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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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○魔国軍の野営地

 ――おい、ヒヨッコ。戦場では何が起こるかわからねえ、信じられるのは自分と仲間だけだ。どんなことがあっても、取り乱すんじゃねーぞ。

 初陣を迎える若き兵士に、古参の男はそう言った。

 敵もまた同じ人間。同じ人間どうしで戦うのである。
 何が起こるか分からないなんて、大げさな。

 そう兵士は思ったが、戦場を生き抜いた古参兵の助言をありがたく頂戴しておいた。

 ひゅ~~~~

「な、何なんだぁ!?」

 ドーン!

 闇夜の中、風を切り裂く音が次々と聞こてくる。そして大地を揺るがす衝撃もまた、絶え間ない。

 新兵も古参の兵も……上官も部下も関係なく、だれもが落下する岩に逃げ惑っていた。

「あ・り・え・な・い~~~!」

 古参の男はそう絶叫して取り乱した。

 これはいったい何なのか、はたしてこれを戦いと呼べるのか。
 多くの戦場を経験した男も、雨あられのように降り注ぐ岩の欠片なぞ、一度も経験したことがなかった。

 そして新兵はというと……。

「~~~~~~!!」
 声も出ていなかった。



「将軍、兵に動揺が走っています」
 部下のひとりが悲壮な顔をしながら報告にきた。

「被害は?」
「収拾がつかず、被害が把握できない状況です。ただ、この投石が続けば甚大な被害が出ることは想像に難くありません」

「そうか……事によったら陣を放棄する可能性もある。まずは動揺を最小限に抑えるよう、各隊長に伝達するように」

「はっ!」

 将軍は苦々しい顔で空を見上げた。
 円陣を組んで暗殺者を迎えうとうとしたところで、大岩の襲撃を受けた。

「投石機か? だがどこにそんな……」

 夜空に月の姿はない。
 かがり火を焚いているからこそ、外の暗さがよく分かる。

 どこから岩がやってくるのか、方角からすると崖の上になる。
 だが、そんなところへ投石機を持ち込めるだろうか。

「無理だ」
 そう将軍は考えてしまう。

 崖の上に投石機を設置する。
 少なくとも何日も前から準備をしていたのならばまだしも、昨日今日で思いついて実行できる類いのものではない。

 ――ドーン、ドドーン。

「まずい、陛下をお守りしろ。陣を移動しても構わん。陛下の身の安全を最優先で考えるのだ。それと、各部隊の様子はどうなっている?」

 将軍は部下にそう命令し、配下の隊長たちの様子を確認させた。

 魔国軍は兵をいくつかの隊に分けていた。
 重装を誇る部隊を魔国王の守りにあて、自分たちは夜襲に備えて、周辺に対する防衛を強化することにした。

「こんな岩がぽんぽん飛んでくる中に飛び込んでくることはないだろうが、連携して攻め手くることは十分に考えられるからな」

 昼間の戦闘でうまく竜国軍を蹴散らせたと思ったが、そこからが大変だった。
 暗殺者の襲来と天幕の火事、消火の途中で竜国軍が夜襲を仕掛けてきて多くの被害が出た。

 混乱を収めようと動いている内に魔国王が狙われ、周囲を守る護衛や魔道使いが次々と倒れていった。

 明日のことを置いておいて、まず今夜を乗り切ることが大切と、全兵士を起こして円陣を組ませたところでこれだ。

 せっかくの陣形が投石によって、崩れてしまっている。

「対処を誤れば、我が軍は総崩れだな」

 夜襲を仕掛けてきた竜国軍は逃げたはずだが、どこかに潜んでいて、もう一度くるかもしれない。
 その場合、逃げた方角から来るはずだが、これだけイレギュラーなことがおこれば、反対側からの襲撃だって考えられる。

 将軍は兵に竜国の町がある側を守らせて、自分は反対側の指揮を執るために向かった。

 ちょうそその頃、バシリスクと竜国の〈影〉レオンとの対決が行わていた。



○魔国軍の野営地 バシリスク

 大岩が飛んできた時、バシリスクは元凶を排除しに、山へ向かおうとして思いとどまった。

 王に仕えて数十年、もはや年数を数えるのすらどうでもよくなるほど長い間、バシリスクは仲間とともに王を守ってきた。

 魔国十三階梯と呼ばれる特殊魔道使いの集団は、代替わりをしつつも、一定の技量を維持し続け、王の身辺を守り、ときには他国まで出かけて王の希望を叶えてきた。

 それももはや風前の灯火。
 序列第一位のバシリスクこそ健在であるものの、第二位のチェスターも死んだ。

 首都に残してきた第三位のシオミットの生存は絶望的だろう。
 その他、序列上位の者は、最近の戦闘でみな死んでいる。

 岩の直撃を受けて第十位のリザベティもつい先ほど死んだ。

 バシリスクが山に向かえば、そう時間をかけずに崖を登り切り、頂上まで到達できるだろう。
 だがその間、魔国王を守る魔道使いはいなくなってしまう。

 敵に魔道使いがいるため、ここを動けない。
 ゆえにバシリスクは王の側を離れず、対象の排除に向かわなかった。

 間近に迫る岩の破片、そのことごとくを弾いているバシリスクの研ぎ澄まされた感覚がひとつの気配を捉えた。

 あまりにも希薄であったそれは、ひとつの違和感をもって、バシリスクの琴線に触れた。
 そこで問いかけたのである。

「そこにいるのであろう、暗殺者よ」と。


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