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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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 怪我の療養が終わって、久々の実戦……岩を投げたのは数に入れないことにする。
 僕とシャラザードが任された場所は、陰月の路の中でも北の方。

 本来ならば、複数の編隊が巡回するくらい広い場所だ。
 では、なぜそんな所を任されたかというと……。


 ――しゃげごぉおおおん(やったるでー)!


 ターヴェリとアンネラがそのくらいの範囲を任されているからだ。
 あとシャラザード、うるさい。

「おい、シャラザード、もう少しペースを落とせ」
『ぬぉおおおお!』

 聞いていないな。
 久し振りの月魔獣狩りで、シャラザードのテンションがやばいことになっている。

「今日はもう、あれだな。好きにさせていいや」
 シャラザードにしてみれば、待ちに待ったということなのだろう。

「……それにしても、アンネラ。学院の授業はいいのかな」

 操竜場で確認したところ、アンネラは陰月の路に行ったっきりだ。
 シャラザードが怪我療養しているため、トップの撃破数を誇っている。
 まだ学院生なのにだ。

 それを知ったシャラザードは、激昂した。自分もやると。
 いまだ、かなりライバル心がある。

 操竜会へターヴェリと同じくらいお願いしますと打診したら笑われた。
「さすが英雄ですね」と言われたけど、全然違うから。

 シャラザードは月魔獣が絡むと面倒くさい。
 あとで自分の方が狭いと知ったとき、怒り狂いそうなのだ。

『主よ、次にいくぞ。さっき向こうの方で集団を見つけたのでな』
「おまえ、戦ってたじゃん。よく見つけたな」
 僕は気づかなかったわ。

『ではいくぞ』
「分かった。好きにしていいよ」

 それだけでソワソワし出したので、すぐに了承した。
 まあ、これだけ上機嫌なシャラザードを見るのは久し振りだ。

 今日は多くの月魔獣を倒せるので、嬉しいのだろう。

「……しかし、大型種が多いな。この地域の半数が大型種って異常だぞ」

 事前に聞いていた通りだが、これほど多いとは思わなかった。
 シャラザードが満足しているならばいいのだけど、僕の前の編隊は大丈夫だったのだろうか。

 この辺りの適正は、中型竜の編隊が二つと、小型竜の編隊が四つか五つくらいらしい。
 ターヴェリたちも同じ広さを巡回しているようだが、アンネラは大丈夫か?

 竜と違って、人間はそれほど体力があるわけではない。
 急上昇、急降下、加速や減速、それに戦闘が加わるのだ。
 一日八時間も九時間も身体を揺らされたら大変だ。

 十日間くらいは気力で持つかもしれない。
 だが二十日、三十日と休みなく続けば、感覚がマヒしてゆき、小さなミスが連発する。
 注意力が散漫になり、終始眠気が襲ってきてついには……ということになりかねない。

 僕は鍛えているけど、それでもシャラザードの無尽蔵とも思える体力には敵わない。
 どこかで強引にでも引き揚げさせないと、朝まで動き回ったりするのだ。

 そう考えると体力が少なく、経験の浅いアンネラの体調が心配だ。

「……シャラザード、右から来たぞ」
『うむ』

 いけない。ここは考え事をしていい場所じゃない。
 シャラザードが無双しているとはいえ、月魔獣が脅威であることは変わらない。

「まして目の前にいるのは大型種だ。危ない危ない……あやうくまた物思いに浸るところだった」
『ん? 主よ、どうしたのだ?』

「気を引き締めないとなと思ったところだ。後ろから飛行種が迫っているぞ」
『そうだな。地上の連中ばかりにかまけて隙を見せると、後ろからやられそうだわ』

「飛行種は通常の月魔獣だから、おまえは大丈夫だろう」
 危ないのは僕だ。

 疲れていると、こういう死角から来る月魔獣を見逃したりして危険なのだ。

「……ん?」
 あれ?

『どうした、主よ』

「なぜ僕は後ろから来る月魔獣が見えたんだ?」

 シャラザードと一緒に前しかみていなかった。
 後ろの……しかも飛行種ということは、後頭部を見上げなければ気づかないはずなのに。

『うむ。それは何度か人竜一体じんりゅういったいを経験したせいではないか?』
「どういうこと?」

『主と我は魂をつなげたことがあるしな』
「それで?」

『? それだけだが』

「よく分からないよ!」
 それで説明は終わりか。
 シャラザードはそれ以上説明する気がないらしい。

 どういうことか自分で考えてみた。

 シャラザードは僕より目がいい。
 ただこれまでの戦いで、目がいいというだけでは説明しきれないことも多かった。

 木や岩の奥にいた月魔獣を見つけたり、周囲にいる数を把握したり、いそうな場所に直進したり。
 これは、シャラザードの勘のなせる技かと思っていた。


 ――なんとなくそこにいる


 そういえば僕も、シャラザードと一緒に狩りをしていると、そう感じることがあった。
 思い返せば、感じるようになったのは最近だ。

 人竜一体のなせる技と言われれば、「そうなのかも」と思える。

 目の前で月魔獣の破片が飛び散る。
 その後ろから、やってくる月魔獣の姿が見える。

 来たのは大型種だ。大きい。シャラザードと遜色ない大きさ。
 大型種は、人々に絶望を与える存在。

 その足下、半ば土に埋もれていたものが目に入った。
 地上に現れている部分だけで分かった。

 地竜だ。ここで戦い、息絶えたのだろう。
 地竜の竜操者は無事だろうか。

 月魔獣が大挙している中で、騎竜を失った竜操者が無事でいられる可能性は限りなく低い。

「シャラザード、やれ!」
『あい分かった!』

 一体の大型種を押さえ付けた状態でも、シャラザードはその突進を止めた。
 シャラザードの身体が揺れ、衝撃が僕にも伝わる。

「シャラザード!」
『ぐぉおおおおお!』

 二体の大型種を押し戻し、ひっくり返し……いや、空中に放り投げた。

「……すごい」
 巨体が宙を舞い、地響きを立てて地上に落下する。
 シャラザードが間髪入れずに止めを刺す。

『魂がつながれば、我はもっと強くなり、もっと戦えるわ』

 それはシャラザードの魂の叫びのようだった。

 人竜一体……それって僕だけでなくて、シャラザードにも効果があるの?


先日旅行に行きまして、日本酒「黒龍」をみつけて、思わず買いました。まだ飲んでいません。

書籍版の方ですが、読まれた方はいかがだったでしょうか。
内容を吟味して結構1冊に詰め込んだ気がします。久しぶりに余白の少ない本になったなと。
まだの方も、よければお手にとっていただけたらと思います。

『前略母さん、魔界は今日も世紀末ヒャッハーです』も、第2章ワイルドハント編に移りまして、毎日2話更新継続中です。
引き続きよろしくお願いします。
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