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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第1章 魔国蠢動編

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「学校長が、これはまた鬼のような人でね」
 ロザーナは自嘲気味につぶやく。

「前代未聞だ、学校の品位を汚す行為だと大怒り。反論したいこともあったんだけど、あれだけやらかした後だと、してもしょうがないしね」

 何時間も怒られることになったそうな。
 話を聞いた限りでも、このひとの自業自得だと思う。

「それでまあ、私は謹慎を言い渡されたの。半年間、竜の学院にかかわるいかなる行事にも参加不可。それで謹慎の開始が新年の初日なの。つまり、その年の竜迎えの儀には参加できなかったわ。大喧嘩した時点で私を選んでくれる目はなくなったんだけど。それでこの前の入学式も、今回の顔合わせ会も駄目。さっきも言ったけど、出たところで私の悪評は広まっているから、意味はないのだけどね」

 ふぅーとロザーナはため息を吐いた。
 これだけみると、生活に疲れた主婦みたいだ。

「その喧嘩相手はどうなったの?」

「同じ罰が言い渡されたけど、もう学校にはいないわ」
「退学とか?」

「いいえ。さすがに親が怒って呼び戻したみたいね。ここに残ってもパトロンになれる目はないし、まともな友人関係はもう無理だし、一年間を棒に振るより、地元でさっさと結婚でもした方が本人のためでしょ」

 卒業の証は醜聞とともに語られるのか。
 一年間我慢して得られるのがそれじゃ、諦めてもしょうがないのか。

「ロザーナ先輩は、去らなかったんですね」

「私の場合は逆で、戻ってくるなと釘を刺されたわ。卒業しても帰れるのかしらね。半分勘当されたようなものよ」
 なかなかに壮絶だった。

 ここに入るために相当な努力をしただろうにあっさり勘当とは、なんて波乱万丈なんだろうか。

「というわけで授業をサボったけど、これで謹慎期間が延びようがもう関係ないわけ」
 達観していた。

「それで君たちがここにいるってことは抜け出して来たのよね。顔合わせ会に出る必要がないってことかしら」

「僕は父の縁故でパトロンが決まっていますので」
 バランはきっぱり言った。
「王都出身だったわよね」
「はい」
「まあ、しょうがないか。そっちのお嬢さんは?」

「わ、わたしは……嫁ぎ先の方にパトロンになっていただくので、ひ、必要ないです」

 スニはおずおずと……だが、ハッキリ言い切った。
 震えているが、怖いのか?

「嫁ぎ先って貴族? それとも領主の縁者かしら」
「り、領主の息子さんだそうです」

「あら。大出世じゃない。いいひとを見つけたわね」
「あ、ありがとうございます」

 ガタガタ震えているぞ。
 スニには、いまロザーナ先輩が大蛇に見えているのかもしれない。

 シャーっと口を大きく開けて威嚇して、背後には雷鳴が轟いているのだろう。

「最後はあなたね」
 ロザーナ先輩の興味は僕に向いたわけだけど。

「僕は未定ですね」
 俄然、目が光る。

「ということは、まだフリーだと?」
「そういう勧誘が嫌なので抜け出してきたんですよ」

「でも、いつかは決めなきゃいけないんでしょ。しかも後になればなるほど、勧誘はひどくなるわよ」

「そうですね。アテは……あるんですが、あるのかな? まだぜんぜん決断していない状況でもあります。今日の会は、自己紹介だけして抜け出してほしいと言われましたから」

「ふうん。ということは、外部か一年生ね。会のことを少しでも知っていれば、自己紹介だけで抜けてきなさいなんて言うはずもないもの」

 なるほど。うがった見方だが、合っている。
 それとテーブルに座らされたあの状況は、なかなか抜け出せるものではない。

「相手がだれなのかは、ご想像にお任せします」

「それで、あなた自身の気持ちはどうなの? なんだかんだ言っても、決めるのは本人なわけだし」
 グイグイ来るな。

「実際に逃げてきているんだから、分かるんじゃないですか?」
「……そうね。だったら、名前だけでも教えてもらえるかしら。三人とも」

 諦めないつもりだよ。
 まあ、名前くらいいいか。どうせ、各方面に知れ渡っているわけだし。

「僕はレオンです」「バランと言います」「わ、わたしはスニです」
「そう、今後ともよろしくね、レオンくん」
 僕だけ名指しかよ!

 さりげなく腕を絡めてきたので、スッと身を引いた。
 アテが外れてヨロけたようだけど、僕のせいじゃないよな。

「では僕らはそろそろ失礼します」
 終了時刻になったようで、下が騒がしい。

「あら、もうそんな時間?」
「ロザーナ先輩が来たのはもう遅い時間でしたからね」

 顔合わせ会を途中で抜けて出して、テラスに避難してきた。
 その後でいろいろ雑談をしてからだから、それなりの時間が経っていたと思う。

「時間じゃ、仕方ないわね。……それじゃ、レオンくん。またね」
 ウインクだよな、いまの。

 目から火花が出るくらいバチバチやっていたけど。
 バランもスニもドン引きじゃないか。

 僕ら三人はそそくさと階段を下り、帰りはじめた同級生たちの中に紛れた。

「……ふぅ。強烈だったな、最後」

 僕の感想に、スニがうふふと笑顔を浮かべた。
 さっきまで顔が強張っていたので、やっぱりロザーナ先輩が怖かったようだ。



 なんにせよ、これで初めての顔合わせ会が終わった。
 残りはあと四回だ。……ふぅ。

 今回の成果としては、変な三年生との出会いがあったくらいだろうか。
 それと、テラスが王立学校内で一番落ち着く場所だというのが分かった。

 うん、これは収穫だ。今後、この学校でなにがあるたび、あそこへ逃げればよさそうだ。

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