当にお願いします」
 できれば永久に忘れてください。

「ふふふ……しばらく会わないうちに格好よくなったかしら? 背が伸びた?」
「どうでしょう。僕にはさっぱり」

「そうね、表情が凜々しくなった……気がするわ。それとも気のせいかしらね」
 そんなロザーナさんは、初めてあったときとちっとも変わってなかった。

 神官が退出したあと、僕らはひとしきり旧交を温めた。

「……ところで、ロザーナさんは僕の移動と何か関係があるんですか?」
 古代語の研究をしていたはずだが。

 僕がそう言うと、ロザーナさんは少しだけ困った顔をした。

「あのね、私は最近まで旧王都で研究をしていたのだけど、回天のときに被害が出てしまったのよ。それで一時期、ヒューラーの町に避難していたの」

「それは大変でしたね」
 回天では、多くの人々が月魔獣の被害を受けた。

「そのせいで研究が滞ってしまって、これから挽回しようかってところで呼び出しを受けたの」

「呼び出ですか。それはどんな?」
 そこでロザーナさんは少し固まった。

「レオンくん。今回のこと、何か聞いているかしら?」

「今回ですか? 昨日まで陰月の路付近で狩りをしていたので……あっ、今日からしばらく所属が竜導教会になるって聞きましたけど」

「そう……だったら、そうね。少し長い話になるけど、聞いてくれるかしら」

 ロザーナさんが話してくれた内容はたしかに長かった。
 要約するとこうだ。

 以前僕とロザーナさんで、『しおの民』を捜索するため、海上をしらみつぶしに探したことがあった。

 途中嵐に見舞われたりしたけれども、運良く島を発見。
 そこに『潮の民』が住んでいたことを突き止めた。

 楽園ではなかったものの、貴重な情報を得ることができたし、他に『潮の民』がいないことも確認できた。
 海上の捜索はそれで打ち切りとなった。

「レオンくんが作成した地図をもとに二回、飛竜が島に向かったのだけど、どうやら島は見つけられなかったのよ。食糧もギリギリだし、飛行距離も長いから、少しのずれでも厳しいのだけど」

 目印がなにもない海上だと、角度が一度でもずれると大きな誤差となる。
 また一晩経つと、方角を見失うこともあり得る。

 島の再発見は想像以上に大変らしかった。

「あー、分かる気がします。小型の飛竜だとシャラザードの半分も速度が出ませんからね」

 シャラザードが三日かかる距離ならば、飛竜だと六日かかる。
 ある意味、見つからないのも仕方ないと言えた。

「大勢へ編隊を組んでいきたいところなんだけど、回天と大転移が始まってしまったでしょう。島探しは後回しになっていたのよね」
「分かります」

 ロザーナさんの話はどうやら、『潮の民』が住む島に関することらしい。

 聞けば、同じ研究者でもロザーナさんはかなり優秀だとか。
 もとから古代語が好きで幼少時から古代文字に親しんでいたことで、年齢に見合わず、かなり博識であるという。

 そして島で古代文字を操る民族との会話。
 あれで、「文字」としてしか伝わってなかった言語の生の声を聞けたわけである。

 ロザーナさんの書いた報告書はかなりの価値があると判断されたらしい。

 そして最近でてきた『楽園』の話。
 楽園に人が住んでいるのならば、『潮の民』と同じように古代語を使用している確率が高い。

 事前に古代語を習得するか、話せる者を増やしておきたい。
 そう考えて、もういちど島へ行く必要性が高まったのだという。

「でも難しいのよね。だったら、あの時のメンバーで行けばいいのよということになったわけ」

 今回の任務は、ロザーナさんを連れてあの島へ向かうこと。

「贈り物を沢山用意したから、それを載せられる竜というと限られちゃうのよね。いろいろ考えて、レオンくんと私が最適だろうということになったのよ」

 たしかに最適だろう。
 シャラザードならば、場所を覚えているかもしれない。

 行きは嵐に遭遇して雲の上を飛んだが、帰りは真っ直ぐ帰ってきたわけだし。

「お土産を渡してどうするんです?」
「できれば、数人王都に連れてきたいと思っているわ」

 こともなげにロザーナさんはそう言った。


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