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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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 僕はなんとか報告書を書き上げた。

「父さん、できたよ」
「そうか。俺の方も書けたな。……じゃ、連絡を取るか」

 僕の報告書は、女王陛下の指令、魔国王の暗殺についてだ。
 父さんのは……ソールの町を襲おうとした連中についてだろうな。

、父さんが〈右足〉に連絡してくれた。

「そういえば、クリスタン義兄さんを前線基地に置いてきたままだったな」
 わざわざ僕に着いてきてくれたのに、悪いことをした。

 いや、あの時点で女王陛下の指令が来るとは思わなかったわけだし、不可抗力だよな。
 思い返してみると、なんか僕だけあちこちに出向いているよな。

 シャラザードが怪我しているいま、しばらく僕はソールの町から動けない。
 怪我が治ったら、どうなるのだろう。

 月魔獣を倒すのは他の竜でもできる。
 僕は支配種を倒しに行くのだろうか。

 現状、月魔獣の支配種を倒せるのは属性竜だけだ。
 大型竜でも無理だと思う。身体が大きくても、属性技のようなものがない大型竜では攻撃力が足らない。

「支配種の倒し方をどうするかだけど、これは女王陛下と相談した方がいいな」

 シャラザード単独での討伐は厳しい。
 アンネラとターヴェリはシャラザードみたいに無理をすることはないだろうし、ソウラン操者も同様だ。
 女王陛下を連れて行くことはできないから、三人が協力して倒すのが一番可能性が高い。

 だが、リスクがある。
 敵がこちらの予想を上回る場合、僕ら三人で倒せなかったばかりか、誰かを失ってしまった場合、もう二度と支配種を倒せなくなってしまう。

 支配種は徐々にその支配地域を広げていくという。
 つまり、いつか倒さないかぎり、この大陸は月魔獣の支配地域になってしまう。
 そうさせないためにも、失敗は出来ない。

 つまり、いまは雌伏の時と割り切った方がいい。
 次に行くならば、準備を調えて勝てる算段を立ててからだ。

「……では行って参ります。必ず、直接届けますので」

 行商人風の男が僕らの報告書を持って、店を出て行った。
 それを僕と父さんが見送る。

 彼の姿は、そこらの丁稚でっちより少しだけマシといった感じの、ややみすぼらしい格好だ。
 あれで優秀な〈右足〉だというのだから、驚きだ。

 女王陛下の影は町に溶け込んで、ああして活動しているのだろう。

「さて……これからのことだが、お前はどうするんだ?」
 父さんは首をコキコキと鳴らしている。報告書作りで肩が凝ったのだろうか。

 僕と父さんが書いた報告書は、数日の内に王都に届けられる。
 ちなみに、魔国王の崩御や魔国軍撤退は、竜操者を通して伝えられているはずだ。

「しばらくは家の手伝いをしながら、シャラザードの怪我が治るまで待機かな」
 それが僕がソールの町に来た理由――表向きはそういうことになっている。

「なら、しばらくパン屋の特訓だな」
 どれだけ上達したのか、見てやると父さんは言った。

 パン屋の特訓……いい響きだ。



 シャラザードの怪我を治すため、僕はソールの町にずっと滞在している。
 その間にいくつかの噂が流れた。

 それらはみんな僕とは関係の無いところの出来事だった。

 たとえば、撤退した魔国軍のその後。

 元々は国境付近にあったホーリスの町が落とされたのが最初だった。

 大転移のよって、北方方面にばかり目が行っていたことが原因ではあるものの、竜国の町を守る領主の失態である。

 その後、ソールの町を目指した魔国軍だが、進軍途中で原因不明の敗北をして、ホーリスの町まで撤退した。

 その数日後、地方軍と中央軍を合わせて膨れあがった竜国軍は、ホーリスの町を包囲した。

 町中に攻撃を加えるのはさすがに拙いと考えたらしく、最初は交渉による解放を提案し、その後何度か和平交渉が行われたという。

 平和裏に解決できれば良かったが、王を失い、復讐に燃える魔国兵たちはそれらの要求をことごとく撥ねのけ、和平交渉は失敗に終わった。

 竜国としても、ホーリスの町を手放すつもりはなく、かといって市街戦をして占領するのは、今後のためにもならないと判断して、攻撃を手控えていたが、魔国軍の態度は一貫しており、交渉による解放は無理と諦めた。攻城戦の決断である。

 果たしてそれは、魔国軍の狙い通りであっただろうか。

 魔国軍としても王の弔い合戦をしたかったのかもしれない。
 ホーリスの町をめぐる戦いは、双方ともに大きな被害を出し、なおかつ町の住民の生命や財産が多く失われる結果となった。

 商人を通して、その様子が近隣の町や村に伝えられることとなる。
 町や村の動揺はいかがばかりだっただろうか。

 都合、三日間にわたる攻防の末、ホーリスの町は魔国軍の手から解放され、竜国側へと戻された。

 ただし町の復興には、長い時間と膨大な資金が必要であり、喜んでばかりもいられない。
 地方は特別予算枠を使い、それらを復興資金に宛てることになるが、失った命は戻ってこない。

 竜国軍の勝利は嬉しいニュースではあるものの、人々はこう思うのであった。

 ――いつの時代も、大転移は人と人の争いの歴史であると。



○魔国 レイヴォスの町

 魔国南方にあるこの町は、他の町とひとつだけ違うところがあった。

 ここは反魔国王派が、根城として使っていた。

 いまを遡る二年前より、魔国は他国を占領して魔国民を生きながらえさせる政策へと方針転換している。

 それに異を唱えた文官、武官、知識人、交易商人、貴族、王族たちがいる。
 魔国王はそれらを合法的に首都から遠ざけ、ひとまとめにしてこのレイヴォスの町へ押し込んだのである。

 その中には、魔国王の息子もいた。

 この二年間、魔国王は息子を公式の場には出さず、一方的に遠ざけていた。
 竜国もしばらくは魔国王の息子の動向を把握できていなかったほどである。

 まったく公式の場に出ることはなかった彼の名は、バルトゥ・フロスト。
 魔国王のただひとりの息子である。

「……そうか、父王は無くなったか」

 バルトゥの口は重い。
 反魔国王派の重鎮が集まる場で、彼はそれ以降黙して語らなかった。



各所で書籍の確認ありがとうございます。
うーん、配本絞っているんでしょうか。見かけたという報告がないですね。。。

そして現在、同時進行で、別作品も投稿しています。

『前略母さん、魔界は今日も世紀末ヒャッハーです』
URL: http://ncode.syosetu.com/n3432ea/

1日2話(6時と18時)投稿でがんばっています。
こちらもよろしくお願いします。
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