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竜操者は静かに暮らしたい 作者:もぎ すず

第6章 大転移-竜魔編

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 俺が倒した敵の魔道使いは、マバリアと言うらしい。
 魔国十三階梯の中にない名前だ。

 光を出す魔道使いだったらいいのだけど。

 倒れた魔道使いに何人かが駆け寄るが、あれは致命傷だ。助かる見込みはない。
 護衛たちは指示を仰ぐために視線を周囲に彷徨わせてから、ある一点を見る。

 彼らが無意識に向けた視線の先。

(……あそこに魔国王がいるのか)

 人の壁でうまく姿を隠している。
 王を安全なところへ逃がしたいのだろうが、僕がどこにいるか分からないため、どちらに向かえばいいのか分からないようだ。

 僕が囮で、別の暗殺者が向かった先で待機していると考えたのか。
 どちらにしろ護衛に動きがない。あの場で迎撃するつもりか。

 王を守るのだ。護衛の腕は確かだろう。
 魔道使いも一流の者が侍っている。

(消火していた一般兵を下がらせたか)

 薪の火が物資に燃え移っていたが、兵士が総出で消火したようだ。。
 これ以上一般兵が近くにいると、かえって護衛や魔道使いたちが戦いづらいだろう。

 王の護衛たちは周囲を警戒しつつ、ゆっくりと移動している。
 相変わらず王の姿は見えない。
 投げナイフや毒矢、もしくは遠距離からの魔道を警戒しているのだろう。

(別の天幕に移動しているのだろうけど……どこに行くつもりだ)

 天幕に入れば姿を見られることもないし、直接狙われることもない。
 大規模魔道で吹き飛ばせば別だが、こんな警戒されている中では、発動する前に悟られてしまうだろう。

「移動していることだし、次の手を使うか」

 僕は闇を形づくって、人型にする。
 実体のない人形だ。それを護衛の近くに出現させた。

 攻撃力はいっさいない。ただ、形づくられた影の塊なので、ユラユラと揺れているだけ。
 すぐ護衛に発見され、斬られた。
 影の塊だから斬られたところでどうにもならないが、二、三度剣を振るっているうちに霧散した。

(動きが素早いな。いまの剣技も、かなりの技量だ)

 護衛とひとくくりに言っているが、彼らも多様だ。
 外見だけみても特徴がある。
 剣を持った素早さに特化した者と、盾を構えて防御に優れた者がいる。

 次は『闇纏やみまとい』の応用で、そこらの兵士に闇を纏わせてみた。
 急に視界を奪われた兵士が慌て出す。

 身体の表面を覆っているだけだ。
 視界はふさがれるものの、害は一切無い。

(同時に複数の魔道は使えないけど、こういうのはできるんだよな)

 護衛の近くにいる兵士を四、五人選んで、闇を纏わせた。

 闇に溶けたまま別の魔道は使えない。
 種類の違う魔道を同時に使うことはできないけど、同じ種類ならば複数使える。

 もしかすると『闇刀』も同時に二カ所出せるのではなかろうか。
 今度、両手に剣を持って、実験してみよう。

 兵が右往左往し、護衛たちの前に出る。
 どうするのかと見ていたら、護衛がためらいなく斬った。

(自国の兵だって分かっているだろうに、容赦ないな)

 兵が操られたと思ったのか、躊躇するそぶりもなかった。
 たしかに救おうとして反撃を受けたり、一緒になって混乱させられたら大変だろうし、方法としては正解なんだけど。

 倒れた兵士の闇を解くと、石化した死体が現れた。

(知らないうちに、魔眼も使われていたのか)

 バシリスクの姿は見えなかった。いつの間にか魔道を使ったようだ。

 しかも『闇纏い』だと透過されて意味がないことも分かった。
 僕がそれで近づけば、そのまま石化されるわけだ。気をつけよう。

 バシリスクの魔眼の性能も、護衛の技量も分かったので、次の作戦に移る。
 足止めだ。

 持ってきたありったけのつぶてを魔国王が移動した先にばら撒く。
 地に撒かれたそれは、百をゆうに越える。

 全て尖った面が上を向くようになっている。この暗闇で避けて歩くことは不可能。
 これで進めなくなるはずだけど……。

「ここは私が」

 礫はすべて上空に打ち上げられ、どこかへ飛んでいった。
 チェスターの魔道だ。

 範囲を指定したのか。そんなこともできるとは、なかなか便利な魔道だ。

 父さんからの情報にはなかったと思うけど、この十数年の間に新しく覚えたのかもしれない。

 そもそも、魔道を極める道はふたつしかない。
 今ある魔道を磨くか、別の似たような魔道を覚えるかだ。

 父さんは自分の魔道を磨き続けた。
 僕は別の魔道を出来るだけ覚えることにした。

 方向性は違うが、より生き残るために足掻いた結果だ。

 そしてバシリスクは、石化の魔道をただただ磨き続けたわけだ。

 足止めが失敗したので、次の手を考えたいが、あまりいい案が浮かばない。
 護衛の一人が先行してひとつの天幕の中に入った。

 中を確認したのだろう。
 つづいて、灰色のローブを纏った魔道使いが入り、直後もの凄い光が天幕の中に出現した。

 あのローブの主が光を出す魔道使いらしい。
 しかし、先に天幕に入らなくてよかった。

 逃げられない場所かつ隠れることもできない状況で、優秀な護衛と戦いたくない。

「マバリアがいない。結界魔道なしでいく。周辺に気を配るように」

 護衛の集団が天幕に入る直前、そんな声が聞こえてきた。
 死んだマバリアは物理結界を担当していたようだ。

 ということは後からでも天幕に入り込める。
(……とすると、問題は光を出す魔道使いとバシリスクだ。チェスターも注意対象だけど、僕が姿を見せなければ大丈夫か)

 ここで決着をつけよう。


『竜操者は静かに暮らしたい』の書籍版
発売まであと一週間になりました。6月23日発売です。
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