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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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○魔国 レイヴォスの町

 ここは、魔国王の政策に反対する者が集まる町。

 レイヴォスの町は魔国の南部にある。
 竜国の国境からは離れており、やや天蓋山脈に近い。

 竜国へ遠征に向かった魔国軍の情報が入ってきた。

 報告によると、ホーリスの町を占領した魔国軍は、そのままソールの町へ攻め上るも、途中で王を喪い、あえなく撤退。

 その後、ホーリスの町に立てこもったまま竜国軍と戦ったものの、籠城戦のすえに敗れたという。

 報告を受けて、バルトゥは「ひとりになりたい」と同志たちから離れて自室に向かった。

 バルトゥのもとに集まった者たちは多い。
 そしてバルトゥは、いくら政敵として王から放逐されたとはいえ、実の親子である。
 その死を悲しんでいるのだろうと思い、バルトゥがひとりになるのを見送った。

 彼ら反魔国王派としても、これから論じることについてバルトゥがいない方が良いとも考えていた。

 王が身罷られた場合、その後を継ぐのは血を受け継いだその息子なのだから。
 つまり話の中心はバルトゥのことになる。


 こうして、ひとり自室に向かったバルトゥだったが、もちろん完全にひとりという訳では無い。

 バルトゥを護衛する者がいる。彼が青年になり、公の場に姿を見せるようになってからずっと付き従ってきた者。

「どう思う? カイラーン」
 部屋にだれもいないことを確認してから、バルトゥは傍らに控えている男――カイラーンに尋ねた。

「計画の通りかと思います」

「そうだな……それは私にも分かる。だが、報告を聞くと……」

「完全に計画通りとはいかないのが世の習わしかと。戦争は軍と軍との戦いではありますが、読みあい、騙しあいすら行われます。すべてこちらの思い通りにいかぬのも定め」

「であるか」
「…………」

 バルトゥは室内で立ったまま、頭を巡らせる。
 そこには、魔国だけでない、大陸全土の地図が飾られていた。

 そこへ歩み寄り、魔国の各都市へ指を這わせていく。

「いま首都は月魔獣によって占領されているな」
「……はい」

 魔国首都イヴリールとその周辺を指でなぞる。

「そして陰月の路は、このような形で移動しているのであったな」
「その通りにございます」

 ちょうど首都を挟んだ南北に線が書き加えられている。
 バルトゥが自分で書いたものだ。

 作成される地図には、かならず陰月の路が書き込まれている。
 人々がそれを忘れないよう、どこが危険か一目で分かるよう、すべての地図にそれはある。

 今後、全ての地図が刷新されることになるだろう。

 バルトゥは竜国との国境、ウルスの町がある当たりを指した。

「北方方面軍がソウレルの町を落としたが、その後はどうなった?」
「いまだ詳しい報告は入っておりません」

「そうか……陰月の路にも近く、あのあたりは混乱しているからな。北に向かった者たちは?」

「無事、目的の地へたどり着いたとのことです。それ以降の報告はまだ……陰月の路を渡るのは困難を極めますので、商人を介して一旦海に出てそこから技国経由で情報が来る手はずになっております」

「なるほど。だったら、時間がかかるのも仕方ないか」

 バルトゥは指をずっと左側、天蓋山脈の方に向けた。

「こっちはどうなっている? 順調か?」
「いえ……」

「? 何か問題が?」
「入植した者たちは、商国の者と現地で交戦しているようです」

「そうか。天蓋山脈の中で拠点を築くことができる場所は限られている。とくに村を建設できそうな場所はとくに」
「はい」

「かち合ったということかな」
「それもあるでしょう。商国の者たちは多数の呪国人を連れていますので……」

「楽園探しか」
「そのようです」

「……困ったものだな、強欲な商人というものたちは」
「まったくです」

「分かった。そちらは早急に手を打とう。兵を送る……居住地域を増やすという名目でいいかな」
「問題ないかと思います」

 もしだれかが今までの会話を聞いていたら、奇妙に思ったであろう。

 いま話している相手――カイラーンはバルトゥの護衛である。
 歳はバルトゥと同じ四十代半ばくらい。

 カイラーンの服装は、目立たない一般的なもの。ただし、剣で生きる者ではなく魔道によって身を立つ者独特の雰囲気を持っている。

 カイラーンはバルトゥ専属の護衛であり、魔道使いである。
 一般には『ホット』と呼ばれている。

 魔国以外にはいまだ名が知られていない。
 竜国も技国も、彼の素性はまだ掴んでいない。

 もし、竜国がカイラーンの使う魔道を知ったならば、こう名付けたであろう。

 ――『高熱こうねつ』と

 カイラーンの魔道『ホット』は生き物の熱を上げることができる。
 ただし下げることはできない。

 彼が魔道を振るえば、爬虫類はちゅうるいすら寒冷地で自由に活動できるだろう。
 そういう魔道だ。

 バルトゥとカイラーンは出会ってよりずっと同じ時を過ごし、互いに無二の存在として認識している。

 もしレオンがカイラーンの顔を見たら、こう呟いたことだろう。

「似ている」

 もちろんこの場にレオンはいないし、ハルイもいない。
 ゆえにそんな呟きが聞かれることはなかったし、室内にいる二人にはまったく関係のないことであった。

「カイラーン」
「はい」

「父上……いや、陛下の死は既定路線だった」
「……はい」

「私はこの日のためにここにいる。……ついて来てくれるか」
「もちろんでございます」

「ならばまず王になろう。そして国民を導く」
「お供致します、どこまでも」

「ありがとう、カイラーン。さあ、魔国の未来を掴みに行こうか」
 カイラーンは完爾と笑った。


 この日、魔国王ロイス・フロストの死を受けて、その息子であるバルトゥ・フロストが即位を宣言。名をバルトゥリオスと改めた。

 魔国に新王バルトゥリオスが誕生した瞬間であった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

この章もそろそろまとめに入っています。
今まで、明かされなかった(レオンが知らなかった)部分含めて、あと数話で全体像が語られる感じです。
伏線の回収ともいう。

本章『竜魔編』は512話(6月28日投稿分)で完結し、翌日から第7章『楽園編』へと続きます。
最終話(512話)だけ、少し話が長いです。

それでは引き続きよろしくお願いします。
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