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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第7章 大転移-楽園編

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「レオン、よく来たわね」
 女王陛下が笑顔で出迎えてくれた。

「お久しぶりです、女王陛下。……すでにご承知のことと思いますが、無事指令を果たせましたこと、ここにご報告申し上げます」

 報告書は書いて渡してあるので、本来僕はここに顔を出す必要はない。

 だが、王都に戻ってきて挨拶もなしだと、あとでいろいろ言われる。絶対言われる。
 というか、イジられる。全赦ぜんしゃを与えたのになぜ会いに来ないのかと、頬を膨らますことだろう。

 だから僕は顔を出す。それが正解だと分かっている。
 ……分かっているのだけど、ときどき憂鬱になる。

 女王陛下はなぜか僕を驚かす。
 予想すらしていなかったこと事を伝えて、大いに混乱させてくれる。

 気持ちを落ち着けて、何があっても動じないようにしないと、いいように足先で転がされるのだ。

 だからといって、さっと来て、さっと帰るだけだと意味は無い。
 ちゃんと情報も仕入れておかないと、気がついたら外堀がすべて埋まっていたなんてこともありえる。

 とにかく女王陛下は危険なのだ。

「指令? そういえば、あったわね」
 忘れていたのか! 超重要な指令だったはずなのに。

 これはあれか。女王陛下一流の冗談だろうか。僕を驚かす作戦なのか。
 それとももうあの指令事態、振り返る価値もないとか? まさかそんなはずはない。

 僕に与えられた指令は、魔国王暗殺だった。
 吹けば飛ぶようなものではないはずだ。

 ということは、冗談で言ったわけだ。
 まったく、女王陛下はお茶目だ。

「ねえレオン。あの『楽園』が見つかりそうよ」
「――ブフォッ!」

「やあね、汚いわよ」
「な、な、なんと言いました?」

「だから、楽園が見つかりそうなの」
 暗殺指令が吹けば飛ぶ情報が来た!

「それは事実でしょうか?」
 楽園って……あれだけ大騒動して見つけられなかったやつだろ。なぜ急に?

「商国が領土宣言したわね」
「はい。巷間はその噂で持ちきりです」

「あれは楽園の場所を見つけたからよ」
「そうなのですか?」

 ちょっと驚いた。
 楽園と領土宣言……もしかしてその場所が楽園とか? まさか過ぎる。

「天蓋山脈の中にあるのは確定のようね。商国が領土宣言したその先にあるみたい」
 突然の領土宣言はその布石だったらしい。

 竜国はいま、魔国と和平交渉をしている。
 さきの戦争が終わったとはいえ、国家間ではいまだ戦争継続中。

 とっとと和平を結ばないと攻め込むぞ、と竜国が言っているわけだ。

 ゆえに押しているのは竜国。
 魔国はいろいろ譲歩を引き出されている途中で、その中に『楽園』に関する情報も含まれていたと。

「和平はまだだけど、情報を先に貰ったわ。価値があるものだから、先に渡した方が有利と考えたのね。新王も侮れないこと」

 女王陛下はコロコロと笑う。

「申し訳ありませんが、女王陛下。とても興味がありますので、詳しく教えて戴けないでしょうか」

 楽園の情報は、結構マジに教えて欲しい。
 もう魔国王暗殺なんか、忘れてしまうくらいの衝撃だったし。

「そうね。……まだ和平交渉の途中であるから、完全なものではないわよ。裏も取れてないし」
「構いません!」

「ふふふ……」
 不敵に笑う女王陛下は、「仕方ないわね」と教えてくれた。

 魔国と商国が手を組んで楽園探しをしていたのは今は昔。
 途中から、商国が情報を一手に握ることになったらしい。

 理由は、『魔探またん』が残した暗号の完全解読。
 解読に成功した商国は、魔国に情報を渡さずに独自に楽園探しを行ったらしい。

「それでも魔国はわずかな痕跡から、ある程度、真実に到達したようね」

 西の都を占領したとき、残された資料から情報をつなぎ合わせ、かなりの精度で暗号を復元できたという。

「なるほど、西の都を襲ったのは、物資の奪取と楽園の情報取得のためだったのですね」
 重要な資料は僕も持ってかえちゃったからな。

「仲違いしたから、本来得るはずだった報酬とでも思ったのでしょうね。ほとんどの資料は持ち去られたか、破棄されていたようよ」

「えっ? それでは、どうやって?」

「とるに足らない資料は残されていたの。それを使って物資の移動や、人の流れをつぶさに追って真実にたどり着いたようね。探索に必要な物資なんて限られているでしょ」

 多くの人間を捜索に当てた場合、特殊な道具が多数必要となる。
 物の流れや、人の動きを追うことで、目星がついたらしい。

 魔国と商国がまだ同盟を結んでいたころ、情報共有していたことも大きかったようだ。

「いま領土宣言した場所の奥だけど、秘密があるようね。あそこには、隠された洞窟があって、その先を進んでいくみたい」

 自然にできた洞窟があり、それがかなり長いらしい。
 全長十キロメートル以上あるとか。

 どこにつながっているか分からないが、洞窟から出て、さらに山を六つ越えたところにある洞窟を抜けた先が楽園であると分かったそうだ。

「問題は洞窟がどこにあるのか、出口はどこなのか、そこからどの山を六つも越えなければならないのよね。そこに現れる最後の洞窟。商国はもう楽園を見つけたのかしら」

 ガイスン本部長が言った内容。
 商国は、天蓋山脈の山を四つ越えた場所を領土宣言した。

 その手前の土地を竜国が押さえればいいと言ったが、先に楽園を押さえられてしまえば意味はなくなってしまいそうだ。

「では、竜国より先に商国が見つけてしまったのでしょうか」
「いま飛竜を向かわせているわ。それで分かるでしょう」

 驚きの連続だ。

 とにかく、楽園が見つかったのならば……いや、まだ見つかっていないのか。
『魔探』の暗号が解けて、だいたいの場所が分かったというだけの段階らしいし。

「しかし、魔国はよくそんな情報を出してきましたね」
 もったいない。秘匿した方がよかったんじゃないのか?

「情報はあってもそれに力を割けないのならば、その情報は無価値でしょ」

 魔国はいま、生き残るのに必死だ。食べるためにと言い換えてもいい。
 その状態で商国と競うことなど、できないのかもしれない。

「そういえば、天蓋山脈で魔国と商国が衝突したと聞きましたが」
 あの話を聞いたのは、領土宣言の前だったか、後だったか。

「そうね。商国は呪国人の傭兵を多数引き連れて、山に入っているのよ」
 楽園を手中にするために、戦闘に長けた者たちを連れて入山したらしい。

 そこへ生きる術を求めて山に入った魔国人たちとかち合い、戦いになったという。
 天蓋山脈はいま、非常に危険な場所になっていそうだった。

「それと商国がらみで、もうひとつあるの。どうやら、すでに先を見越して、商国が物資を買いあさっているようなの」

「……マジですか」

 商国が物資を買いあさる。
 それは非常にヤバい状況ではなかろうか。


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